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独居・夫婦のみ世帯。高齢者世帯の増加が招く生活不安:『在宅介護』<認知症高齢者の急増>から(6)

良書 『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から
結城康博氏著・2015/8/20刊)
を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。

残していた「第3章 認知症高齢者の急増」に入っています。
第1回:考え得る認知症徘徊高齢者対策、すべてを進めるべき社会
第2回:見通せない、認知症高齢者徘徊事故発生と賠償責任リスク
第3回:日常生活自立度Ⅱ以上の認知症高齢者400万人時代へ
第4回:特殊詐欺被害者、運転事故加害者。認知症高齢者の日常生活リスク
第5回:ご存知ですか、認知症行動障害尺度における質問項目

今回は、第6回(通算83回)です。

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 3.家族形態と地域組織の変容

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<独居高齢者と老夫婦世帯>

 独居高齢者および老夫婦世帯が吸蔵している。
 65歳以上の独居高齢者は、1980年には高齢者人口に占める割合は、男性は4.3%、女性11.2
%であったものの、2010年には、男性11.1%、女性20.3%と増え続けている。
 内閣府の『平成27年版高齢社会白書(全体版)』によれば、65歳以上の高齢者と子どもとの
同居率は1980年には約7割であったのに対し、2013年には40.0%と低下しており、夫婦のみ
世帯がもっとも多く約3割を占めている。
65歳以上における配偶者関係では、2010年の有配偶率は男性80.6%に対し、女性は48.4%
となっており、女性高齢者の約2人に1人が配偶者なしとなっている。

なお未婚率は男性3.6%、女性3.9%、離婚率が男性3.6%、女性4.6%となっており、高齢者
自身及び夫婦間における家族機能の減退も見られる。
 未だ「在宅介護」は、一部を除いて家族の介護力に依存している実態は否めないものの、
家族機能に格差が見られることから、「在宅介護」の普遍化には大きな課題が残る。

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<消費者被害の視点から>

認知症が社会問題化する背景としては、家族形態の変容が大きく関連している。
 特に、「オレオレ詐欺」「消費者被害」など、高齢者をターゲットにした悪質業者や犯罪
者が増えていることは深刻だ。ただ、消費者相談は氷山の一角であり、認知症高齢者が被害
に遭っても、そのことにすら気づかず相談経路にのらず被害が潜在化していると考えられる。

 たとえば、筆者がケアマネジャーであったときに出会った、訪問販売で20万円程度の商品
を購入した、「モノ忘れ」が目立っていた高齢者を思い出す。どうみてもホームセンターで
購入すれば1万円前後の商品を20万円で買ったという。購入相手は時々訪ねてくるセールス
マンで、自分の健康状態や介護問題など世間話をする関係となり信頼している販売員だった
というのだ。83歳の独居高齢者で、人間関係も希薄であった。

騙されているのでは、と問いかけても、自分が欲しいので購入した。そのセールスマンも
ノルマがあり苦労している。どうしても被害者でないと言うのである。このケースでは軽い
認知症が疑われたが、明確に自分が承諾して購入し被害届も出さないため、事件にはいたら
なかった。このケースで言えることは、独居高齢者の寂しさ、認知症による判断能力の鈍さ
を巧みに認識して、セールス業を営んでいる業者がいることであった。

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次回に続きます。
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(参考)
【認知症行動障害尺度における質問項目】
1  同じことを何度も何度も聞く
2  よく物をなくしたり、置場所を間違えたり、隠したりしている
3  日常的な物事に関心を示さない
4  特別な理由がないのに夜中起き出す
5  特別な根拠もないのに人に言いがかりをつける
6  昼間、寝てばかりいる
7  やたら歩き回る
8  同じ動作をいつまでも繰り返す
9  口汚くののしる
10 場違いあるいは季節に合わない不適切な服装をする
11 世話をされるのを拒否する
12 明らかな理由なしに物を貯め込む
13 引き出しやタンスの中身を全部だしてしまう

5

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単身者であれ、夫婦であれ、高齢者世帯の在宅介護には、問題が多いことは明らかです。
分かりきっているのに、在宅介護主義を押し通そうとする政策は、単純に介護給付が増加し、
介護保険財政が、医療保険財政と並んで、維持することが困難であることも分かっているため。

居室・入居型介護の在り方を改善することで、どこまで給付状況を改善できるか、抜本的な
検討がどの程度なされたのか、詳しい情報が提示されたことはないと思うのですが・・・。

