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在宅医療・在宅介護の根本的な問題を、クロ現+からも考える:『長生きしても報われない社会』から(10)

長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実
山岡淳一郎氏著・2016/9/10刊)を用い、
在宅介護と在宅医療について考えるシリーズです。

「第1章 在宅医療の光と影」
第1回:「看取り」でなく「あやめる」情動へ。在宅介護がもたらす社会病理?

第2回:愛情の在り方がもたらす在宅介護殺人事件
第3回:在宅介護政策が孕む介護苦殺人・心中事件リスク
第4回:「認知症の人と家族の会」をご存知ですか
第5回:厳しい在宅介護で魔が差すことがないように必要な「間(ま)」を
第6回:自治体、ケアマネジャー、NPO法人等、信頼できる相談先を!
第7回:川崎幸病院と杉山孝博医師の在宅医療への取り組み紹介
第8回:在宅での自己管理治療のパイオニア、川崎幸病院・杉山康博医師の足跡
第9回:事例から在宅医療・在宅介護の大変さをイメージしておく

今回は、その第10回です。

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 在宅での家族の苦労
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杉山医師は、在宅で家族が抱える「七つの苦労」を次のように説く。

(1)介護の精神的、身体的負担。これは薬の処方やショートステイに利用で軽くなる。
(2)知識不足からくる不安感。認知症にしても症状を知らなければ、一生懸命頑張ると
かえって苦労する。同じ悩みを持っている人との接触や、自ら知識を吸収することで先が
見えてくる。
(3)周囲の理解不足からくる孤立感。たとえば親戚から「介護の仕方が悪いんじゃない
の」と言われて落ち込んでしまう。医師や医療、介護の専門職が「ありがとう。助かって
います」と介護者を積極的に評価することで孤立感を和らげる。人と人とのつながりが在
宅医療の支えだ。
(4)ふつうの生活が送れないストレス。認知症の初期には人によって徘徊や妄想が激し
く、目が離せない。デイサービスやショートステイで介護者自身の時間をつくり、やりた
いことをしてストレスを発散させる。
(5)突然の病状変化に対して対応できるかという不安。診療所や訪問看護ステーション
などが連携して24時間対応の体制を築けば、不安は薄らぐ。結果的に介護者の緊急連絡
は減る。
(6)住宅の環境的な問題。家が狭く、音も近所に筒抜けでは在宅医療、介護は難しい。
(7)在宅医療、介護に伴う経済的不安。医療の枠を超えた制度的サポートも必要。

 杉山医師は「これらの苦しさの状況を整理して、どこにどんな援助をすればいいかが問
われます。在宅では医療が必要な時期もあるけど、大部分は介護の世界です。当然、優秀
なケアマネジャーが求められます」と語る。

3

 

※次回は、<一人暮らしでの在宅医療は可能か?> です。

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7つの苦労のうちの初めの、精神的不安と身体的不安とは、それぞれ別の不安としても
いいくらい、大変なことと思います。

ちょうど、昨日2月16日(木)NHKTV「クローズアップ現代+」で、在宅医療の問題を
取り上げていました。

亡くなった大橋巨泉氏が在宅医療を受けるべく、楽しみに自宅に戻ったところ、意に反
した在宅医のひと言で、気持ちと体調が一変。急激に衰えてしまい、ニュースで伝えられ
たように死に至った・・・。
ここから番組が始まった、非常にインパクトのある内容でした。

その詳しい内容は、こちらでほぼ確認することができます。
◆「家で最期を迎えたい ~広がる在宅医療の陰で~

インパクトはあったのですが、その内容や構成、ゲストのコメントには、いささか疑問を
感じながら視聴したというのが本当のところです。

「在宅医療でできない医療は基本的にはないんです。
 ただし、その状況、家族の介護と看護力等に応じて、やっぱり在宅医療の質は変わって
くると思います。その時の状況で、例えば病院がある場所、あるいはない場所、そして在
宅医の能力等によって違ってくるんでしょうね。」

こうゲストの医師は初めに言っています。
在宅医療でできない医療はない。そのあとの条件が付きますが、この言葉、あまりにも
軽い。できないことの方が実際には多いはずです。特に重篤な病状・症状の場合には。
本質的には、「すべてできる条件は、いくら金がかかってもよければ・・・」という
条件ならば可能、とすべきです。
でもそれならば、コスト抑制も一つの目的として在宅医療を推し進めようとする主旨
に反する矛盾が・・・。

よく在宅医療が成功している地域や病院の事例が、一つのモデルとして取り上げられま
す。しかしだからと言って、それと同レベルの在宅医療サービスを、どの地域でも、どの
病院でも提供できるか・・・。
それは、医療及び介護に従事する当事者からすれば、とても高いハードルがあるはず。
第三者が言うのは簡単ですが、だれもが、自分の生活を犠牲にして、そういった仕事に
従事・まい進できるはずはないと私は思います。
それができない地域や、やらない医師など専門職の人たちを果たして責めることができ
るのか・・・。

