多様化し選択肢が広がるお葬式とお墓:『もう親を捨てるしかない』から(28)

もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない
島田裕已氏著・2016/5/30刊)を紹介しながら考えるシリーズ。

「第3章 終活はなぜ無駄なのか」
第1回:長くなる高齢生活。悠然と、泰然と過ごすことができたら・・・
第2回:直葬・散骨コース、プリーズ?

今回は第3回(通算第28回)です。

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 第3章 終活はなぜ無駄なのか(3)
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墓のない家が38.4%もある

保険クリニック」という相談窓口が、2015年8月に500人(男女同数)を対象に実施した
ウェブ調査がある。
 それによると、「お墓は準備していますか」という質問に対して、先祖代々の墓があるが、
52.6%、生前に購入したが9.0%、購入予定が10.2%、購入しないが28.2%という回答が寄せ
られた。
 購入予定と購入しないを合わせると、38.4%が、今のところ墓がないということになる。
 では、購入しないと答えている人たちは、どうしようとしているんだろうか。直接、それに
あたる質問はないのだが、「どんなお墓、どんな埋葬方法が良いですか」という問いを見ると、
そこからある程度推測することができる。

墓アンケート1

※「保険クリニック」HPより

 500人のうち、霊園・共同墓地が216人、散骨が101人、近くのお寺(教会)の墓地が80人、
樹木葬が54人、タワー墓地・納骨堂が43人、その他が6人である。

このなかで、散骨と樹木葬を合わせると、155人にもなり、全体の31.0%にあたる。
 これは、購入しないの28.2%に近い。それからすると。墓を購入しないとしている人たちは、
散骨や樹木葬を念頭においているらしい。

 ただ、樹木葬については誤解が多い。正しくその意味を理解していない人が少なくないよう
に見受けられる。
 そもそも樹木葬は最近生まれた埋葬の仕方なのだが、それができるのは墓地として認可を受
けた霊園だけである。墓石を建てない代わりに樹木を植えるのが、樹木葬ということになる。
 ところが、樹木葬を希望する人たちの意識としては、墓に埋葬することとは区別されている。
 むしろ、散骨に近いものとして認識されている。
 樹木葬でも、墓地である以上、その墓を守ってくれる人間を必要とする。それに、購入した
後の管理料もそれなりにかかるわけだ。

 墓にかんして、「子どもには迷惑をかけたくない」と言うとき、もう一つ散骨という選択肢
が浮上してくる。アンケート調査で、500人のうち100人を超える人たちがそれを希望している
というのは注目される。それだけ散骨が普及し、一般化したということでもある。
 だが、散骨を希望する人たちの遺骨が実際に海や山に撒かれるかと言えば、必ずしもそうで
はない。

海1

 

 

※次回は、<親鸞同様、散骨の希望がかなわなかった俳優の三國連太郎氏> です。

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文中にあるアンケートでは、以下の質問と回答結果も掲載されていました。
参考までに転載します。

墓アンケート2

墓アンケート3

解説文で分かるように、毎年、同時期にお盆が近いことから関連したアンケートを行っている
ようです。
昨年2016年にも行われており、<終活>を質問項目に入れていました。
その内容は、別の機会に紹介します。

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葬儀・葬送の在り方の変化については、一昨年7月に、別のブログサイト<世代通信.net>の中で
日経記事から以下紹介しています。
お盆を迎えるこの機に、お墓や葬送を考える:納骨堂・樹木葬など、形式と意識の変化 (2015/7/16)
また、そのブログの文中で書いていますが
老い方上手』(2014/12/19刊)の「第5章 自分らしい葬送を選ぶ」を紹介し
た以下のブログが同サイト内にあります。
同書はお薦め本です。
ブログの方も、一度チェックして頂ければと思います。

第1回: 変わる家族と葬送(1)核家族化の後
第2回: 変わる家族と葬送(2)跡継ぎを必要としないお墓と自分らしさ
第3回: 変わる家族と葬送(3)自由なデザインで自分らしいお墓
第4回: 変わる家族と葬送(4)手元供養が人気
第5回: 自然葬志向の「散骨」の法律事情
第6回: 自然志向葬送の根拠・方法と自然を守る使命
第7回: 樹木葬・桜葬、桜葬墓地とは
第8回: エンディングサポートについて
第9回: 墓友、そして死後のしかけについて

凛

いずれにしても、葬式・お墓に対する意識が変化するとともに、その方法も多様化し、選択肢が
広がっているわけです。

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【「『もう親を捨てるしかない』から」ブログ一覧】

「はじめに」
第1回:介護殺人?利根川心中事件が話題にならなかった背景を読む
「第1章 孝行な子こそ親を殺す」
第2回:家族による介護殺人事件への関心が薄れていく
第3回:減る殺人事件、増える介護殺人・心中事件、家族・親族間殺人事件
第4回:在宅介護推進政策は、介護殺人助長政策?
第5回:実刑判決も執行猶予判決も抑止力にはならない家族介護殺人・心中事件
第6回:先に人生を終える高齢者世代の介護と終え方の責任
第7回:介護生活未経験の方に知って頂きたいその状況
第8回:自宅療養・在宅介護は多くの人の希望か?財政面からの政策の持つ狙いと矛盾
第9回:在宅介護主義と地域包括ケアシステムに潜む疑問・課題
第10回:「親捨て」と「(成人した)子捨て」の相互関係
第11回:子との同居で親子共倒れになるなら、子を寄せ付けない「子捨て」を

「第2章 日本人は長生きし過ぎる」
第12回:今一度、認知症徘徊事故訴訟 最高裁判決から考える
第13回:ポケGO!ではない、認知症GO!は仮想現実? 
第14回:2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳
第15回:望まれた不老長寿と健康・老いの変質
第16回:「長生きはめでたいことなのか」という問い
第17回:「尊厳死の宣言書」リビング・ウィル(Living Will)をご存知ですか
第18回:超高齢化の象徴でもあるリハビリ入院における一つの高齢化社会にて
第19回:みな歳を取り、世代を繋ぎ、別れを告げて、逝くのですが・・・
第20回:逆縁を知らぬまま生きる超高齢者もいる時代の無情
第21回:無縁にも、孤独にも多様性がある。そういう無縁死・孤独死なら・・・
第22回:独居、孤独死、認知症徘徊者等総合的な高齢者見守りシステムが必要な社会
第23回:止まらない全年代単身者世帯と老人単身者世帯の増加
第24回:最後には単身者世帯になる老後核家族
第25回:介護殺人や心中があっても不思議ではない超長寿社会

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【『もう親を捨てるしかない 』構成】

はじめに
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
おわりに

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【島田裕已氏プロフィール】
1953年生。宗教学者、文筆家
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、
東京大学先端科学技術センター特任研究員を歴任。
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(主な著作)
『日本の10大新宗教』『葬式は、要らない
『戒名は自分で決める』『八紘一宇』
0葬 ――あっさり死ぬ』『死に方の思想』

 

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