
2018年4月介護報酬改定を日経社説が批判:自立支援・医療介護連係方針に潜む問題点
2018/1/27付日経の記事を受けて、前回
「2018年4月改定介護報酬、前年比プラス0.54%:厚労省社会保障審議会介護給付費部会報告から」
と題して、この4月に改定される介護報酬について、社会保障審議会介護給付部会
の報告の内容について、紹介しました。
日経紙は、以前から財政赤字の拡大を問題視し、そこから、介護保険制度および
介護報酬制度のもつ根源的な問題を取り上げてきています。
その流れの中で、ご丁寧に、2018/2/2付の社説で、今回の改定政策について、追
いかけるように問題提起しました。
「この改定では介護保険の未来が危うい」と題した社説。
その内容は、リンク記事で見て頂ければと思います。
日経の主な主張は、自立支援のためのサービスの拡充、介護保険の対象となる軽
度介助サービスの縮小と自己負担の増加の3点です。
そこで、ここでは、その内容を受けて感じたところを述べてみたいと思います。
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ポイントの一つは、
・訪問介護における生活援助が、安易な利用を促し、介護報酬の増加を招き、
介護財政の圧迫につながっている。
それを抑制するために、軽度者へのサービス適用をなくすべき。
というもの。
これには、私も賛成です。
非常に優しい介護保険制度を象徴するような保険適用サービスです。
しかし、これでは、はっきり言って、自立支援にはならない。
むしろ自立を阻害する要因にさえなっている面もあります。
極論を言えば、<要支援>というランクは、廃止すべきではないかと・・・。
<要介護>1~5までの5つのランクで十分でしょう。
また、そうすることで、自治体の負担も軽減され、<要介護>の介護制度
に重点をシフトできることになります。
(参考)
⇒ 自治体移行の「軽度介護サービス(要支援1、2)」運営難の現状を考える
次に、保険料の引き上げ。
これには、反対です。
それでなくても、健康保険・年金保険料が毎年引き上げられ、負担が間違
いなく増えていく現役世代。
彼らにとりわけ、若い世代から負担を負わせることには、反対です。
もう一つの自己負担の引き上げ。
これは、やむを得ないでしょう。
まず、これまでの要支援介護方式をなくせば、それでも介助サービスを受け
ることを希望すると自己負担で、となります。
<要介護>レベルでの自己負担は、一律3割程度まで引き上げるべきと考え
ます。
それによる増収部分は、介護士の賃金の引き上げに回すことを法律で決める。
はっきりと決めて、利用者の理解を得るべきでしょう。
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前回引用した、同部会報告による、全体方針を示した図を再掲します。
自立支援政策が持つ矛盾に踏み込んでいない問題点
上の図を見ると、社説が、ずいぶん軽く書かれている気がしてしまいます。
前回の投稿の中でも申し上げましたが、この報告の内容は、相当のボリュームで、
非常に多岐にわたっています。
その中でとりわけ考える必要があると思うのは、リハビリを象徴とする医療と介護
の連携です。
一昨年右足大腿骨を骨折し、地域包括ケアシステムに則って、急性期病院での手術
入院から、回復期病院転院とリハビリ入院を経験した私。
その折りに感じた、高齢者のリハビリ需要のすごさと医療給付の大きさ。
実は、リハビリ政策を推し進め、自立支援を推進することは、ほんの一部介護給付
を抑制することにはなりますが、医療給付を相当増やすことになるのです。
介護給付部会はそれでいいでしょうが、社会保険・社会保障政策全体からみれば、
抑制どころか、一層増やすことになる。
介護給付の増加を、医療給付に置き換える。
いや、イコールで収まればいいですが、現実的には、一層財政赤字を増やすことに
なる・・・。
のです。
このことは、このブログサイトで、これまで何度も触れてきたのですが、日経がそこ
まで類推、忖度?することは、一度もありませんでした。
意地の悪い、邪推、と言われるかもしれませんが、それが事実です。
介護士よりも給料がいい、理学療法士、作業療法士に人気が出て、介護士は変わらず
不足する・・・。
療法士の方が、医院勤務で、就労条件・就業環境もいい・・・。
これも入院中に感じ、考えたことです。
もちろん、介護施設で就労する療法士も多いですが、介護士の就労形態・条件とは異
なるはずです。
そしてもう一つ、繰り返し言っている、しかし、言ってはいけないこと・・・。
リハビリなどで自立や健康状況の改善すれば、一層長寿になる・・・。
それは、年金給付をより増やし、財政赤字を増幅させることにもなる・・・。
その面からの予測や試算、見たことないですね。
それらは、現役世代のみならず、将来世代に負担を強いることになり、彼らの受益が
減少していくことになる・・・。
サ高住で生活する、要介護1の96歳の義母。
「はよ死なないかんな」と何度聞いたことか分かりませんが、元気いっぱいで、間違
いなく100歳まで生きるでしょう・・・。
生活介助サービスを受けて・・・。
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