在宅での自己管理治療のパイオニア、川崎幸病院・杉山康博医師の足跡:『長生きしても報われない社会』から(8)

長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実
山岡淳一郎氏著・2016/9/10刊)を用い、
在宅介護と在宅医療について考えるシリーズです。

「第1章 在宅医療の光と影」
第1回:「看取り」でなく「あやめる」情動へ。在宅介護がもたらす社会病理?

第2回:愛情の在り方がもたらす在宅介護殺人事件
第3回:在宅介護政策が孕む介護苦殺人・心中事件リスク
第4回:「認知症の人と家族の会」をご存知ですか
第5回:厳しい在宅介護で魔が差すことがないように必要な「間(ま)」を
第6回:自治体、ケアマネジャー、NPO法人等、信頼できる相談先を!
第7回:川崎幸病院と杉山孝博医師の在宅医療への取り組み紹介

今回は、その第8回です。

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 家にいながら治療を受けるために(2)
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 杉山医師たちは患者への指導、管理を徹底して環境を整え、病院治療の範囲内で
これを実践し、患者に重い自己負担を求めなかった。その結果、川崎幸病院が先行
した自己管理治療は以後、以下が次々と保険適用された。

糖尿病のインスリン注射は1973年の開業時から採用し、81年に診療報酬認定
◆血友病の凝固因子静脈自己注射は77年から始め、83年に診療報酬認定。

慢性腎不全の在宅血液透析は78年に開始し、98年認定。
◆慢性呼吸不全、慢性心不全の在宅
酸素療法は79年開始で86年認定。
◆慢性腎不全のCAPD(持続携行式腹膜透析)は81年から始
めて86年認定。
◆ALS(筋萎縮性側索硬化症)など神経筋疾患の在宅人口呼吸は86年に採り入
れ、
98年に認定

 (中略)

 杉山医師は在宅医療には次の3つのタイプがある、と指摘する。
◆「長期療養型」- 脳血管障害、骨折・変形性脊椎症・変形性膝関節症・慢性関節リウマチ
など運動系障害、神経・筋疾患、慢性呼吸不全、老衰などさまざまな慢性疾患で通院が困難
になり、在宅医療が必要とされる場合。
◆「高度医療型(自己管理治療型)」- かつて病院、あるいは医療スタッフでなければで
きないとされていた治療法が在宅で可能となり、実現した医療タイプ。
在宅酸素治療
や自己注射、自己導尿、中心静脈栄養、CAPDなど。
◆「末期医療型」- 在宅での終末期の医療および看護(ターミナルケア)。高度在宅医療
で支えられながらのターミナルケアが増えている。

 杉山医師は、1979年にケースワーカー2名とともに「地域保健部」を川崎幸病院に設けて
本格的に在宅医療に分け入った。
 「患者・家族や地域住民のニーズに応える医療」を掲げ、在宅医療のネットワークを築い
た。現在も川崎幸クリニックの院長業務と並行して「地域医療部」の看護師とともに週4日、
アシスト付き自転車に乗って「台風の日も、大雪の日も」訪問医療に走り回っている。

<参考>:院長ご挨拶」(http://saiwaicl.jp/outline/message.php

※次回、<在宅医療を決断する瞬間> に続きます。

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まさに在宅医療の先駆者、ですね。
日本の在宅医療を変えたのではなく、創り上げた!わけです。

同「院長ご挨拶」ページから、杉山医師(今年で70歳です)の在宅医療の歩みに
ついて一部を転載させて頂きました。

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<杉山孝博Dr.の在宅医療:これまでの取り組みなど>

  1. 1977年(昭和52年)以来、川崎幸病院、川崎幸クリニックにて、内科診療と
    地域医療に取り組む。
    自己注射、在宅酸素療法、家庭透析、在宅人工呼吸療法など高度な在宅医療に
    は、患者・家族と一緒になって、制度として認められる前から取り組み。

