日本電産の介護向けロボは、介護人材不足解消、業務効率化に貢献できるか

介護業界の根幹的な課題として取り上げられる生産性の低さ。
その改善のための必須課題とされる、業務の効率化。
その方策として、定番的に引き合いに出されるIT化・電子化の取り組みと
して、最近の報道から、厚労省と民間企業の事例を、以下で紹介し、考えて
みました。

⇒ 「厚労省による現場報告書のIT化・電子化で、介護現場の生産性向上は可能か?
⇒ 「介護間接業務効率化のシステム開発は、介護士に介護作業の過重を強いる?

そこでは、こうした情報システムを用いた間接業務・事務的業務の効率化は
介護実作業そのものの効率化にはほとんど繋がらず、むしろ、間接業務の効
率化が、介護実作業の構成比を高め、介護士の負荷を一層かけることになる。
そんな側面もあると、しました。

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では、実際の介護現場の業務効率化に寄与すると期待される、介護ロボット
の方はどうでしょう。

一時期、介護ロボットを巡る話題が多い時期もあったのですが、最近ではあ
まり聞かなくなりました。
補助金をつけて、介護事業者へ導入を薦める政策は毎度のことですが、裾野
がどんどん広がっているというニュースは、耳にしません。

やはり、大手事業所に限定されるのでは・・・。
そんな気がします。

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2018/1/16付日経に、あの日本電産が工場用の搬送ロボット技術を応用して、
介護用ロボットを開発、という以下の記事が載りました。
⇒「日本電産が介護向けロボ 工場用活用、オフィスにも 年内販売」

詳しくは、リンクした記事をお読みください。

 

ロボットが介護者の負担を減らす、と期待されていますが、見守りそのものをなく
すわけにはいきません。
人手不足解消につながるとも言っていますが、果たしてどうでしょう・・・?

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日本電産のHPでは、<サービスロボット>という切り口でのロボット開発・製品化
を一つの事業に据えていました。

少し引用させて頂くと

  • 人の移動を助けるパーソナルモビリティ
  • 倉庫で商品を運ぶ物流搬送ロボット
  • 会議などに代理参加するテレプレゼンスロボット
  • 家庭内コンシェルジュとして機能するコミュニケーションロボット
  • 重量物運搬をサポートするパワーアシストスーツ
  • 家庭内で活躍するお掃除ロボット
  • 業務用の清掃ロボット
  • 介護作業を手伝う介護支援ロボット
  • 空中撮影、空中物流を行うドローン

 

という領域で、産業用ロボットとは異なるコンセプトで、本業の多様な
モーター技術を活かした製品を開発していることがわかります。

介護現場では、介護支援ロボット、移動用ロボットに加え、掃除等軽作
業用ロボットも活用可能です。

しかし、そうした介護ロボットの導入には当然コストがかかります。
その場合、介護士の人手ではなく、ロボットによる生活介助では、介護
報酬を介護士が行うのと同様に給付するのかどうか、という課題が発生
するでしょう。

また、ロボットの使用料が別途利用者に発生する可能性も出てきます。

そして、多くの介助支援型ロボットは、将来の自動車の自動運転システ
ムで運転手も不要になるように、介護士も不要に果たしてなるのか・・・。

完全にロボットに任せきりにして、自分は他の作業に専念できてこそ業
務効率化が叶うのですが、特に、要介護者の体に触れて介護作業を行う
必要がある場合、そうはいきません。

介護という作業そのものが、人の身体的負担を軽減するロボットの出番は
あっても、人を削減するレベルには至らない。
そう感じます。

お掃除ロボも、単純なお掃除レベルなら人手の代わりになりますが、要
介護高齢者がいる部屋の掃除が、それで済むかどうか・・・。

介助搬送移動ロボットのリース料金が月額15万円・・・。
その分の介護人材を削減でき、業務効率を上げることができるか?

なにより、この移動ロボットに、介助なしで腰掛けることができる高齢者
がどれほどいるか・・・。
自分で操作できる高齢者がどれだけいるか・・・。

どうも種々プラスのイメージができないのですが・・・。

すべて悲観的な見方で、自分でも嫌だな、嫌味な人間だな、と思わなくも
ないですが・・・。

当然ながら、介護人材不足を改善・解消するような、魔法の介護業務効率
化ITは、ないのでは、と考えています。

事業化して儲かるのは、介護業界ではなく、介護業界を顧客とする他業界。
そんな構図が思い浮かび、その格差は、一向に縮まらない。
そう考えます。

介護現場・介護業界の生産性問題。
本質的に、他産業と比較して論じること自体に問題がある。
私の考えです。

 

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<介護関連図書紹介>

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