高齢者に戦争体験を聞く意義?在宅介護の大変さもある意味、戦争状態?:中日新聞<生活部記者の両親ダブル介護>より(7)




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2016年10月から中日新聞で始まった、同紙生活部三浦耕喜記者のご両親
の実際の介護生活を綴る連載、<記者の両親ダブル介護>
2回分ずつ紹介してきています。

第1回:介護事情は千差万別。恵まれている特養入所
第2回:「食べることは、生きること」と見つけたり!
第3回:医療と介護、病院と介護施設。人それぞれ異なる介護生活
第4回:ひとそれぞれに異なる介護事情・介護生活
第5回:高齢者もSNS、ネット利用を普通にやれるように
第6回:介護度が、健康度が改善していく喜び




今回は、13回・14回目を、まとめて。

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 (13) 戦争の話を聞く 老いていく“記憶の器” (2017/3/29)
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 終戦当時9歳だった母親の戦争体験についてテーマにした今回。

こちらからお読み頂きたいと思います。

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 (14) 母たちの戦争体験 疎開先から見た空襲 (2017/4/12)
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 前回に続いて、母親の戦時中の体験をテーマとしています。

14回を数えるに至った連載。
今回分は、こちらからどうぞお読みください。


劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック

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高齢者の記憶が消え去る前に、戦争体験を聞き、記憶を引き継いでいく。
戦争の悲惨さを語り継ぎ、二度と繰り返さないために・・・。

と、通常、こんな語り口、切り口になります。

でも私自身は、この方法、その形はあまり好みません。

なぜなら、戦争の悲惨さは、語られなくても、言われなくてもひどいことは明ら
かですし、イメージだけで十二分に、二度と繰り返してはならないことは自覚でき
ます。

悲惨な、非人道的な画像や文章を見せられなくても、聴かされなくても・・・。
むしろ見たくありませんし、聞きたくありません。

爆撃・空襲で受けた被害の酷さで戦争云々を語ることも十分理解できますが、私
はむしろ加害国として日本と日本人が行ってきた行為の酷さと、被害を与えた行為
の方に思いが傾きます。
加害がなければ、日本も被害を受けることはなかった・・・。
そして、加害者となることを止められなかった国と権力の責任と、それを止めら
れなかった社会と人の方に気持ちが・・・。

それ故に、これからの時代・社会において、戦争は絶対にあってはいけない、加
害者にも被害者にもなってはいけない。そう思い、そう願い、何に、ということな
く、そう祈ります。

どちらも92歳で亡くなった両親。
父は明治40年生まれ、母は大正2年生まれでしたが、戦争のことを聞いたことは
ほとんどありません。
聞きたいとも思いませんでしたし、両親みずから話すこともなかった・・・。
父は、陸軍の将校付きの運転手をしていたため、戦線に出ることなく終戦を迎え
と聞きます。そして郷里に戻って、自転車・2輪車の販売と修理業を自ら起こして、
家族を養った。

終戦の年1945年に、父は38歳、母は32歳。
私は、父が43歳、母が37歳の時に生まれました。
5人の子ども育て上げた、普通の良い家庭だったと思います。
戦争の悲惨さとその時代の経験・体験は、ほとんどおくびにも出さずに・・・。
昭和13年と16年生まれの2人の姉たちは、なにかしらの原体験を持っていたでしょ
うが、彼女たちからも聞いたこともありません。
2人の兄たちは、18年と20年生まれ。戦争の体験も記憶もないに等しい。
そして私は、まさに戦争を知らない子どもです。

その両親とも、80代後半からはひどい認知症に罹り、自宅で介護してくれた次兄
夫婦を徘徊や下の酷い後始末などで随分困らせたと聞きます。
こちらの方が、ある意味、戦争状態だった・・・。

在宅介護生活。
先が見えない大変な介護の生活を日々送っている人たちが、何万、何十万、何百万
人といる・・・。
敵がいない戦争状態の日常化・・・。
こちらは、何とかできそうなはずなのですが・・・。
不思議な時代、社会です。

 

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