介護スタッフの離職防止「社内再マッチングシステム」の狙い・背景とその先

2017/10/24付日経に
◆「SOMPOケア、施設間で職員やりとり 離職防止狙う」
と題した記事が載りました。

ポイントを絞るとともに、参考になる関連情報から考えてみました。

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介護大手のSOMPOケアグループが、板橋区内でSOMPOケアネクスト、
SOMPOケアメッセージなどが運営する有料老人ホームや訪問介護の事業所
など
15事業所を対象に、職員のマッチングシステムを導入。
介護施設間での職員の相互受け入れの実証実験を行う。

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という記事。
「相互受け入れ」、とあったので、人員不足時のグループ事業所内での応援や
人事異動を柔軟に行うのかと思ったのですが・・・。
そうではなく・・・

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職員が退職を検討する際に、グループ内の別施設を紹介し、離職防止につなげ
るべく、
介護関連ベンチャーのヘルスケアマーケット・ジャパンが開発したマ
ッチングシ
ステム「ユアマネージャー」を導入。
離職希望者はパソコンなどから専用ページにログインし、通勤可能範囲などを
入力すると、条件に合った事業所が表示される。
他の事業所で働く機会を示すことで、グループ内からの離職を防げるとみる。

 

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読み終わって、ん?
と思ってしまいました。

自グループのどの事業所かで、退職したいと考える人がいる。
その退職理由は、確かにいろいろあるでしょう。
このシステムを使う人がいるとすれば、
・現在の勤務先への通勤が長時間かかるなど不便
・人間関係が原因
・勤務時間など労働条件面で、希望通りにいかない
などの悩みや問題を抱えているスタッフでしょうか。

介護という仕事が嫌になったり、他の職種に代わろうと考えての退職であれ
ば、このシステムは不要。

自グループ内で適当な勤務先があれば探してみよう。
そう考える人が多いと踏んでのことなんでしょうね。
そして、その場合、すぐに上司や勤務事業所に相談するのではなく、知られ
ないうち、話をする前に調べてみたい・・・。
そういう人を想定している・・・。

でも仮に、希望にマッチした勤務先があれば、上司や勤務先に申し出ること
になるはず。
仮に上司を含め人間関係が理由、と分かればまずいですよね。

確かに退職を申し出るのは多少なりとも抵抗があります。
その前に、マッチングシステムを使って、調べるということがどれほどある
のでしょう。
そのシステムへの登録は、もし利用するなら、自宅で利用できることが前提。
でも事情によっては、本人と上司が、相談しながら、このシステムを使って
異動・転職先を探す、などということもあるかもしれない・・・。

何となく、いずれ、他社事業所を辞める人を募集・採用することに利用する
のが目的のような気もするのですが、どうでしょうか。

 

などとつらつら考えつつ、ヘルスケアマーケット・ジャパンのホームページ
を見ると、本件のプレスリリース資料が公開されていました。
以下、一部を転載しました。

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ヘルスケアマーケット・ジャパン、SOMPO ホールディングスと HR テック
『社内再マッチングシステム』の実証実験を開始 介護事業所の離職検討者に
提示できる働き方の選択肢を最大化
〜グループ事業所間の異動・転籍調整を一元管理し、人財の社外流出抑制へ〜

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とあります。
端から『社内再マッチングシステム』と名乗っています。
そして

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家庭環境の変化や職場の人間関係への不満などから離職を検討している職員に
対し、周辺で通勤可能な範囲にあるグループ内施設・事業所を網羅的にピック
アップし、異動・転籍の調整をする ・・・

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としています。

ん~。
こうなると、普段の管理職者とスタッフのコミュニケーションの善し悪しが
分かってしまう・・・。
いやいや、そんな狭い視野で考えているのではないですよ、と

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介護労働者の視点から見ると、同じ通勤時間以下で求人を出している介護施
設や在宅事業所は、特に都市圏においては枚挙に暇がなく、家庭環境の変化、
職場の人間関係への不満などの一般的な離職原因に直面したとき、転職につ
ながりやすく、事業者側から再検討を促されても、勤務を継続しにくい環境
にある。
(ここまでは、書き出しの部分の繰り返しですが)

さらに、人手不足は介護業界に限った事ではなく、夜勤シフトや早朝シフト
などがある介護施設や在宅事業所の勤務が、生活にマッチしなくなった主婦
層などの職員は、日勤帯の介護以外の仕事においても引く手あまたという状
況にある。

こうした環境の中で、介護事業者は、職員のやりがいの向上や、働きやすさ
の改善などに取り組み、一度採用した職員に長く働いてもらうための工夫を
重ねている。
また、一度、不満を抱えてしまった職員を別事業所へ異動することによって
不満を解消するということも一般的に行われている。

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なるほど。
どこまで行われているか、かなり事業所・事業会社によってバラツキがある
と思いますが・・・。

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しかし、合併や多角化、ドミナント戦略によって、多くの事業所を同一のエ
リア内に抱えている事業者においては、異動先の検討・受け入れ先の状況確
認の手間が多大にかかってしまう、限定的な異動先の検討に留まってしまう
という課題があり、離職検討者の慰留において、できる全ての手を尽くすこ
とが難しい状況にあった。
本サービスは、その異動・転籍の調整オペレーションをシステムがサポート
することによって、離職検討者への対応スピードの向上、異動先選定の手間
の削減を実現し、離職検討者に提示できる働き方の選択肢を最大化すること
で離職率の低減、採用・教育コストの削減につなげる。

 

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とありました。
かなり介護業界の事情を勘案してのシステムではある。

要するに、介護の仕事は続けたいが、いろいろ事情があって今の勤務先をや
めざるを得ない、辞めることを考えたい・・・。
そういう自社の退職予備軍のスタッフを、グループ内で引き留め、囲い込み
たい。
そうしたニーズに対応しようというわけです。

で、よくよく読むと、やっぱり、というか、当然というか、このシステムは
開発企業であるヘルスケアマーケット・ジャパンが提案主導したらしく、
他企業にも販売する計画であることが、そこに示されていました。
そのシステムの簡単な説明部分と営業展開に関する部分を転載しました。

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介護業界のことをよく理解している開発者。
資料には、坪井俊憲社長は、介護福祉士として介護の現場の経験を持っている
ことも示されていました。
なるほど・・・。

まあ、それなりの規模と事業所数、事業形態を持つ介護事業企業向け、と言え
るかと思います。
でも、いずれこのシステムが大手企業で利用されるようになると、その使い方、
実績などをベースに、事業所向けではなく、介護の仕事に携わっている人の転
職のための最適勤務先マッチングサービスシステムとして、一般に公開される
のでは・・・。
やっぱりそううがってしまうのですが・・・。

ということは、やはり中小・零細介護事業所にとっては、死活問題になるので
あります。
やはり、今からしっかり事業戦略・事業計画、そして人材政策を見直し、作り
上げていく必要があります。

慢性的な人材不足不足の介護業化の中での、決められたパイの中での引き留め
あい、奪い合いを背景にしたビジネスの一形態。
ん~、とまた唸ってしまいます。

 

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