同医師は、「かかりつけ医」の役割・責任、重要性を主張していましたが、かかりつけ
医自体、いろいろいます。在宅医療では、狭い専門分野の医師ではなく、総合的に医療を
理解し、対応できる医師が必要。そうした医師が不足している、と言っています。
多くが開業医である「かかりつけ医」など、その最たるものものでしょう。

実際に、かかりつけ医は、何人いるでしょう?どの分野の医師でしょう。
通院・治療する分野が多数あれば、それだけの分野・人数のかかりつけ医を持つことに
なるのでしょうが、その中に24時間在宅医療の対応が可能な医師はいるか、いないか・・・。

実際には、健康で、通院する必要がない、すなわちかかりつけ医もいない方がいいので
す。

また、最近は「ホスピス」といって、例えば末期がん患者が自宅で最期を迎えることを
望み、そのために在宅医療で地域包括として支えるという事例も増えていると聞きます。
この場合は、医療と看護・介護の処方・方法が事前に決められ、家族とのコミュニケー
ションもしっかりなされているケースがほとんどで、これは終末期医療のモデルでしょう。

しかし、家で医療・看護・介護を受けたい、と望む方々の多くは、在宅医療・在宅介護
の大変さは、後回しです。まずは、自分。
今回の文中にある、家族が抱える「7つの苦労・不安」や、それをサポートする医療・
看護・介護スタッフの、24時間での対応や負担などは、表現は悪いですが、あまり意識し
ていないのではないでしょうか。

毎度私は申し上げているのですが、医療・看護・介護を受ける人の人権は声高に主張さ
れますが、それに関わる家族や種々のスタッフの人権も考慮すべきと考えます。

24時間対応可能で、医療・看護・介護のすべての分野で適切に対応できる医師・看護師
・介護士。連絡があったらすぐ駆け付けることができる・・・。

要求するのは簡単ですが、実際それができる方、実際対応しましょうという方がどれだ
け存在するか・・・。
そこまではできない、というスタッフを、だれが責めることができるでしょうか・・・。

そこまで踏み込んで発言するマスコミや当事者は、ほとんどいません。

当事者である家族の負担は、7つの苦労・重圧で言わずもがな・・・。

在宅医療・在宅介護。
基本的に私は反対する立場です。
関わるすべての人々の人権のためにも・・・。

医療・介護政策の根本的な見直し、制度と財政問題を含めた構造改革が必要と考えます。

 

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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』構成
はじめに
第1章 在宅医療の光と影
第2章 亡くなる場所が選べない
第3章 認知症と共に生きる
第4章 誰のための地域包括ケアなのか
第5章 資本に食われる医療
おわりに

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【山岡淳一郎氏・プロフィール】
◆1959年愛媛県生まれ、ノンフィクション作家、東京富士大学客員教授
◆「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに近現代史、政治、医療、
建築など分野を越えて旺盛に執筆。時事番組の司会も務める。
◆著書:『原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜
インフラの呪縛: 公共事業はなぜ迷走するのか』『気骨: 経営者 土光敏夫の闘い

国民皆保険が危ない』『後藤新平 日本の羅針盤となった男
田中角栄の資源戦争』『医療のこと、もっと知ってほしい』他多数。


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足掛け2年にわたってシリーズ化し、昨年末に紹介を終えたのが
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著)


政府・厚労省の介護政策において置く<在宅介護主義>。
これに非常に疑問を持つ私です。

今回の書では、在宅医療も在宅介護と一体のものとして考えることを基本としており、それ
は当然のこと。
とすると、一層在宅での老後生活と看取りについての困難さが浮き彫りにされます。
そのためということでしょうか。
長生きしても報われない」という悲観的なタイトルが付いた本書。

が、「長生きすればみな報われるべきなのか?」、「報われるとはどういうことなのか?」。
このタイトルを目にしたとき、率直に第一に抱いたのが、この疑問でした。

お叱りを承知で、根源的なこの疑問を抱きつつ、加えて、先に述べた、在宅介護・医療に限
界とその政策への疑問をベースに、このシリーズを続けていきます。

「『在宅介護』から」シリーズ

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本書をシリーズ化する前に、昨年もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない
という書を紹介しつつ老後・介護・最期を考えるシリーズを投稿してきました。
その内容と、今回の『長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』のここまでの
展開の内容とニュアンスが類似しています。
新シリーズの方は、これから実際の医療・介護事例が具体的に数多く取り上げられるので、
実際には異質な書ですが。

『もう親を捨てるしかない』シリーズも今月から再開し、第3章に入っていく予定です。
並行して、見て頂ければと思います。

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