日仏の保育政策・制度の違いは、子育てに対する認識の違いにあり:『フランスはどう少子化を克服したか』より(2)

少子化対策が、日本の制度と風土・文化、両面の壁で、なかなか実効を期待できるも
のと評価されない、期待できない・・・。

よくヨーロッパの制度が参考になると言われますが、根本的には、高福祉高負担政策
のもと行われていること。
日本では、そうした根本的な大改革はムリ・・・。
そんなところで引き下がってしまうところもあります。
しかし、実際のところ、フランスが、出生率2.0に戻している、という話を聞くと
やっぱり、一度はその理由・原因を詳しく知りたい・・・。

いよいよ、というか、ようやく、というか、日本人女性による、実体験に基づくフラ
ンスの実情を知ることができる図書『フランスはどう少子化を克服したか
(高崎順子氏著・新潮新書・2016/10/20刊)が先月発売されました。
その内容を、少しずつ紹介しながら、少子化社会のこれからについて考えていきます。

「はじめに」
第1回:衝撃の実態・制度を、仏在住日本人ママが体験調査レポート

今回は、衝撃のイントロ、「はじめに」の第2回です。

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 はじめに(2):日仏の保育政策・制度の違いは、子育てに対する認識の違いにあり
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 フランスは過去10年、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供の平均数)を
2.0前後で推移し、「少子化対策に成功した国」と言われています。
週35時間労働制で働く父親・母親が、家庭で過ごせる時間を増やしながら、多角的
なサポートを強化して、いつしか西欧でも指折りの「子供が産める国・育てられる国」
になりました。

 義務教育以前の子供たちを、言語や社会性の発達が著しい3歳を境に二つの年齢層に
分ける。そして上の年齢層を「教育」の枠に入れる。
 これは幼児教育政策であるとともに、保護者と保育業界の負担軽減策にもなっている
のです。

 親たちに負担を軽減する工夫は、保育学校の他にも、社会のあらゆる面で行われてい
きます。医療、経済、心理、労働。
 核家族化の進んだフランスで、親たちが孤立して行き詰ってしまわないよう、行政や
民間が提案するサポートは本当に、いたれりつくせり
 そしてそれらは実際に広く知られ、活用されているのです。

 この国では、親と子供を助けようとする工夫がこんなになる。
 その裏には、こんな考え方がある。これだけのサポートがあれば、そりゃあ、産め
る・育てられる気になる・・・・・出生率も上がるわけだ!
 フランスは今も現在進行形で、少子化を克服し続けているのです


 

こんな体験から、現状保育に関して種々の問題山積の日本の親御さんや
保育に関わる人たちに、フランスの実情を知ってほしいと願い、体験そ
のものを届けたい。
そんな思いからの筆者渾身の、優しさにあふれるレポートが始まります。

次回からは、テーマとしたページをお伝えし、そこで感じたことなどを
メモする形で、本書紹介シリーズにしていきます。

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 「乳幼児保育改革のまっただ中」の日本、という認識には大きな疑問を感じます。
とてもとても日本の保育政策は、改革というレベルのものではない・・・。

根本的には、女性を不足する労働市場になんとか参画させるべく、そのために、
仕事と子育ての両立を可能にすることを目的とした保育政策・保育制度に・・・。

共働きが家庭・家族の生活を維持するために不可欠になったため。
核家族化で、子育てを支援してくれる親などの保育支援が期待できない事情。
働く喜び、働き甲斐を体験した女性が、早期職場復帰を望むため。

複合的な要素・要因から、子どもを保育所に預けることを希望する親が増え、
保育所不足が起こり、待機児童が増える。
併せて、低賃金、労働環境・労働条件問題から、著しい保育士不足も。
そして、規制緩和や補助金など一過性、一時的な対応で、2つの問題への対
応に追われまくっている・・・。

これが日本の現状です。

従い、この状況下で、フランスの事情を知ると、その彼我の違いの大きさに
愕然とするばかりで、脱力感が・・・。

この書を最も読むべきは、政治家と厚生労働省官僚です。
保育政策と保育制度の根本的な構造改革なしには、少子化対策も、女性活躍も
なしえません。そして、これからの時代の子供たちの幸福も・・・。

政治を変えるべき。
現状の与党にも野党にも、そこまで問題意識・危機意識を持つ政治家はいない
のでは、と・・・。
その改革は、既成政党にはムリとも・・・。

そこで考えるのが、女性政党あるいは女性主体の政党の実現。
あるいは、女性議員が多数を占める地方議会の誕生と女性首長の地方自治体の誕生。
そこから政治を変えていく・・・。

その期待と課題について、先日、別のブログで考えています。
村社会の活動レベルの「クオータ制を推進する会(Qの会)」:これじゃ疑問のQの会

戦略を立案できる女性政治家の登場を期待したいのですが・・・。

但し、制度改革の前提は、親と子、子育てに対する考え方・認識の違いを変化
させることが不可欠であること。
そこに集約されることを、この書の「はじめに」が語っていることを確認して
おきたいと思います。

 

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なお、私ののんびりした本書紹介ペースはまだるっこしい、待っていられない、と
いう方は、こちらから即お求めいただいて、一気にお読み頂ければと思います。

フランスはどう少子化を克服したか

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【『フランスはどう少子化を克服したか』構成】

はじめに
第1章 男を2週間で父親にする
第2章 子どもは「お腹を痛めて」産まなくてもいい
第3章 保育園には、連絡帳も運動会もない
第4章 ベビーシッターの進化形「母親アシスタント」
第5章 3歳からは全員、学校に行く
おわりに

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【高崎順子氏・プロフィール】
1974年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。
2000年渡仏してライターに。
「食」を得意分野とし、著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』
(共著)など。パリ郊外在住。

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