在宅介護政策が孕む介護苦殺人・心中事件リスク:『長生きしても報われない社会 在宅医療・介護の真実』から(3)

2016年9月に発刊された
長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』(山岡淳一郎氏著)。

本書を参考に介護問題を考えます。

本書のサブタイトルにある「在宅介護」。

政府・厚労省の介護政策において置く<在宅介護主義>。
これに非常に疑問を持つ私です。

本書では、在宅医療も在宅介護と一体のものとして考えており、それは当然
のこと。
そこでは、一層在宅での老後生活と看取りについての困難さが浮き彫りにさ
れます。
そのためということでしょうか。
長生きしても報われない」という悲観的なタイトルとなった本書。

「長生きすればみな報われるべきなのか?」、
「報われるとはどういうことなのか?」。
本書のタイトルを目にしたとき、率直に第一に抱いたのが、この疑問でした。

お叱りを承知で、根源的なこの疑問を抱きつつ、在宅介護・医療政策への疑
問をベースに考えます。

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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実
「第1章 在宅医療の光と影」
第1回:「看取り」でなく「あやめる」情動へ。在宅介護がもたらす社会病理?
第2回:愛情の在り方がもたらす在宅介護殺人事件

その第3回です。

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 介護苦関連の事件は正確な数字がわからない
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 警視庁は「介護・看病疲れによる殺人事件」について、統計を取り始めた2007年
から2014年までの8年間に全国で371件発生したと発表している。年平均で46件。
介護・看病疲れで自殺や無理心中で亡くなった人は8年間で2272人。年平均84人。

しかし、これらの数字は現実をかなり小さく見せている。実際に起きている現象の一部、
氷山の一角を現しているに過ぎない。

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 と述べ、未遂などが表面化せず、深刻化する介護をめぐる問題が看過されている
状況に警鐘を鳴らします。

詳しくは、第三項「介護苦関連の事件は正確な数字がわからない」をお読み
頂ければと思います。

 

次回、<誰かに話せることの大切さ> に続きます。

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こうした悲しい出来事が日常化するであろうことは、「施設から自宅、家へ」と在宅介
護を方針とした介護政策では、当然想定されたはずです。
そして、介護離職を強く促すことも・・・。

在宅医療・在宅介護のために要員・組織体制を、地域包括ケアシステムでカバーする。
言葉・表現はカッコいいですが、やるのは人。
看護師・介護士・医師などそうした高度専門職集団と組織が、ハイどうぞと、用意され
るはずはないのですから・・・。

デイサービスなど一時的な居宅介護サービス事業は、まさにテンポラリーで、途切れ途
切れのサービス提供・ある意味、ベルトコンベアで順番にサービス利用者が送られ、送り
返されていく事業システムにみえます。
それでも、ほんの一時でも自宅での介護の負担を免れることができる貴重なサービスと
して受け止められている。
しかし、根本的な改善、苦難の解消には役に立ちません。私個人的には、また元の大変
な介護に戻ること、断続的にそれが繰り返されることでの反動の方が、一層ダメージを与
えるのではと、悲観的に考えてしまいます。

そうしたつかの間の不安と苦労を忘れるために、あるいはそれらを引きずるがゆえに一
線を越えてしまうかもしれぬ重い心をしばしぬぐうために、話す場があり、話す相手がい
ること、同様の体験を持つ人たちと交わる機会を持つことの大切さ・・・。

その事例に話は進みます。

 

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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』構成
はじめに
第1章 在宅医療の光と影
第2章 亡くなる場所が選べない
第3章 認知症と共に生きる
第4章 誰のための地域包括ケアなのか
第5章 資本に食われる医療
おわりに

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【山岡淳一郎氏・プロフィール】
◆1959年愛媛県生まれ、ノンフィクション作家、東京富士大学客員教授
◆「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに近現代史、政治、医療、
建築など分野を越えて旺盛に執筆。時事番組の司会も務める。
◆著書:『原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜
インフラの呪縛: 公共事業はなぜ迷走するのか』『気骨: 経営者 土光敏夫の闘い

国民皆保険が危ない』『後藤新平 日本の羅針盤となった男
田中角栄の資源戦争』『医療のこと、もっと知ってほしい』他多数。


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