進められる水道事業民営化の動向と水メジャーによる契約内容を監視すべき

社会的インフラ事業民営化の是非を再考すべき

前々回、2018/11/7に
水道民営化は絶対阻止すべき!:すべての野党議員と地方自治体が読むべき書『日本が売られる』
と題して、堤未果氏著『日本が売られる』から水道事業民営化のリスク
について取り上げました。

こういうことはよくあることで、今日11月10日付日経で
水メジャー 日本上陸 仏スエズ、前田建設と提携へ 水道「民営化」に商機
いうタイトルの記事が掲載されました。

水ビジネスを世界展開する「水メジャー」が日本市場に進出する状況をレポート。
既に、仏ヴェオリアの浜松市下水道運営受託事業を始めていますが、この記事で
は、仏スエズと前田建設工業との業務提携の検討の内容と背景を主に取り上げて
います。

これを後押ししているのは日本政府。
PFI法に基づき、コンセッション方式での導入を積極的に推し進め、外国水メ
ジャーが日本法人を設立したり、日本の建設業などがジョイントで具体化を図る
構図です。

⇒ コンセッションとは?

その背景は、水道など社会的インフラの老朽化による今後負担増が避けられない
事情、悪化する地方財政など。
それらに対応するには、手っ取り早く水道事業の利権を販売することでの収入、
受託した企業の技術やコスト低減などの経営努力による利用住民への水道料金の
引き下げを期待できるコンセッションで、というわけらしい・・・。

が、そうそうことが単純に、うまく運ぶものではないことが明らかに・・・・

 

既に進んでいる日本国内での水道事業民営化

政府の方針が先か、海外メジャーの圧力が先か、はたまた日本企業の気持ち
を察してか、2011年にさっと成立させたPFI(公営事業の民営化)法に
乗る形で、日本でも民営化が進みつつあります。

日経同記事でも、仙台空港など国内空港の運営受託事例を紹介。
その流れの中で、水道事業受託を水メジャーと組んで進めつつあるわけです。

例えば、水メジャー最大手ヴェオリアが、オリックス、JFEエンジニアリング
などとのJVで国内で今年4月初めて浜松市下水道運営を受託。
2022年4月からは上水道も。
高知県須山市の上下水道事業は、2019年10月から。
宮城県は2021年4月から上下水道と工業用水道。
三浦市も同時期に下水道事業・・・。
それぞれ運営権の売却が決定。

他に日本企業の同事業進出も、目白押しです。

 

既に発生している日本での公的事業民営化による根本的課題

冒頭紹介した、『日本が売られる』では、この水道事業民営化が、水メジャーと
呼ばれる外国企業主導で進められ、世界各地で問題を引き起こしていることを
詳しくレポートしています。

前田建設が組むことになったスエズ社は、同書の中で、フランス・パリの水道事
業を担っていましたが、重大な損失をパリ市民に与え、市民の努力によって再公
営化に至らしめた問題企業です。
詳しくは、同書をぜひご覧頂ければと思います。

一応、日経の同記事でも
社会インフラである水道分野での民間活用には課題もあり、民営化による料金値
上げや水質低下などを不安視する状況も指摘。
海外でもそうしたことから再び公営化されているとしています。

当然、記者は『日本が売られる』の内容を知っているはず。
フランス駐在の同紙記者も動員して、水メジャーと水道民営化の実情を独自取材
してもらいたいものですね。

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ところで、今年の台風21号の折りの関西空港の被害とトラブルは記憶に新しいと
ころですね。
実は、関空もオリックスとフランスの空港運営大手バンシ・エアポートがコンセ
ッションで運営を受託。
今度の台風による高潮で空港地下の電気設備に海水が浸水し、停電。
復旧への対応や情報開示などに不安と批判を集めました。

水道事業民営化契約でも問題を指摘されている、防災や災害発生時の対応責任を、
受託民間企業が負わなくてもいいかのようなあいまいさ、いい加減さが、空港運
営民営においても露呈したと言えます。

その事情は、同日同紙の
災害時の対応に課題も 関空運営、台風21号で混乱
という記事で読み取ることができます。

 

財政難を理由とした自治体事業の民業化は、国政無策・愚策の現れ

海外資本による日本の社会的資産・資源の買収は、国の将来を危うくする。
そう感じ、そう考えることはごく自然のことでしょう。
土地や水などは、その最も基本とするところ。

それらがせめて日本人・日本企業によるものならば、将来の危惧は和らぐ。
しかし、昨今の日本企業は、自動車の安全検査や免震データの改ざん問題
など、根本から信頼性を覆す事犯が続々露見。
将来への不安を募らせている状況です。

そこに、世界各地で、安全性・信頼性を疑わせる問題を引き起こしている
海外企業勢が、金に物言わせてなだれ込んでくる・・・。
日本の経済界・財界も同じ穴のムジナ・・・。

経済・利益第一主義の政策は、短期的には税収増に結び付くことから、現
政権にとっては、成果と評価して嬉々としていられることでしょう。

しかし、東北大震災による原発事故が想定外としてかたずけるわけにいか
ぬことは当然です。
他の社会資本に関する事業の民業化は、幸か不幸か、問題例が多発・頻発
しており、すべてが想定内のこととなっていることを為政者と官僚、そし
て経営者は肝に銘じておくべきです。

そして、こうした情報が身の回りに多数存在し、入手可能なわけですから
私たち住民は、そしてなにより情報発信の起点ともなりうるマスコミも、
心して注視し、必要があれな監視すべきと考えます。

国の無為・無策も想定内のことですから・・・。

 

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