
介護と仕事の両立支援制度の利用状況:管理職600人アデコ調査よりー2
昨年末2017/12/26付日経に、
「管理職の48%「介護離職検討」 体力面に不安/休み取りづらい 民間調べ、環境整備に課題」
と題して、昨年10月に総合人事・人財サービスのアデコが実施した
<介護と仕事の両立>に関する管理職600人アンケート。
そのアンケートの公表資料を3回に分けて紹介するシリーズ第1回が、前回の
・「介護離職」を考えたことがある管理職は48%:アデコ調査から「介護離職」を考えるー1 です。
そこでも紹介しましたが、このアンケート実施の主旨を以下に再掲し、
第2回目の紹介に入ります。
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「介護休業法」は機能するか? 「イクボス」は定着するか?
2017年1月に「改正育児・介護休業法」が施行され、通算93日取得可能な介護休業
の分割取得や、介護休暇の半日単位での取得、所定外労働(残業)の免除が認めら
れるように。
さらに10月の改正では、企業に対し、これらの制度を社員に周知する努力義務が
課せられるなど、介護と仕事の両立支援策の拡充が進んでいる。
実際に、少子高齢化が進む中、働き盛りの世代は、親族の介護と仕事の両立を迫
られている。
そのなかで、管理職は、自身が仕事と介護の両立に直面しながら、一方で、
「ケアボス」として、介護を担う部下に配慮する役割も求められている。
こうした状況下、同社が、2017年11月11日の「介護の日」を前に、親族の介護に携
わった経験のある管理職(部長職、課長職)600名を対象に、「介護と仕事の両立」
についてアンケートを実施したもの
詳細は、こちらからご覧いただけます。
⇒ http://www.adecco.co.jp/about/pressroom/investigation/2017/1108/
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第2回目のアンケート課題は、次の項目です。
3.介護と仕事の両立支援制度の利用状況
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3-1 介護を理由に、会社を休んだことがある管理職67.0%。
8割以上が「有給休暇制度」を利用。
・介護を理由に会社を休んだことがある管理職67.0%のうち、88.1%が「有給休暇制度」を利用。
・対象家族1人につき1年に5日取得できる「介護休暇」(15.9%)と、家族1人につき
通算93日を3回まで分割取得できる「介護休業制度」(2.7%)の利用は低い状況に留まった。
企業によって対応は異なるが、実際には介護休暇は無給であることが多い。
介護休業は雇用保険から給付金を受け取ることができるものの、事前に申請手続きが必要になる。
これらを踏まえ、まずは有給休暇の消化を優先し、介護休暇・休業の取得を控える傾向にあると
考えられる。
<Q:介護を理由に、会社を休んだことがあるか>(n=600、単数回答)
<Q:会社を休む際に、どのような休暇制度を利用したか>(n=402、複数回答)
有給休暇制度(年次有給休暇、積立年次有給休暇などを含む) | 88.1% |
介護休暇(対象家族1人につき1年に5日取得できる) | 15.9% |
介護休業(家族1人につき通算93日を3回まで分割取得できる) | 2.7% |
その他 | 2.2% |
3-2 介護関連制度のうち「半日単位、時間単位の休暇制度」(63.5%)
の利用が最多。
約3割が「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟に出退勤できる制度」を活用。
・介護に関連して利用できる制度と、その利用の有無についてたずねたところ、
「半日単位、時間単位の休暇制度」の利用率は6割超。
「遅刻、早退または中抜けなどの柔軟に出退勤できる制度」は3割。
介護は突発的な対応が発生することも多いため、勤務時間を柔軟に調整できる
制度が利用されている。
<Q:介護に関連して利用できる会社の制度はどのようなものがあるか。
また、あなたはどの制度を利用したか>(n=600、複数回答)
3-1 制度を利用しづらいという管理職は63.2%。自身や部下の業務への支障を懸念。
・介護に関連して利用できる制度が「利用しづらい」と回答した管理職は63.2%と半数以上。
・その要因として、「自身の業務に支障が出る」(73.1%)、「部下の業務に支障が出る」
