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地方消滅対策に必要な、全世代対応地域包括ケアシステム発想:『長生きしても報われない社会』から(20)

長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実
山岡淳一郎氏著・2016/9/10刊)を用い、
在宅介護と在宅医療について考えるシリーズです。

「第1章 在宅医療の光と影」
第1回:「看取り」でなく「あやめる」情動へ。在宅介護がもたらす社会病理?

第2回:愛情の在り方がもたらす在宅介護殺人事件
第3回:在宅介護政策が孕む介護苦殺人・心中事件リスク
第4回:「認知症の人と家族の会」をご存知ですか
第5回:厳しい在宅介護で魔が差すことがないように必要な「間(ま)」を
第6回:自治体、ケアマネジャー、NPO法人等、信頼できる相談先を!
第7回:川崎幸病院と杉山孝博医師の在宅医療への取り組み紹介
第8回:在宅での自己管理治療のパイオニア、川崎幸病院・杉山康博医師の足跡
第9回:事例から在宅医療・在宅介護の大変さをイメージしておく
第10回:在宅医療・在宅介護の根本的な問題を、クロ現+からも考える
第11回:増える独居者在宅医療・介護に備える社会は・・・
第12回:次第に体力が衰える、認知症特有の病状進行を知っておく
第13回:認知症在宅介護、認知症老老介護のリスクが増える
第14回:在宅医療・在宅介護を可能にする諸条件
第15回:難病在宅医療、生の尊厳性への向かい方
第16回:医療・介護の自己負担・保険料負担、全体を知っておくべき
第17回:高齢者の5人に1人が相対的貧困状態における医療と介護
第18回:在宅医療・在宅介護の一面。施設往診・施設介護の経済合理主義にどう対処すべきか
第4章 誰のための地域包括ケアなのか」
第1回:理想としての地域包括ケアシステムは機能しているか

前回から、第4章」に入っています。
その第2回(通算20回)です。

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 住民による住民のための医療法人
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江戸後期、任侠で鳴らした国定忠治こと長岡忠次郎が磔に処せられた関所跡を過ぎ、
草津街道を西へしばらく進むと、世にもまれな診療所が立っている。
 群馬県吾妻郡東吾妻町「坂上地区」、ここで暮らす住民が自ら資金を出し合い、医
師や看護師、介護スタッフを雇って運営する「医療法人坂上健友会・大戸診療所」で
ある。
 医療法人は星の数ほどあるけれど「住民立」といえるのは大戸診療所ぐらいだろう。
 大戸診療所は、1994年、坂上地区で生活していた約4000人の「ふつうの人」が「
友の会」を結成し、お金を持ち寄って、創設された。(略)上州には自主自立の気概
が根づいているようだ。
 大戸診療所では開設以来、雨の日も風の日も、患者の送迎を続けてきた。5つの集落
が散在する坂上地区は、とにかく広い。面積は100平方キロメートルで、東京の練馬区
の2倍以上だ。そこに自動車の運転ができない高齢者がポツンポツンと暮らしており、
バス便は少ない。患者の足の確保は診療所の存立にかかわるテーマなのだ。

大戸バス

 山間部の過疎地とあって、医師はなかなか常駐してくれない。苦労を重ねて、診療
所は発想を転換した。無理に医師を常駐させるのではなく、日替わりで内科、外科、
精神科・・・とそれぞれ通いの医師に診療を託し、「1週間通したら総合病院」という
シフトを敷く。急病やケガの救急対応には限界があるので、近隣の原町赤十字病院な
どと連携して緊急事態に備えている。

 地域と結びついた大戸診療所は、住民が齢を重ねるにつれてしぜんに介護分野にも
乗り出した。介護保険が施行された2000年に通所リハビリ施設「デイケアおおど」、
2004年には「訪問介護ステーションおおど」、2011年に「デイサービスセンターおお
ど」を併設。2015年には診療所の要請で、近所に「坂上薬局」が開設される。
 これがどこにでもある調剤薬局だと思ったら大間違い。薬の提供だけでなく、「買
い物難民」を解消するために食品や調味料、洗剤といった日用雑貨も扱う。
 もともと薬は院内で処方していたのだが、医薬分業の流れも強まり、切り離しを考
えていた。大戸診療所の生みの親、坂上健友会常務理事の今野義雄氏が安中市の調剤
薬局に相談し、地元出身の薬剤師がUターンしてオープンにこぎつけた。
 今野氏は、こう述べる。
「街道筋の商店街が後継者難などで次々と廃業しましてね、住民は離れた市街地まで
買い物に行ってました。年々、不便になるので何とかしたかった。皆さん、診療を受
けて薬を取りに行くついでに身の回りの物も買えるようになって、喜ばれています。

