認知症高齢者増加で高まる入居型介護施設のニーズ:日経MJ『第35回 サービス業調査』から(2)

恒例の日経MJによる『第35回サービス業調査』が11月1日に掲載されました。
昨年同様、その中から、介護業界を「在宅(訪問)福祉サービス」と「有料老人ホーム」
の2つの区分でまとめたランキングデータを紹介します。

昨年の第34回の結果を紹介したのが、以下です。
人手不足の介護業界。在宅(訪問)福祉サービス業にも淘汰の波 :日経MJ『第34回 サービス業総合調査』から(2) (2016/11/20)
年金受給レベルで生活可能な介護施設を!有料老人ホーム業界の使命と期待 :『第34回 サービス業総合調査』から(3) (2016/11/21)

前回は、「在宅(訪問)福祉サービス」編として
介護報酬改定が経営圧迫要因に:日経MJ『第35回 サービス業調査』から(1)
を投稿しました。
今回は、残りの<有料老人ホーム>の2016年度ランキングとその概括レポートを紹介
します。

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 『第35回 サービス業調査』:有料老人ホーム
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<売上高ランキングベスト26

 

27位以下は、以下のようになっています。

 

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比較のため、前回の上位ランキングを以下に

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 『第34回 サービス業総合調査』:有料老人ホーム

<売上高ランキングベスト16>

***** 社  名     部門売上高(百万円) 前年比/伸び率(%)

1位※ベネッセスタイルケア      93,601     8.0         
2位※SOMPOケアメッセージ    35,025    ▲4.1
(そんぽの家)

3位※SOMPOケアネクスト   34,937   ▲0.9
(SOMPOケア ラヴィーレ他)
4位 ニチイ学館   31,411 3.3
(ニチイのきらめき、ニチイホーム)
5位※ベストライフ       29,938 1.9
(ベストライフ、ラ・ヴィ)

6位※ハーフ・センチュリー・モア   22,022 5.3
(サンシティほか)

7位 木下の介護   20,394   ▲3.4
8位※さわやか倶楽部 (さわやか)   12,836     9.8
9位 長谷工シニアホールディングス   9,822 0.1
(ライフ&シニアハウス、センチュリーシティ)

10位 ツクイ (ツクイサンシャイン) 9,220 9.3
11位※チャーム・ケア・コーポレーション 9,150 28.9
(チャーム、チャームスイートほか)
12位 シダー(ラ・ナシカ)      7,607 14.2
13位 ユニマット リタイアメント・   7,385 0.3
コミュニティ
14位※リゾートトラスト        6,298 -
(トラストガーデン、モーニングパークほか)
15位 ウイズネット          5,833 ▲2.0
(みんなの家、すこや家)
16位 創生事業団           4,493 20.6

以下、略

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次は、同紙のポイント。

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 業界動向概括:認知症患者の対応強化
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有料老人ホームの売上高は4.2%増え、伸び率は前回から0.3ポイント拡大。
高齢化の拡大でニーズは広がる一方だが、今後の成長のためには深刻化する人手不足へ
の対応が必要となりそうだ。

※個々の企業の記述については省略しました。

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厚労省によると、有料老人ホームは2016年10月時点では1万2570施設で、3年間で4割増。
行政は在宅ケアを推進しているが、施設のニーズは増える見通しで、事業者には追い風
環境が続く。

成長のネックは人手不足。
8月時点で介護サービスの有効求人倍率は、3.63倍。全職業平均の1.35倍を大幅に上回る。
事業拡大を続けるには、待遇改善などで担い手を確保する仕組み作りが今後一層求めら
れる。

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参考までに、前年2015年度調査の概括も以下に転載しました。

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 業界動向概括:地方勢、2ケタ増収相次ぐ(2015年調査を受けて)

有料老人ホームの売上高は3.9%増えたが、伸び率は1.1ポイント鈍った。
 人手不足を背景に開設ペースが落ちており、大手を中心に伸び率が大幅に落ち
込む
一方、地方では2ケタ台の伸びをみせる企業が相次いだ。

※個別企業の説明は省略しました。

 経営課題として担い手確保を挙げる企業が目立つ。
 重点的に取り組む分野として「スタッフの増強」と答えた企業は49.1%と全体
のほぼ
半分。
 また「コストの見直し」に取り組んでいる半数が具体策として「情報処理の効
率化」を挙
げた。

 

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中堅・大規模企業ほど経営の合理化、システム化が進み、規模のメリットを享受できる
ようになってきています。

「在宅(訪問)福祉サービス」区分と同様に、企業規模の差が非常に大きいことがわか
ります。
また、下位の方ほど、前期比で売上が減少している企業が多いことも同様です。

SOMPO系は、2位と4位の2社を合計すれば、680億円超の規模。
ニチイ学館は、在宅訪問事業を加えると、約1400億円で、ベネッセを上回ります。

業種として社会的な評価・認知を受ける規模の企業が増えつつあるわけですが、1千億円
企業が複数出るようになれば、介護業界の人気も改善された状況になっているのでは・・・。
そう期待します。

