
国が共有・統一・標準化を進めるべき介護業務IT:要介護者情報システム、介護業務管理システムなど
介護業界のIT化の実態と背景
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2018/8/20に発売された
『介護再編 介護職激減の危機をどう乗り越えるか』
(竹内和久・藤田英明氏共著/ディスカヴァー携書/¥1,188)の
序章「介護の知られざる真実」に、<日本は「介護先進国」になれる>と
いう項目があります。
そこでは、介護先進国になりうるといいつつも、660万人を超える要介
護認定者の
◆情報データベースが連携・統合・共有化できていないこと
その要因として、すべての介護事業者が、介護保険に基づき、介護報酬の
請求事務を行わなければならないのに、その
◆介護報酬請求システムが、個々のシステムベンダーが自社でしか使えな
いようにしていること
などの問題を指摘しています。
その辺りの詳しい事情と状況は、ぜひ同書でお読み頂ければと思います。
昨今では、介護人材不足を背景に介護業務の効率化が唱えられ、その中
で、IT化、データベース化などが検討され始めていることも描かれて
います。
しかし、ここまで介護事業所の数が増え、その経営格差も広がる中、統
一化・標準化を進めるのは、国がやることですから、一朝一夕でいくは
ずがないことは簡単に想像できます。
というか、よほどの強権を発動しないと不可能です。
そうした中、例えば、2018/9/17付日経で
「福祉施設用会計ソフト フリー、業務効率化後押し」
という記事が掲載されました。
ここ数年で大きく成長している、クラウド会計ソフトのフリーが、特別
養護老人ホームや保育施設などを運営する社会福祉法人向けのクラウド
会計ソフト「社会福祉法人 with freee」を
約2600の公益法人を顧客に持つ税理士法人ゆびすいと開発。
来年から社会福祉法人や中小介護福祉事業所に発売するというものです。
その背景も、先述したように、当然拡大する介護業界および保育業界の
システム化の遅れと業務効率化・人材不足対策ニーズにあるわけです。
結局自治体ではどうすることもできないですし、国は、個々のシステム
業者の既得権を守ることになるに違いありません。
介護・保育等社会福祉的事業における国・厚労省が
行うべき、業務システムの統合・標準・共有化
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私は、国が主体となってすすめる社会福祉的事業の経理会計システムや
各種請求事務、各種届出事務、利用者の情報管理等のシステムは、すべ
て国が開発し、無償で(といってもその開発と運用のコストは国の財源
=税収ですが)提供すべきと考えています。
特に介護事業や保育事業には、各種補助金・助成金が支給されており、
それらの使途が間違いなく支給目的通り使われているか掌握・確認する
上でも有効です。
また、定期的・不定期的に改定される介護保険法や介護報酬規定に都度
対応する上でも、厚労省が介護業務統一システムの該当する部分を改善
すれば、個別に対応する必要はありません。
要介護者が受ける要介護の程度や健康状況と変化、介助サービス、医療
サービスの受診状況などの情報がIT化で収集・蓄積され、広く介護業
務に活かされるようにすべきことは、いうまでもありません。
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これは、医療サービスにおいて人間ドッグや特定健診受診時に、そのデ
ータをデータベース化し、関連機関で連携して活用されるようになって
いることをみれば、その必要性・有効性は理解できます。
かかりつけ医にかかっているかみさんが、昨日の定期的な受診時に、先
日別の場所で受けた特定の健診結果をその場でモニターに表示して、説
明・助言してもらえたことに感激していました。
モデルの一端は、医療事業において既に存在するのです。
介護業界の生産性向上業務の一部を、厚労省は自ら
IT化に取り組んで責任を果たすべき
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常に後手後手に回り、部分部分の手直しを繰り返す国の介護行政。
抜本的な改善・改革は、みずから介護事業においてシステム化可能な業
務のIT=情報システムによる統一・標準・共有化でのみ可能と考えま
す。
その責任をこそ厚労省は担うべきであり、政治家が与野党の壁を取り除
いてその先導役を務めるべきなのです。
前出の書
『介護再編 介護職激減の危機をどう乗り越えるか』は、介護職人材不足
を解消・改善する視点で介護事業経営・介護業界、そして介護保険制度・
介護行政の再編と改革を提言しています。
介護現場における介護職・介護人材の問題は、人それぞれ自身の問題で
あると同時に、その問題を招いた事業経営のあり方と介護保険制度の変
遷にも要因があります。
本書の著者の竹内和久氏は、元厚労省官僚で介護行政経験者、もう一人
の藤田英明氏は、介護事業経営者です。
結論として介護再編をどう構想するのか、どんな改革を促すのか、読み
終えた後で、感想を含めて、もう一度紹介したいと思います。
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なお、最近の書として2018/7/20に発売された
『総介護社会―介護保険から問い直す 』(小竹雅子氏著/岩波新書/¥840税別)
もお奨めしたいと思います。
こちらは、介護保険に焦点を絞って論じています。
本書についても後日取り上げたいと思います。
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