
介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題:『在宅介護』より(6)
介護業界の方々と、介護者・要介護者、介護に関心をお持ちの方々に
是非ともお読み頂きたい、結城康博淑徳大教授著
『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から (岩波新書)』(2015/8/20刊)
本書を参考に、私の狭く、少ない経験からの意見・感想を添えて、
これからの介護を考えるシリーズです。
第1回(序章):『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して
第5回(最終章):多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
今回は第6回
---------------------
最終章 1.介護における格差(2)
---------------------
<介護保険が使えない>
年金給付額18万円未満の高齢者は、「普通徴収」制により
被保険者である高齢者自らが保険料を納めることになる。
その対象者が保険料を1年以上滞納すると、「償還払い」方式により
本来1割自己負担のところ、いったん10割を介護事業者へ支払うことに
なり、後日、領収書などを揃えて事務手続きすることで、9割分の支払額
が返金される。
また、1年6か月以上保険料の滞納が続くと、保険給付の制限が課せら
れ、介護保険の一部サービスが受けられなくなる。
2年以上滞納が続くと、自己負担1割が3割負担となり、高額介護サー
ビス費の支給も停止される。
こうした現状の介護保険制度の問題をここで指摘しています。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
<年金支給開始年齢>
次に、今後予想される年金支給開始年齢の引き上げが、平成25年に介護保
険サービスを利用している65~69歳が19万人以上いることを引き合いに
在宅介護の環境を劇的に変化させる可能性の言及しました。
※次回は、2.産業としての介護(1)
<混合介護とは><家政婦サービス><法の隙間を狙う>に続きます。
「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」構成
1.介護における格差
2.産業としての介護
3.これからの政策と財源論の方向性
4.あるべき日本の介護システム
5.介護は社会投資である
----------------------------------
少子高齢化の影響を最も受けるのが、年金、医療保険、介護制度。
そのどれも強く関連しているために、受益者負担という方針の下では、
どうしても現在の高齢者のみならず、将来の高齢者の先行きも厳しくな
っていくことが当然想定されます。
すなわち現役世代の不安とリスクは高まるばかり。
他方、現在の高齢者はいわゆる逃げ切りに入っているのですが、それで
も経済的な負担の増加と、受けることができるサービスの質・量が下が
っていくリスクも高まっていく・・・。
また高齢になればなるほど、事務的な手続きや制度や方法の理解や判断
が困難になり、そのために不利益を被るリスクも大きくなります。
そういう点をいかに簡素化・単純化・省略化するかが、行政の課題なの
ですが、どうもこの手の課題は、逆行して複雑化することの方が多いで
すね。
役所・公務員の欠点です。
年金の種類と年金給付額の違いで発生する介護格差。
必要な手続きの違いとその実行の有無で生じる介護格差。
本質的には、それらの違いによって、受ける介護サービスが異なること
や本来受けることができるサービスの削減につながることはあり得ない、
あってはいけないはず・・・。
社会保障制度の在り方を根本的に変えるための具体的な提言に至るでし
ょうか・・・。
---------------------------
【結城康博氏プロフィール】
1969年生。淑徳大学社会福祉学部卒
法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)
介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として
介護系の仕事に10年間従事
現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)
厚労省社会保障審議会介護保険部会臨時委員を4年間務める。
社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー有資格者
<著書>
『医療の値段ー診療報酬と政治』
『国民健康保険』『孤独死のリアル』
『日本の介護システムー政策決定過程と現場ニーズの分析』他
『介護―現場からの検証 (岩波新書)』を
---------------------------
-----------------------------------