やはり、規模の小さな事業所の経営の厳しさは一層増していくでしょう。
人手不足・人材不足が、経営の圧迫要因となるのは、中小・零細事業所。

認知症対策以前の課題が山積しています。

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ついでと言ってはなんですが、昨年投稿した私のコメントも以下に転載を。

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(2015年調査・日経MJレポートを受けて)

要介護3以上と入居条件が厳しくなった特養。
それでも入居待ち状態は一向に解消されず、結局民営の入居型介護施設に依存しなけ
ればならない状況は一層強くなると考えます。

しかし、一般的に民営施設入居は、経済的に可能な高齢者に限定され、低所得高齢者
は無認可の違法すれすれの施設に頼らざるを得ない厳しい現実もあります。

従い、効率化・合理化しつつ介護等生活支援などをリーズナブルな費用で提供できる
か、が有料老人ホームに求められる一つの要素。
そして、当然、富裕層向けの施設の需要も増えていくため、そのマーケットでの競争
も展開されるでしょう。

ここでもやはり、資本力がものをいう段階に入ってきています。
現場の人手不足や経営スタッフの不足も、結局資本力があり、規模のメリットを持つ
大手企業がそれを吸収していくことになります。

ランキング掲載55社中、37位以下が年商10億未満。
55位が年商1億68百万円。
ランキング45位以下の11社においては、7社が前期比割れとなっています。

この調査ではデイサービス事業と入居型介護施設事業との売上を区分していない企業
も多数あり、データが正確性をやや欠いていることも、この業界の管理レベルがまだ未
整備であることを示しています。
トップのベネッセスタイルケアの数字に保育・学童事業を含むということも信じられ
ないですね。日経も、そのあたりは、突っ込んで再調査すべきだったと・・・。

いずれにしても、入居型介護施設は、社会的ニーズが高い事業領域です。
厚生年金受給額レベルで、入居生活可能な介護施設があるべき。
その事業モデルが確立されれば、家族負担が大きい在宅介護からのシフトも促され、
介護離職の抑制、介護をめぐる悲しい出来事が発生するリスクの軽減につながると信じ
ています。

有料老人ホームにもいろいろありますが、そうした社会的使命を認識し、貢献して
くれる事業が増えることを願っています。
SOMPOグループには、特に期待したいと思っているのですが・・・。

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1年で目立った変化はありませんが、繰り返しになりますが、競争の激化と、それ
によるM&Aの増加傾向は、止めようがない気がします。

認知症高齢者が今後一層増加することを考えると、やはり入居型施設へのニーズが
一層強くなるでしょう。
とすると、ベネッセのように、所得に応じて幅広く高齢者が入居できる施設を持つ
企業が優位になります。

その視点から、現状成長性がない中小・零細事業所にも多少なりともチャンスはあ
るのですが、来年の介護報酬改定がどのような内容で、どんな影響を及ぼすか・・・。
あまり残された時間はないように思えます。
もちろん、小規模でも顧客のニーズにしっかり適合した運営・経営は可能でしょう
が、家族的経営ならば可能でしょうが、介護スタッフを雇用して運営するならば、
やはり一定規模の収益力が不可欠です。

日経MJの調査ですが、2つの区分にする必要はないのでは、と思います。
恐らく、何割かが複数の介護業態を経営する企業のはず。
分類することで、かえって分かりにくくなっているような気がします。

介護現場の方々の働き甲斐、将来に対する期待・・・。
やはり、事業規模が大きい企業が、業界の健全化と質の向上を牽引していって欲しい。
そう思います。

 

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結城康博氏著

☆☆☆『介護 現場からの検証』(2008年5月20日・岩波新書)

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☆☆☆☆『在宅介護 「自分で選ぶ」視点から』(2015年8月20日・岩波新書)

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☆☆☆☆『介護破産 働きながら介護を続ける方法』(2017年4月14日・KADOKAWA)

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河内孝氏著

☆☆☆☆『自衛する老後 介護崩壊を防げるか』(2012年5月20日刊・新潮新書)

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樋口恵子氏著

☆☆☆☆その介護離職、おまちなさい』(2017年10月20日刊・潮新書)

長岡美代氏著

☆☆☆介護ビジネスの罠』(2015年9月20日刊・講談社現代新書)

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中村淳彦氏著

☆☆『崩壊する介護現場』(2013年9月20日刊・ベスト新書)

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☆☆『絶望の超高齢化社会 介護業界の生き地獄』(2017年6月5日刊・小学館新書)

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和氣美枝氏著

☆☆☆『介護離職 しない、させない』(2016年5月15日刊・毎日新聞出版)

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宮本剛宏氏著

☆☆☆☆『介護危機 「数字」と「現場」の処方箋』(2017年6月19日刊・プレジデント社)

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杢野暉尚氏

☆☆☆『人生を破滅に導く「介護破産」』(2017年6月23日・幻冬舎)

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太田差惠子氏著

☆☆☆『親の介護で自滅しない選択』(2017年2月15日刊・日本経済新聞出版社)

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横井金夫氏著・山田茂生氏氏監修

☆☆☆『失敗しない介護施設選び』(2015年8月25日刊・幻冬舎・¥1,4042)

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