介護職員の慢性的人材不足と獲得競争激化の先:介護事業の諸問題-4



要支援・要介護者数は毎年増え続けており、
団塊の世代が全員75歳代になる2025年以降には一層加速することは
間違いありません。

そのため、
2025年度には介護職員数が30万人も不足すると予想されています。

介護職員の人材不足の要因の一つが、低賃金であること。

この業界の全国平均賃金が14年度、常勤者が219,700円
訪問介護員(ホームヘルパー)が220,700円
介護相談専門員(ケアマネジャー)で262,900円
で、全産業平均の329,600円と比較して大きく下回っています。



人材ニーズがあり、人材不足であるならば
需要と供給のバランスを考えれば給料・賃金が上がって
当然なのですが、待遇が上がらない。

その理由は
介護保険法で介護サービスを提供した介護事業者に支払われる報酬が
決められていることにあります。
すなわち、国が決める「公定価格」というわけです。

しかも今月に改正された介護保険法では、介護サービスの平均報酬額が
下げられました。
介護事業者の介護保険適用サービスにおける収入が減る要因となります。

だた一方、さすがに介護職員の低い賃金レベルを是正すべきという
意識が働いたのでしょう、介護職員の賃上げの原資とすべく
「処遇改善加算」を一人月間12,000円引き上げました。

しかし、その引き上げ額そのものが、全員一律に支給される規定はなく、
ケアマネジャーや生活相談員は対象外。
また、事業所によってその扱いが異なると言われています。
全員一律に上げることはない、と言っている事業所があるのです。

介護保険料の引き上げは、受益者負担主義から当然と思われますが
介護報酬の引き下げは
増大する一方の社会保障費としての介護・医療コストを
抑制しようとするものであることも一応理解はできます。

しかし
社会的・公共的意義が深い
介護・医療や出産・育児・教育などの領域では
一般的な経済・経営論をそのまま適用することに矛盾があることも
明らかです。

もしこれを合理的と行政(国・自治体)が考えるならば
公務員の賃金も、介護職レベルに下げる必要がある・・・。
(こんなことを言うと大ブーイングが来ますね・・・)

夜勤を含め
身体の自由が効かない、
自立した人としての意識・意志を持つことが困難な
要支援・要介護の人々を相手とした仕事がいかに厳しいかは、
想像できることであり、また想像を絶することでもあります。

介護職の離職率は約17%と、全産業平均の約16%に近いとは言え
今年1月の有効求人倍率は2.6倍で、全産業平均1.14倍の倍以上です。

人・社会の役に立ちたいという純粋な気持ちがあっても
希望する安定した生活が保証されない処遇の仕事・職種に
人が集まりにくいのは当然です。



では
どうすれば賃金が上がり
安心して仕事に取り組むことができる業界になるか・・・。

一つは
介護事業所がある程度の規模を持ち
安定した経営、収益性・成長性を高めていける経営能力があること、
です。

既にそうした大手企業による規模拡大は進められ
人材の囲い込みが進みつつあります。

そこでは
賃金に限らず、勤務シフト、勤務形態、雇用形態、保育所の設置等
種々の政策・制度を拡充し
小規模事業・家族的事業との差別化を進めています。

その中で
全産業的には非正規社員の正規社員化がここ1~2年進められて来た
流れとは反対に
介護職員の非正規社員比率が高くなっていくことも予想されます。

これは
ハードな仕事であるがゆえに、希望する時間帯・時間数・勤務日数
で働きたいという働き手の希望・ニーズを反映する結果であり、
かつ経営サイドの人件費抑制という希望とが一致するからでもあります。
※パート比率が9割と高い非正規社員で運営する
成功モデル事業所の事例は、このブログで紹介しています。
→ たんぽぽ介護センターが「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委特別賞受賞

また介護事業経営の観点から
介護保険報酬制度に縛られないその他の有料サービスの拡充・強化が
不可欠と言われています。

介護保険適用サービスと保険外有料サービスの組合わせ。
これを「混合介護」と言うそうです。

例えば
サプリメントやスポーツ施設事業などは
保険適用介護事業ではありませんが、それらと介護サービスを
近づけること、結びつけて考えることができます。

確かに
規模の拡大は、一律の有料サービスを入居しているできるだけ
多くに人に利用してもらうことができるメリットがあります。

一方
そうした一律のサービスではなく、個人個人の希望やニーズに
対応した有料サービスも、工夫すれば生み出すことはできるは
ずです。

経営努力に加え、職員の方々が積極的に創意工夫に取り組むことで
付加価値を持った新しいサービスを創出してほしいものです。
非介護保険サービスの強化、営業・販促

家族の介護に実際に関わるようになってから
介護事業の裾野の広がり、業種の広がりが大きいことを
確認できました。



介護ビジネス・介護業界は
ある意味で新しい業界、産業と言えるのではないかと思います。

人と人とのビジネスですから
生産性を上げることを至上命題にするのは難しいと考えます。

一定レベルの生産性・効率は経営上必要ですが
事業を持続させ、職員の皆さんの生計を安定的させ
継続的に収入を増やしていくことが可能なレベルで
事業収益(収入と利益)を高めていく経営を行う。

課題・問題が多い業界だけに
働くスタッフのオープンな関係と経営で
課題解決・改善実践モデル事業、業界を創りあげて頂きたいと
願っています。

この問題を考える時
必ず
社会福祉法人が大半を運営する「特別養護老人ホーム」(特養)の
事業の在り方に問題があり
改善を必要とする、という議論が提起されます。

このテーマは別の機会に取り上げる予定です。

 

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結城康博氏著

☆☆☆『介護 現場からの検証』(2008年5月20日・岩波新書)

カスタマーレビューページ

☆☆☆☆『在宅介護 「自分で選ぶ」視点から』(2015年8月20日・岩波新書)

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☆☆☆☆『介護破産 働きながら介護を続ける方法』(2017年4月14日・KADOKAWA)

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