    寝たきり、難病、癌末期などの訪問診療は現在も続けており、毎年60名前後
    の在宅看取りを支えてきた。
  2. 1981年から「公共社団法人認知症の人と家族の会」にかかわりをもち、認知
    症の地域ケア、診断・治療、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」
    などの考案、国・地方自治体などの施策への関与など、認知症問題に対して、
    様々な形で活動。
  3. 1994年から認知症グループホームに関心をもち、公益社団法人認知症グループ
    ホーム協会理事、あるいは顧問として、また、グループホームの運営に関する
    調査研究委員会委員、質の向上・評価に関する調査研究委員会委員長として、
    グループホームの育成、質の向上などに関わる。
  4. 1992年から重度心身障害者通所(川崎市幸区)施設嘱託医、精神障害者グルー
    プホーム(横浜市港南区)運営委員長、グループリビング宮内(川崎市中原区)
    の顧問医、公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員などとして、
    障害・疾病を持っても住み続けられるための活動を関係者とともに取り組み。
  5. 聖マリアンナ大学医学部非常勤講師(地域医療)、神奈川県看護専門学校非常
    勤講師、多数のホームヘルパー養成講座の講師として、年間100回を越す講演
    会講師として、在宅医療や地域ケアの知識の普及に尽力。
  6. 社会医療法人財団石心会理事、川崎幸クリニック院長として、地域医療を実践・
    展開。

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今年70歳の杉山院長。
今も日々在宅医療で、患者さんの自宅を訪問していらっしゃる・・・。
このシリーズの初めに出てきた「認知症の人と家族の会」の設立と活動にも関わっていらっしゃいます。

その活動が広がり、今日の在宅医療、関連しての在宅介護につながっている。
頭が下がります。

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長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』構成
はじめに
第1章 在宅医療の光と影
第2章 亡くなる場所が選べない
第3章 認知症と共に生きる
第4章 誰のための地域包括ケアなのか
第5章 資本に食われる医療
おわりに

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【山岡淳一郎氏・プロフィール】
◆1959年愛媛県生まれ、ノンフィクション作家、東京富士大学客員教授
◆「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマに近現代史、政治、医療、
建築など分野を越えて旺盛に執筆。時事番組の司会も務める。
◆著書:『原発と権力: 戦後から辿る支配者の系譜
インフラの呪縛: 公共事業はなぜ迷走するのか』『気骨: 経営者 土光敏夫の闘い

国民皆保険が危ない』『後藤新平 日本の羅針盤となった男
田中角栄の資源戦争』『医療のこと、もっと知ってほしい』他多数。


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足掛け2年にわたってシリーズ化し、昨年末に紹介を終えたのが
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著)


政府・厚労省の介護政策において置く<在宅介護主義>。
これに非常に疑問を持つ私です。

今回の書では、在宅医療も在宅介護と一体のものとして考えることを基本としており、それ
は当然のこと。
とすると、一層在宅での老後生活と看取りについての困難さが浮き彫りにされます。
そのためということでしょうか。
長生きしても報われない」という悲観的なタイトルが付いた本書。

が、「長生きすればみな報われるべきなのか?」、「報われるとはどういうことなのか?」。
このタイトルを目にしたとき、率直に第一に抱いたのが、この疑問でした。

お叱りを承知で、根源的なこの疑問を抱きつつ、加えて、先に述べた、在宅介護・医療に限
界とその政策への疑問をベースに、このシリーズを続けていきます。

「『在宅介護』から」シリーズ

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本書をシリーズ化する前に、昨年もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない
という書を紹介しつつ老後・介護・最期を考えるシリーズを投稿してきました。
その内容と、今回の『長生きしても報われない社会 ──在宅医療・介護の真実』のここまでの
展開の内容とニュアンスが類似しています。
新シリーズの方は、これから実際の医療・介護事例が具体的に数多く取り上げられるので、
実際には異質な書ですが。

『もう親を捨てるしかない』シリーズも今月から再開し、第3章に入っていく予定です。
並行して、見て頂ければと思います。


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