(54.1%)といった業務への影響を懸念していることが挙げられる。
・また、「管理職で、介護を理由に休みを取る人がいない」(37.7%)、「休みを取りにくい
雰囲気がある」(32.7%)など、休みを取りにくい職場環境が制度利用を左右していることも
うかがえる。
<Q:介護に関連して、休暇制度や勤務に関する制度を利用しづらいと思ったことはあるか>(n=600、単数回答)
<Q:制度を利用しづらいと思う理由は何か>(n=379、複数回答)
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そもそも、<仕事と介護を両立させることが可能か>とか<両立を可能にする>と、
課題設定して論じなければいけないことそのものに、疑問を感じるのですが・・・。
仕事と介護を同じ次元で並列させて、どちらか一方を取るか、両方取るか、を考え
論じる。
そういう問題ではないはずです。
仕事は、生活を維持させるために、資産・財産に余裕がない人や年金でやっていける
人を除けば、不可欠の営み。
介護を担う必要が生じても、仕事を捨てて介護に専念することは本来あり得ません。
何とか家族の介護を行えるようにして、仕事を続ける。
そのために、介護休業制度、介護支援制度がある。
ただ、介護への関わりが安心して仕事を続けることを難しくするレベルになれば、恐
らくそれらの制度では支援・補完できなくなる。
そこまでくると、公的な介護制度そのものの在り方を変えていくべきと考えます。
そうでなければ、保育問題・待機児童問題の対策として、この数年で強力に進められ
つつある、企業内保育所の設置と同じように、企業内介護施設を設置すべき、という
方向になるでしょう。
果たして、そこまで企業が対応できるか、すべきか。
政治がそこまで要求することができるか。
企業は、経済活動を行い、利益創出と企業・事業の継続を目的とするもの。
その活動のために人を雇用し、育成し、定着させ、意欲・能力の発現を望む。
そこに個人個人の事情として、家族の介護問題が発生し、継続する。
まず有給休暇で対応し、次いで、介護休業制度を利用する。
簡単に言えば、そうした方法を、介護の必要性の状態に応じて行っていく。
しかし、それは企業の規模や業種により、個人が担当する職種により、所属する
組織の人員数や勤務形態により、それぞれ制度の利用のしやすさ・しにくさがはっき
りと分かれます。
600人アンケートというくくりでは表われてこない要素です。
有給休暇の利用で収まればよいですが、介護は個々の事情で、そう簡単に解決
対応できるものではありません。
当然介護休業制度を利用したい、利用しないと問題が大きくなる。
そういうケースの方が多いのではと思います。
しかし、一般的には、どんな事情があるにしても、仕事や組織の状況を考えると
法律で規定されているから、制度を利用するのが当然の権利、と割り切れる人、
主張できる人の方が少ないでしょう。
本来こうした法律を決めるからには、政治・行政がその介護を支援する制度を制定
すべきです。
介護離職を強いれば、賃金収入がなくなり、税収もなくなるのですから。
企業独自の寛容的で十分な介護支援制度を導入・運用できるのは、ごくごく一部の
安定した高い収益を上げ続けることができる企業だけ。
企業や事業所ごとに、時短やシフトの柔軟な対応など創意工夫、相互協力で、介護
生活をサポートする取り組みは、今後広がっていくでしょう。
しかし、その恩恵を受けることが困難な人が数多く存在し、発生し続けることも間
違いありません。
アデコのアンケートの対象となる方々が勤務する企業の多くは大手企業でしょう。
大手企業であっても、今回のような結果が出るのですから、声となって表れない人
々の現実は、より厳しいと想像されます。
在宅介護を軸とする介護制度の課題は、介護休業支援制度では、ほとんど改善解決
できません。
むしろ問題をより大きく、より深刻にする・・・。
もちろん、今春予定されている介護報酬制度改定も関係ありません。
介護離職予備軍が、予備軍のままでとどまることができるか・・・。
待機児童問題よりも、根深く、重い課題を、個々人と企業組織社会が抱え、悩みを
深めていきます。
その数を増しつつ・・・。
今からでも、自衛手段を考え、備えを強めていく必要性を自覚し、可能な範囲で、
少しずつ取り組む必要があると考えます。
次回、アンケートの残りの部分を紹介します。
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