 さらには、近隣の温泉地や吾妻渓谷へ向かう観光客用の無料休憩スペースを薬局内
に設け、地元の米や野菜、特産物を販売することも考えている。

大戸坂上薬局
※3枚の画像は、同診療所HPから転載させて頂きました。
※次回、<地域を支える柱が火の車に> に続きます。

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東吾妻町のホームぺージを見ましたら、5月1日現在の人口が、前月4月1日比と共に
示されていました。
◆合計人口:14,360人(-47人) 世帯数:5,662世帯(-14世帯)
男性人口:6,983人(-24人)  女性:7,377人(-23人)

年度替わりということもあるでしょうか、1カ月での減少数、大きいですね。

この人口で、住民立の病院の経営がやっていけるか・・・。
個人病院がどのくらい町内にあるのでしょう。
町の電子版ガイドで調べてみました。

大戸町内医院

これ以外に、歯科医院が5軒ありました。
介護施設は、文中の診療所系施設の他に、特養1施設と1~2施設程度でしょうか。

町の人口で年齢別のデータがあれば、高齢化の状況、買い物難民化や医療・介護
行政の課題などが、はっきり読み取れるのでは、と思われます。

同町HPでは、「道の駅 あがつま峡」があり、NHKの大河ドラマ「真田丸」の舞台
の一つともなった地「岩櫃」、あづま温泉等を紹介し、観光事業にも力を入れている
様子が窺えます。

センセーショナルな話題を提供した『地方消滅』では、この東吾妻町の2040年の人
口推定が、8,594人、20~39歳の若年女性人口予測が、491人。
遡って、同データでは、2010年の同町の人口が15,622人でしたから、7年間に1262人
減少しました。
現状の高齢化比率が群馬県で、27%程度。2040年予測が36.6%。
やはり、若い世代の流出を食い止め、流入を促す有効な政策が打たれないと、あなが
ち大袈裟な推計ではないのかな、と考えさせられます。

地域包括ケアシステムが高齢者行政だけでなく、乳幼児や妊産婦、シングルマザーな
ど幅広く現役世代をもカバーする、医療・福祉・健康事業の基盤として拡充していく
発想と手法が必須。
果たしてそこまでの発想・構想があるか・・・。
心もとないのですが・・・。

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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』構成
はじめに
第1章 在宅医療の光と影
第2章 亡くなる場所が選べない
第3章 認知症と共に生きる
第4章 誰のための地域包括ケアなのか
第5章 資本に食われる医療
おわりに

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<杉山医師が考える在宅介護・医療家族の「七つの苦労」>
(1)介護の精神的、身体的負担

(2)知識不足からくる不安感
(3)周囲の理解不足からくる孤立感
(4)ふつうの生活が送れないストレス
(5)突然の病状変化に対して対応できるかという不安
(6)住宅の環境的な問題
(7)在宅医療、介護に伴う経済的不安

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【山岡淳一郎氏・プロフィール】
◆1959年愛媛県生まれ、ノンフィクション作家、東京富士大学客員教授
◆「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに近現代史、政治、医療、
建築など分野を越えて旺盛に執筆。時事番組の司会も務める。
◆著書:『原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜
インフラの呪縛: 公共事業はなぜ迷走するのか』『気骨: 経営者 土光敏夫の闘い

国民皆保険が危ない』『後藤新平 日本の羅針盤となった男
田中角栄の資源戦争』『医療のこと、もっと知ってほしい』他多数。


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足掛け2年にわたってシリーズ化し、昨年末に紹介を終えたのが
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著)


政府・厚労省の介護政策において置く<在宅介護主義>。
これに非常に疑問を持つ私です。

今回の書では、在宅医療も在宅介護と一体のものとして考えることを基本としており、それ
は当然のこと。
とすると、一層在宅での老後生活と看取りについての困難さが浮き彫りにされます。
そのためということでしょうか。
長生きしても報われない」という悲観的なタイトルが付いた本書。

が、「長生きすればみな報われるべきなのか?」、「報われるとはどういうことなのか?」。
このタイトルを目にしたとき、率直に第一に抱いたのが、この疑問でした。

お叱りを承知で、根源的なこの疑問を抱きつつ、加えて、先に述べた、在宅介護・医療に限
界とその政策への疑問をベースに、このシリーズを続けていきます。

「『在宅介護』から」シリーズ

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本書をシリーズ化する前に、昨年もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない
という書を紹介しつつ老後・介護・最期を考えるシリーズを投稿してきました。
その内容と、今回の『長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』のここまでの
展開の内容とニュアンスが類似しています。
新シリーズの方は、これから実際の医療・介護事例が具体的に数多く取り上げられるので、
実際には異質な書ですが。

『もう親を捨てるしかない』シリーズも並行して、見て頂ければと思います。

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