強化すべき不妊治療支援:国家戦略に位置づけるべき少子化対策を考える

現代日本の最大の国家戦略の誤りは少子化対策不在

こんなことを、今読み始めている新刊新書『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』
(文春新書・2018/9/20刊)でエドワード・ルトワックが指摘しています。

必読書の一冊と思う当書は、機会を改めて紹介したいと思いますが、そこで
彼は、
「もし日本が戦略的な施策を打ち出すのであれば、最も優先されるべきは、
無償のチャイルドケアだろう。」
と述べているのです。

1.1から1.3辺りをうろうろして一向に改善される気配がない出生率。
母子家庭・シングルマザー家庭の生きづらさ・働きづらさ、貧困と格差・・・。

共働き世帯でも、非正規社員雇用による不安定さ、子育てや介護と仕事との
両立の困難さから、希望する数の子どもを持てない・・・。

少子高齢化と多死社会が招く人口減少国家・・・。

加えて、生き方の自由、選択の自由として広がる非婚・未婚・ソロ人生。

望ましい世代と社会の継承をテーマとする当ブログサイトの重要な課題の一
つとしているのが「少子化問題」です。

 

男性不妊治療助成も女性と同様に

「少子化問題」への対策課題の一つが、「不妊治療支援政策」。
子どもを持ちたいと持ちながらも、残念ながら子どもができない夫婦や男女
とその人生においての大きな課題です。

最近の不妊治療支援に関するニュースをピックアップして紹介します。

まず、2018/9/30付日経の
男性不妊治療の助成、初回30万円に引き上げ 厚労省、来年度から女性と同水準

記事内容は、リンクした記事で確認頂ければと思いますが、要約すると

男性の不妊治療に対して、厚労省が次2019年度から、これまでの1回の治療
に対して15万円だった助成金が、初回に限ってですが、女性同様30万円
にするというもの。

保険適用されない体外受精や顕微授精の費用は高額であり、簡単に治療を受け
られない要因のひとつ。

ただし、この助成を受ける場合でも、夫婦の所得が年730万円未満という所得
制限や女性の治療開始年齢による回数制限があることも知っておきたいですね。
(40歳未満なら6回、40歳以上・43歳未満なら3回まで)

しかし、事実婚のカップルは国の助成を受けられないという問題が残っており
対策を急ぐ必要があります。

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次に2018/10/11付同紙の
ノジマ、社員の不妊治療費用補助」

大手企業では、事例が増えている企業独自での不妊治療支援制度。

家電量販大手ノジマは、不妊治療費用のうち60万円を上限として負担。
補助を受けられる期間は治療開始から3年間、回数制限もなく自治体補助と
の併用も可能というもの。

2016年の体外受精による出産は、最多5万4,110人

では、実際に不妊治療のうち体外受精で生まれた子どもは何人いるのでしょう?
これについては、2016年の実績として、2018/9/15付日経が日本産科婦人科学
会の調査から
体外受精で誕生 最多 16年 18人に1人、5.4万人」
とレポートしています。

その調査によれば、体外受精実施件数は、44万7790件。
うち出産数は、前年比3109人増で過去最多。
総出生数97万6978人のうち、18人に1人となる。

晩婚化等で不妊に悩む夫婦が増える中、費用の一部を公費助成制度を利用して治療
を受ける人が増え、一定の成果も伴っているとみられます。

第三者精子利用による不妊治療・出産と親を知る権利との問題

一方、こんな記事もありました。
2018/9/21付同紙夕刊の
「他人の精子 不妊治療停止
慶大病院、親知る権利で提供減」
というレポートです。

 提供者への説明の際に、生まれた子供に遺伝上の親を知る権利を認める動きが
世界的に広がっていることを伝え始めた結果、提供者が減少した。

というもので、今後、法整備によって、安全で安心な提供システムを確立べきと
いう課題が指摘されています。

 

年齢とともに体外受精は困難に:晩婚化に伴い妊娠しにくくなる現実

少子化は非婚化のみならず、婚期が遅くなる晩婚化の影響もあるといわれます。
◆『『少子化時代に生きる女のライフプランニング 』(齊藤英和氏・白河桃子氏共著)
にもありますが、女性の妊娠しやすい年齢は、20~35歳。
卵子の加齢化により、35歳を境に、流産率が上昇し、生産(せいざん)率が低
下するというのです。

従い、体外受精による不妊治療を受ける場合、成功率は32歳から徐々に下がり、
36歳までは1歳につき1%下がり、37歳以降では1年に2%、40歳になると
30代前半の成功率の約半分に。
44歳では、わずか1%でしかないという衝撃的な数字です。

ですから、女性の体外受精の助成には、年齢条件があるというわけです。

感覚的に分かっていても、あるいは知識としては知っていても、ついつい結婚
時期がだんだん遅くなる。
一応結婚し、子どもも持ちたいとお考えの女性には、賢明な人生設計、生き方
を実現・実践して頂きたい。
心からそう思い、そう願います。
団塊の世代のひとりの勝手な思いです。

もちろん不妊の原因の半分は、男性にもあるとのことですから、男性も努力が
必要であることは言うまでもありません。

 

非婚や子どもを持ちたくなくて持たない生き方。
それは、自分の人生の終わりで、一人ひとりの人間が形成し、生活してきた社会
の継続を否定し、人類の終わりを選択する行為。
大げさに言えば、そういう側面もあるのです。
そういう選択をする人が多数を占め、その権利を主張する社会。
自由とは言え、権利とは言え、物悲しく、残念な生き方・人生・選択。
そう思ってしまいます。

少子化は悲しく、寂しく、残念なことです。
少子化対策考察、今後も続きます。

 

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高崎順子氏著

☆☆☆☆☆『フランスは少子化をどう克服したか』(2016年10月20日刊・新潮新書)

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小林美希氏著

☆☆☆『ルポ 保育崩壊』(2015年4月21日刊・岩波新書)

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☆☆☆☆『ルポ 保育格差』(2018年4月20日刊・岩波新書)

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稲熊弘子氏著

☆☆☆『「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(2014年7月25日刊・角川SSC新書)

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前田正子氏著

☆☆☆『保育園問題 待機児童、保育士不足、建設反対運動』(2017年4月25日刊:中公新書)

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出口治明・駒崎弘樹氏著

☆☆『世界一子どもを育てやすい国にしよう』(2016年8月20日刊・ウェッジ)

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古市憲寿氏著

☆☆『保育園義務教育化』(2015年7月6日刊・小学館)

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