フランスのユマニチュードを知る。海外の認知症事情(3):『老い方上手』「認知症400万人時代」から-4



老い方上手』(WAVE出版)というとても良い本を読み終えました。
5人のベテラン女性が、それぞれご専門分野をテーマにした図書です。
早稲田大学市民講座のオープンカレッジでの輪講をベースにした著作。
印象深かった内容を、別のブログも活用して紹介し、考えていきます。

大熊由紀子さんによる認知症についての3回目。
「海外事情」についてです。

1回目はこちら ⇒ 認知症をめぐる5つの誤解
2回目はこちら⇒ デンマークの認知症事情を知る
3回目はこちら⇒ スウェーデンの認知症事情を知る

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【海外の認知症事情(3):フランス】

(前回からの続きです。)

<ユマニチュードのフランス>

次はフランスです。
毎日新聞に連載していた「私の社会保障論」で、2013年8月に書いた記事の
タイトルが
「『魔法』の高齢者ケア フランス発 国境を超えるユマニチュード」

ユマニチュードを作り出したのは次ネストさんと、元奥さんのマレスコティさん。
この記事を書くかどうか、とても迷いました。
本田美和子さんという東京医療センターの総合内科の医長さんが、私のところに
この話をしに来られたのですが、なかなか信じられませんでした。

そこで、認知症のことをよく知っている看護師さんと精神科医、それと総合病院

の看護師さんと一緒に、ユマニチュードの研修の場を訪ねました。
そうしましたら、長いこと起きようとしなかった、認知症の元教師の方が、
歌を歌いながら歩き始めました。物を食べるのを拒否していた人が自分で
食べるようになりました。
この日をきっかけに、「ユマニチュード」はNHKや他の新聞が取り上げたり、
本が出版されたり、研修が行われたりで、広まっていくことになりました。

お年寄りは、肺炎になったり、腎盂腎炎になったり、骨折したりで入院する
ことがしばしばあります。ところが、お風呂に入れようとしたり、点滴を
しようとしたりすると、いやがって大変な騒ぎになることがどこの病院でも
起きています。蹴飛ばされたり、ひっかかれたりして、看護師さんが疲れ
果て、辞めていく。
私と一緒にユマニチュードを見学した看護師さんは「自分たちがよかれと
思ってしていたケアの誤りがもとで、お年寄りが暴れる。そこで、縛ったり
していた。申し訳ないことをしていた」と涙を流されました。

基本はシンプルです。まず同じ目の高さで正面から見つめる。
認知症の人は、視野が狭くなっているそうです。ですから、いきなり、
離れたまま話しかけると、いくらやさしく話しても駄目なんだそうです。
ちゃんと、その人の視野に入っていって、その人の目をちゃんと見て、
挨拶をしてから礼儀正しく話しかけることが大切だそうです。
それから体に触れるときも、掴むようなやり方をすると逮捕されるみたい
な感じになるので、その触れ方も考える必要があるとのことです。

『「寝たきり老人」のいる国いない国―真の豊かさへの挑戦』に、
「日本の寝たきり老人は、寝かせきりにされて廃用症候群になってしまった
被害者」と書きました。認知症の場合も、「立っていただく」ということが
すごく大事になるのだと知りました

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フランスの医療・介護現場の紹介ではなく
認知症改善の実践方法についての話でしたが、とても興味深い内容でした、

昨年12月の義母(93歳)の骨折入院・手術から、
今年に入ってのリハビリ、介護施設入所検討・入居と、初めて介護について
考え、体験することになった私。
このユマニチュード(Humanitude®)については、当然まったく知りませんでした。

調べてみると、ユマニチュードとは、
認知症の人のケアをするためのフランスのイヴ・ジネスト氏によって開発された方法。
見る話しかける触れる立つという4つの方法が柱となっており、
全部で約150もの技術があるそうです。
⇒ 詳しくは、こちらのサイトで

フランス語の発音でユマニチュードと聴くと何のことかわかりませんが
Humanitude® というスペルを見ると Human =ヒューマン、人 という用語が入っています。
それにattitude (態度・心構え)という単語にある tude が付いて Humanitude 。
これでその真意が分かるかと思います。

大熊さんのこの文章を読んで調べてみましたら
理解するために格好のサイトがありました。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、こちらを是非ご覧になってください。
ユマニチュードとは

昨年2014年2月5日のNHKTV[クローズアップ現代]で取り上げられており
その動画も挿入されています。
お時間があれば、こちらも是非ご覧ください。
(途中何回かCMが挿入されております。)

ユマニチュードを初め、認知症について理解する上で適切なサイト
認知症症状.com がありましたので、こちらも確認してください
⇒ http://www.認知症症状.com/

また大熊さんの文中にある本田美和子さんがお書きになった
ユマニチュード入門』は、こちらでチェック!

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【大熊由紀子さんプロフィール(同誌より転載)
国際医療福祉大学大学院教授。専門は医療福祉ジャーナリズム分野。
福祉と医療、現場と政策をつなぐ「えにし」ネット・志の縁結び&小間使い。
<著書>:『「寝たきり老人」のいる国いない国-真の豊かさへの挑戦』
『恋するようにボランティアを-優しき挑戦者たち』
『物語・介護保険-いのちの尊厳のための70のドラマ』上下2巻ほか。
⇒ http://www.yuki-enishi.com/

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今までこのブログで書いてきた「認知症」に関連するブログは
以下の通りです。 今後も継続して、考えていきます。
認知症とは:原因・症状、対症法、介護問題など認知症の基礎知識(日経「知っ得ワード」から)
認知症の社会的費用推計の活かし方:医療・介護費削減とインフォーマルケアコスト増政策用調査にならぬよう
公文と自治体、脳活性化プログラムの認知症重症化防止で成功報酬:他分野でも補助金から成功報酬制へ
「認知症ケア専門士」 資格制度・試験内容と仕事の意義

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河内孝氏著

☆☆☆☆『自衛する老後 介護崩壊を防げるか』(2012年5月20日刊・新潮新書)

カスタマーレビューページ

樋口恵子氏著

☆☆☆☆その介護離職、おまちなさい』(2017年10月20日刊・潮新書)

長岡美代氏著

☆☆☆介護ビジネスの罠』(2015年9月20日刊・講談社現代新書)

カスタマーレビューページ

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