
シラク3原則。政治がフランスの少子化を克服した:『世界一子どもを育てやすい国にしよう』から
『世界一子どもを育てやすい国にしよう』は、男性2世代の対談書
2016/8/5に出版された『世界一子どもを育てやすい国にしよう』
(出口治明・駒崎弘樹氏対談)
を世代論として読み、参考にして考えてみます。
はじめに
第1章 ヒトが生きてきた歴史に学ぼう
第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう
第3章 働き方を変えていこう
第4章 教育こそが人間形成につながる
第5章 年齢フリーのチャイルドファースト社会へ
おわりに
こういう構成ですが、今回は、P.38~P.43の
「第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう」
からの紹介です。
フランスの「シラク3原則」から学ぶべし
「少子化について、いつも僕が話題に挙げるのはフランスの「シラク3原則」です。」
と始まるこの項は、出口治明氏が語る内容で占められています。
詳しい内容は、ぜひ本書をお読み頂きたいと思います。
以下で、主な論点のみいくつかピックアップさせて頂きました。
◆シラク3原則とは、フランスが少子化問題を解決するため、シラク大統領の時代に
導入した政策パッケージ。
アングロサクソン文化に飲み込まれることなく、フランス文化をできるだけ守りたい。
そのためには、母語(マザータング)としてフランス語を話す人を増やすべき。
フランスで生まれる赤ちゃんが増える必要があり、そんな社会をつくらなければなら
ない。すなわち「赤ちゃんはフランス文化を守る社会の大切な宝だ」という市民の共
通認識が生まれたという経緯が政策化の背景にある。
◆シラク第1原則:
男性は赤ちゃんが産めないので、この問題については男性には発言権がない。赤ちゃ
んを産めるのは女性しかいないのだから、女性が産みたいときに産めばよく、男性の
意見を聞く必要はない。
ただし、女性が産みたい時期と、女性の経済力は必ずしも一致しないので、その差は
税金で埋める。
女性が何人子どもを産んでも、このことで決して貧しくなることはないと保障した。
産みたくない人は産まなくてもいい。でも、産みたいと思ったときは「社会がとこと
んサポートするので、安心して産んでください」という仕組みをつくった。
◆シラク第2原則:
お母さんも働くことが前提なので、赤ちゃんを必ず預けられる場所を用意する。
そして、育児休業給付金の支給を1年目はほぼ100%にした。
そうすると「もらえる金額が変わらないのなら、1年目だけは赤ちゃんと一緒にいよう」
という気持ちになって、子どもが0歳の間は家で過ごす人が多くなった。
そのため0歳児を預かって保育する必要がなくなるので、社会全体のコストも下がった。
◆シラク第3原則
男性でも女性でも育児休業を取ったあと、元の人事評価のランクで職場に戻れるとした。
フランスはこの法制化されたシラク3原則により、1994年の出生率1.66が、15年弱で
2.0を超えるまでに回復した。
日本のシラク3原則をそのまま適用した場合、GDPの2%前後のコストがかかると言わ
れているが、中期的に人口が増え、社会の成長につながる効果があることは、明らかだ。
育児養育年金制度の導入を!
保育事業を行っている駒崎氏が、相槌を打つだけ、という面白い対談が進められていくこの章。
フランスの事情に詳しい出口氏による「シラク3原則」。
どこでも共通化可能な、そして共通化すべき内容と言えます。
0歳児への100%育児休業給付金制度。
私は、すべてのお母さんが会社勤めということではないので、厚生年金か国民年金どちらかから
給付する年金制度を日本では導入すべきと考えます。
高齢者一辺倒の年金制度ではなく、現役世代の親が、子どもの出産から1歳の誕生日を迎えるま
で1年間、生活が保障される育児養育年金を受け取る制度です。
親の収入に関係なく、みな同額受け取る制度です。
これで、日本でも0歳児保育問題のかなりの部分が改善・解消でき、1歳児以上対策を強化でき
ます。
『保育園義務教育化』『フランスはどう少子化を克服したか』もご一読を!
『保育園義務教育化』
これなどは、野党が公約として今すぐにでも検討し、財源を含めて、社会改革の軸となる政策に
すべきと思うのですが・・・。
さて、フランスの政策。
『フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)』で、その事情・実態を詳しく
知ることができます。
ぜひ参考にして頂きたいと思います。
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