家族介護慰労金給付制度は必要か:対象外に8億円給付=会計検査院調査

2018/10/19付日経に
◆「介護慰労金給付、対象外に8億円 検査院調べ」
と題した小さな記事がありました。

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「家族介護慰労金」とは?

あまり聞き慣れない「家族介護慰労金」とその給付制度。
調べてみると

1)要介護4および5の要介護者を
2)過去1年間、介護保険法に基づく介護保険サービスを利用せず
3)自宅で介護する家族に対して
支給される慰労金です。

ただし、
4)同一生計を営む要介護者・介護者世帯全員が、居住する地域の
住民税非課税者
という条件が付きます。

介護保険制度に組み込まれた給付金制度ですが、運用主体は自治体。
この制度を導入していない自治体もあるわけです。
慰労金を給付した自治体に対して、厚労省が介護保険から交付金を
支給することになっています。
その額は、自治体のより違いがありますが、年間10~12万円と
いうことです。

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介護保険サービス利用者に家族介護慰労金支給:会計検査院調査で明らかに

日経が報じた事案は、会計検査院から厚生労働省に出された
地域支援事業交付金における介護自立支援事業に係る交付金交付対象者について
という改善措置要求で見ることができました。

詳しくは、上記リンクから見て頂けますが、以下簡単に整理しました。

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1.18府県157市町村等の介護自立支援事業の実施状況を検査確認
2.16府県66市町村等において、介護保険サービス受給者のなかに、家族
介護慰労金支給者がおり、厚労省からの地域支援事業交付金の交付対象と
なっていた。

その交付金受給の要介護者延べ17,103人の、過去1年間の介護サービスを
受けた日数は、
1)年間10日以内の範囲で一時的に介護サービスを受けた者延べ819人
2)残りの延べ16,284人は、継続的なサービス受給者だった。

実際に、平成27、28両年度の慰労金支給事業の実施に要した経費は、
計9億8224万余円で、交付金相当額は、計3億8307万余円だった。
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そして検査院は、以下のようにまとめ、厚労省に改善を求めています。

1.改善を必要とする事態
 16府県66市町村等において、継続的なサービス受給者に係る慰労金支給
対象者を交付金交付対象者に含めていることから、交付金と保険給付との
重複が生じていて、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービ
スとの整合が十分に図られていない事態は適切ではなく、改善を図る要が
あると認められる。

2.その発生原因
 このような事態が生じているのは、介護自立支援事業の実施に当たり、
要介護者が一時的に受けることができる介護サービスの範囲を、実施要綱
に明記するなどして市町村に周知していないことによると認められる。

3.要求する改善の処置
 厚労省は、市町村が実施する介護自立支援事業に対して交付金を交付す
るなどして、引き続き要介護者に係る介護者の慰労のための事業に対して
助成していくこととしている。
 ついては、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービスとの
整合を図るために、要介護者が一時的に受けることができる介護サービス
の範囲を、実施要綱に明記するなどして市町村に周知するよう改善の処置
を要求する。

 

【会計検査院・当該PDF資料】
⇒ http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/30/pdf/301017_zenbun_01.pdf

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しかし、上のリンクから見て頂くとよくわかるのですが、検査院の文書
のなんと難解なことか。

ムダな重複コストと比較してはいけませんが、ムダな文字・重複箇所が
多くかつ文章が長く(私の文も長くなりがちですが)、本当にいけません。

本題に戻って・・・。

この家族介護慰労金制度。
中度・重度の要介護度の家族を自宅で介護するのは大変なことです。
入居型介護施設に入るための経済的な余裕がない住民税非課税世帯では、
在宅介護もやむを得ない。

それは分かりますが、介護保険によるサービスをまったく使わないで介
護するためには、家族は働くことなく介護に専念する必要があるでしょう。

当然収入にも限りがあります。
そうならば年間10万円という慰労金も貴重ですが、この制度を受ける
人の中には、生活保護を受けることが可能な人もいるのでは・・・。
そう思います。
そういう方は、ぜひ生活保護制度の利用を自治体に相談してみては、と
思います。

しかし何よりも、社会保障制度として、低費で入居できる公的介護施設
を整備し、入居できるようにするのが優先ではと思います。

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加えて、この検査は、18府県のみ対象としており、全国調査になれば
無駄遣いはかなり増えます。

まあ、自治体も厚労省もいい加減だということで、昨今の障害者雇用の
水増しとも根が一緒・・・。

もとが税金で、自分の懐が痛むわけではありませんから。

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もう一度介護保険制度に戻って・・・。

そもそも「介護自立支援事業」という制度の中に「家族介護慰労金」制
度が入っていること自体、おかしいのです。
要介護4や要介護5という重度要介護者の自立を支援する。
ムリ・ムダとは言いませんが、年間10万円の交付でできることとは思
えません。
拡大解釈して、介護する家族の自立を支援する制度なのかと読み替えて
みても、とてもとてもあり得ない話です。

基本的には、介護給付の抑制を主眼とする在宅介護主義にムリがあるわ
けで、小手先の介護保険制度補完制度は、制度をより複雑にし、さまざま
な思惑や無感覚での運用を招くことになる。
そう考えます。

そしてムダが積もり積もっていく・・・。
表面的に金額で現れるこうした検査院指摘のムダに加え、時間と労力と
いうムダも膨大になっていること、重視すべきでしょう。
もちろん、会計検査院の業務コストもそこに含まれることは言うまでも
ありません。

 

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