独居や老夫婦世帯の認知症生活リスクは、恐らくなくならないでしょうし、認知症高齢者の
増加に比例して、被害も増加するに違いありません。

介護サービスの範囲には入らない生活行為や、社会との関係、外部の人との関係におけるリ
スク。
家族形態の現状とこれからを考えるとき、介護保険制度以外において、高齢社会が抱えるリ
スクが、どうも今後より多様化していくのでは、と思えてなりません。

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※次回は、<成年後見制度>、<市民後見人> です。

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在宅介護――「自分で選ぶ」視点からブログリスト>>

「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して

「第1章 在宅介護の実態」
第24回介護離職の根本原因としての在宅介護
第25回:親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第26回:在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担
第27回:実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的
第28回:在宅介護が困難な場合の介護サービス付き高齢者住宅、サ高住
第29回厚生年金でほぼ賄える「サ高住」が理想
第30回:「小規模多機能型居宅介護」という名称自体、分かりにくい
第31回:(看護)小規模多機能型居宅介護事業は、小規模では成り立たない
第32回だれでも、どこでも、いつでもできる介護サービス事業か?

「第2章 家族介護の限界」
第33回:企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第34回:介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾
第35回:企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度
第36回:パラサイトシングル介護者を生み出す親子関係の根深さ
第37回:介護虐待で考える、介護者・要介護者の人権
第38回:特養入所条件要介護度3以上で、待機高齢者はどうなった?
第39回:お泊り付デイサービスがグレー化するリスク
第40回:劣悪化する介護事業の原因の一端は、低所得高齢者政策の欠如に
第41回:住宅型有料老人ホーム事業がグレーからブラック化する前に
第42回:独居高齢者・高齢者夫婦世帯の増加で困難になる在宅介護・家族介護
第43回:国・自治体の介護行政無策のしわ寄せが介護事故・事件を招く

「第4章 在宅介護サービスの使い方」
第44回上がり続ける介護保険料。介護保険制度の基本を知る①
第45回:介護報酬・介護保険サービス料の基礎知識。介護保険制度の基本を知る②
第46回:要介護認定の仕組み・手続きと認定調査
第47回:要介護認定システムの客観性・信憑性問題による認定率格差と介護給付格差
第48回:要介護度レベルと認定方法の簡素化の余地がある介護保険法
第49回:ケアマネジャーが介護生活の質を左右する
第50回:生活援助サービスの短縮化・低下は已むを得ないか?
第51回:デイサービス、デイケア、ショートステイの利用法
第52回:介護サービスを受けるために欠かせない「地域包括支援センター」の役割
第53回:介護保険サービスの適用範囲、基準の難しさ
第54回:自費負担の介護保険外サービスが増えるのは、やむを得ない?
第55回:トラブルを避けるための介護サービスに関する「苦情」相談とコミュニケーション

「第5章 施設と在宅介護」
第56回:地域包括ケアシステムの基本にある仕事以外の要素
第57回:責任回避の自助・互助介護政策化。公的サービス責任が先
第58回:施設介護と在宅介護の関係を考えてみる(1)
第59回:施設介護と在宅介護の関係を考えてみる(2)
第60回:養護老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)の再編成を!

第61回
入居介護施設の選び方

「第6章 医療と介護は表裏一体」
第61回:ある日突然のケガ・病気からの介護が・・・
第62回:地域包括ケアを知っておきましょう
第63回:医療療養型、介護療養型、回復期リハビリ、地域包括ケア病棟etc.
第64回:同じ医療行為でも、看護師と介護士で料金が違うことの疑問
第65回:服薬管理、口腔ケアは、看護師・介護士の高齢者ケアの基本
第66回:回復期病棟から戻って考える施設介護と在宅介護
第67回:リハビリ実体験で思う在宅介護高齢者の自宅リハビリの必要性
第68回:福祉用具・介護ベッドの介護保険適用レンタルサービスは守るべき!
第69回:介護報酬のジレンマ、予防介護で高齢者超長寿命化のジレンマ?
第70回:介護予防で健康寿命が延びると介護給付を抑制できるか?
第72回:在宅介護政策へ誘導するための「介護と最期は自宅で」高齢者意識調査
第73回:介護施設での看取りが年々増加
第74回:在宅系看護師不足が示す、在宅介護の困難さと同様の在宅医療
第75回:自宅で看取りは果たして理想か?在宅医療・在宅介護への疑問
第76回:独居高齢者・高齢夫婦世帯のための包括的生活支援契約事業
第77回:高齢者医療・介護は、最期のあり方を問うこと

「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人

「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題

第7回これからの混合介護のあり方を考える
第8回介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?

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