高齢者の貧困化要因を解消できる社会保障制度には、高負担システムが不可欠

前々回
「超少子高齢化社会を投影する高齢単身世帯数増加と社会保障制度および自助努力課題」
と題して、高齢者世帯の増加の傾向を確認し、その関連で、社会保障制度のあり方と
自助努力の必要性について、入り口段階として課題提起。
⇒ http://huma-net.com/?p=2405

これを受けるかたちで、2018/3/26と3/27の2日間、日経の【経済教室】で取り上げ
られた『高齢化する貧困』というテーマでの2人の研究者の小論を、前回から紹介して
います。

1回目は、小塩隆士一橋大学教授による
「年金の枠組み内での対応を 生活保護での支援は限界」を要約した
「超高齢化社会に増える貧困高齢者の生活保護・社会保障問題を考える」
⇒ http://huma-net.com/?p=2398

2回目の今回は、唐鎌直義・立命館大学特任教授による
社会保障の抑制政策響く 所得税の累進性帳消しに」
を参考にして考えてみました。

前回同様、65歳以上高齢者世帯の状況を示す表を再掲しました。

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高齢者の貧困可へのリスクと社会的関心が高まっている。
その理由は、
1.65歳以上人口、75歳以上人口が急増している
2.一般勤労者でもセーフティーネットの後退により、老後に貧困に転落する恐れが強まっ
ている
ことなどにある。

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 総務省「家計調査年報」(2016年度版)によると、
「無職の高齢単身世帯」の実収入の平均は月額12万2千円余、年収換算で147万円。
高齢単身世帯が増大するなか、生活保護基準スレスレの暮らしを送る高齢者が多い。

前回の小塩氏の小論では、生活保護受給者の人口に対しての比率を保護率として課題
としていましたが、貧困率については、触れていませんでした。

貧困率とは?

貧困率の測定基準である「実質的生活保護基準」は、「生活保護を受けていない低所
世帯が生活保護受給世帯と同じ水準の生活を送るにはいくら必要か」を意味する。

生活保護を受けると、直接税と社会保険料が免除され、家賃補助などの現物給付も加
わり、
その分、受ける前よりも可処分所得が増える。
この生活保護基準に満たない収入で生活している人の割合が、貧困率。

65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率はこの7年間で24.7%から27.0%に上昇し、
高齢者のいる世帯の4軒に1軒以上が貧困状態にある。

貧困世帯数は7年間で約156万世帯、貧困高齢者数は約192万人増加。
加速度的に高齢者の貧困化が進行している。

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貧困の実態を推測する

16年5月の厚労省「被保護者調査」では1カ月平均の生活保護受給世帯数は約163
万世帯。

うち高齢者世帯に分類される被保護世帯数は約83万世帯で、貧困高齢者世帯(653
万世帯)
に対する生活保護の捕捉率はわずか13%にも満たない。

高齢期の貧困を逃れるには、高齢者は息子や娘の家族と同居することが最善策で、
「家族に囲まれた老後」から逸脱すると、貧困に見舞われやすくなる。
日本の社会保障が直系家族の存続を前提に成り立っていることを意味している。

その血縁が希薄になったことと、滅した高齢者の貧困化は容易に想像できます。

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高齢期の経済生活の困難化=貧困化の要因

高齢期の経済生活(収入と支出)は社会保障政策により大きく規定され、
高齢者は、収入と支出の両面で、国に首根っこを押さえられた状態にある。

その現実を、国立社会保障・人口問題研究所「社会保障統計年報」(17年版)の
「高齢者関係社会保障給付費」のデータ分析から、以下の4項目で示しています。

1)公的年金給付の減少
2)医療サービスの給付減
3)老人福祉サービス給付費の抑制
4)消費税率引き上げの影響

そして、
社会保障抑制政策からの転換を!
と題して、以下の主張で結んでいます。

財政健全化を優先する政府の社会保障抑制政策が、国民消費の低迷を生み、日本経済の

長期停滞からの脱却を阻んでいる。
その政策を改め、国民消費拡大型の成長政策に転換する必要があり、財源は、高所得層
から低所得層への所得の垂直的再分配の強化により確保されるべき
である。

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まあ結局財政問題は先送りにして、財政負担増と、高所得者層からの所得移転=所得の
再分配、という税制改革提言で結んで終わっています。

前回の小塩氏も、年金給付の増加・引き上げ提言論。

財源は税収、社会保険料負担・保険利用時自己負担の増など、限られ決め手に欠くことは
重々承知していますが、それにしても、いつになっても堂々巡りを繰り返しています。

問題は、保険料負担や費用負担の在り方と給付の在り方を根本的に変える政策・方針。
低福祉低負担、中福祉中負担、高福祉高負担、どの政策をとるのか・・・。

仮に高福祉低負担政策をとるならば、その高福祉実現の財源・コストをどこに求めるのか。
国民の合意を得られるその方法を提起・提言できるのか。

一定の年齢・年代には実現・改革不可能な現実があることは認め、そのなかでの社会シス
テムをどのレベルで維持形成していくかを考えるのが一つ。
そこでは、経済生活における我慢・忍耐の社会的基盤・風潮の醸成が不可欠となるでしょう。

そして、もう一つ、他の年齢・年代には、抜本的な制度変更・改革を持ち込み、合意・同
意形成し、変革を進めていく。
もちろん、将来の悲観を、少しでも楽観に変える社会システムを構築すべく。

政治・行政、そして研究者にその視点を強く求めたいと思います。

 

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