
厚労省による現場報告書のIT化・電子化で、介護現場の生産性向上は可能か?
2018/1/23付日経に、
厚生労働省が介護事業におけるIT活用を進め、労働生産性改善に向けた取り
組みを進める。
2018年度から現場スタッフによる行政への報告を電子化、介護現場で作成する
文書量の半減をめざす。
事務作業を効率化することで利用者へのサービスに回す時間を増やす。
という論点での
◆「介護、ITで生産性改善 厚労省、現場報告書を電子化 文書の半減めざす」
と題した記事がありました。
詳しくは、上記リンク記事をお読み頂くこととでご了解を頂き、以下、同記事か
ら感じたことをメモしたいと思います。
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今頃、というか、まだ、というか、情けないという感じがしてなりません。
正直、これをやったところで、労働生産性が向上するとは思えません。
ないよりはマシ。
そんなところではないでしょうか。
そもそも、介護保険制度・介護報酬制度自体、頻繁に改定され、その都度
申告・申請内容、方法が変わります。
それらに対応すること自体が、生産性を下げます。
利用するソフトもバージョンが変わり、時間・労力・コストがかかります。
本来、公的制度である介護保険制度で必要な、ソフトウェアは、厚労省が
標準化し、無償で介護事業者に提供すべきと考えます。
当然、制度改定時のソフトのバージョンアップも行います。
民間のソフト会社が、それぞれ開発し、何種類ものソフトが出回る事自体
ムダであり、標準化されず、別の側面から、生産性向上を妨げます。
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政府は昨年末にまとめた生産性革命の方策で、介護現場の生産性向上を柱の
一つに。20年までにITを全面導入したシステムの整備をめざしており、行政
への報告書の電子化が第1弾となる。
こうも言うのですが、「革命」と呼べるようなモノ、コト、レベルではあり
ません。
ケアマネの事務作業レベルに視点を当てて改革、といいますが、ケアマネには、
実際の介護作業を行わない人が多いハズ。
ケアマネの仕事は、もともと事務的な仕事の割合が大きいのです。
介護現場の実作業の生産性革命とは乖離した話です。
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事務作業に費やしていた時間を利用者へのサービス提供に回せれば、職員1
人あたりで対応する利用者の数が増えて生産性が向上し、介護事業者の報酬額
を引き上げる効果も期待できる。
果たしてその程度で、生産性が向上するか随分、勝手で、乱暴な話です。
どちらかというと、書類を受け取る役所の方の事務合理化に貢献する要素の
方が強いのでは、と感じます。
加えて、最大の問題は、タブレットなどの端末を、介護士一人ひとり全員が
持つことができるかどうか・・・。
ソフトはあっても、1台の端末を交代で使わなければいけないようだと、と
てもとても合理化にはたどり着きません。
そして、例によって、介護業界の労働生産性の低さと賃金レベルの話を引き合
いにした、紋切り型の主張も占めていました。
そもそも、製造業や情報システム業などと労働生産性を比較すること自体、ム
リがあります。
本気で介護業界の労働生産性を上げる気があるならば、介護現場の労働を場所
的に集中・集約すべきです。
在宅介護から、ある程度の規模以上の施設介護に切り替えることでしか、他産
業なみの生産性や賃金と伍していくことは不可能です。
1軒1軒訪問介護や訪問看護で巡回したり、デイサービスを受けるために、1
軒1軒送迎する方式が変わらない限り、生産性は上がるはずがないのです。
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どうも、介護の本質をしっかり理解し、考えたうえでの政策・方針とは評価で
きません。
厚労省の甘い思い?をそのまま成り代わって記事として掲載する日経、マスコ
ミの意識・認識も問われます。
厚労省が補てんしている、介護人材の賃金を引き上げるための補助金の総額は、
いったいいくらに及ぶのか・・・。
日経も、そうした実情をしっかり調査・把握したうえで、生産性を議論して欲
しい・・・。
とすると、生産性向上を簡単に提起することそのものが難しい介護という仕事、
介護保険制度のあり方を問い直す基本に立ち返るべきと分かるはずですが・・・。
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