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考え得る認知症徘徊高齢者対策、すべてを進めるべき社会:『在宅介護』<認知症高齢者の急増>から(1)

良書 『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から
結城康博氏著・2015/8/20刊)
を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。

今回から残っている最後の章「第3章 認知症高齢者の急増」に入ります。
その第1回(通算78回)です。

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 1.認知症高齢者の徘徊(1)

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<徘徊が社会問題に>

 在宅介護における認知症介護の実態は家族の負担はもとより、独居高齢者においても問題が
深刻化している。特に、在宅で暮らす認知症高齢者は、初期の段階では自分から受信すること
は少なく、徘徊や問題行動が生じてから周りが気づいて対応することになるため、認知症高齢
者を社会全体が早期に把握できていない。

 その典型として、認知症やその疑いのある行方不明者が全国で1万人を超えていることがある。
 警察庁や厚労省の資料によれば、これらの行方不明者は、2012年9607人、2013年1万322人
にのぼっている。ただし、これらの98%は1週間以内に身元がわかり自宅に帰宅している。

 全行方不明者の内1割以上が認知症高齢者に拠る徘徊が原因となっており、認知症等による
行方不明者のうち2012年359人、2013年388人の死亡が確認されている。

 なお、これら認知症による行方不明者問題がクローズアップされたのは、2014年4月からNHK
が認知症に関する特集を定期的に放映していることが大きいと考えられる。
 インターネットサイトでも「認知症行方不明1万人」とのページが設けられ、過去放映され
た番組をダイジェスト版で閲覧できる。
 たとえば、2014年4月18日「おはよう日本」で放映された「なぜ?身近な場所で多発する行
方不明死」では、アルツハイマー型認知症の高齢者が徘徊して見つからず、7日後に遺体とな
って発見されたというニュースが報道された。テレビ映像は認知症行方不明者の惨事を、社会
に大きく訴えかけるものとなった。

<数年ぶりの再会>

 同年5月11日放送のNHKスペシャル「行方不明者1万人 - 知られざる徘徊の実態」の中
では、身元のわからない行方不明の女性高齢者が介護施設で保護され暮らしているシーンが
放映された。そして、その番組を偶然見ていた夫が、その女性が自分の妻だと気づき7年ぶり
の再会を遂げたというニュースが日本全国で話題となった。

 新聞記事によれば、都内で2007年10月29日に行方不明となり、2日後、夫は警察署に捜索
願を届け出たが見つからなかった。結果的には60キロあまり離れた群馬県館林市で保護された。
 行方がわからなくなって数時間後の同月30日午前0時半ごろであったという。

 しかし、保護した警察署員は、捜索データシステムに衣類に書いてあった名前を間違って
登録してしまい、顔写真が掲載されていないためパソコンによるデータシステムでは捜索側
が発見できない状況になってしまった。後に警察側が親族に謝罪している。
 この事件から、徘徊といえば自宅近くと想定されやすいが、徘徊する認知症高齢者は住ん
でいる近隣から離れ、電車などを利用して遠方に行ってしまう危険性が浮き彫りとなった。

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次回に続きます。

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直近の2015年の認知症による行方不明者数に関するデータは、前回の
探偵事務所が高齢者見守りサービス。行動調査や徘徊捜索。調査員全員「認知症サ ポーター養成講座」を修了
でも紹介しました。
2016/6/16 日経夕刊掲載記事の転載でしたが、今回も再掲します。

 認知症で行方不明 最多
 昨年13%増え1万2000人超 150人は見つからず 警察庁まとめ
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 2015年に認知症が原因で行方が分からなくなり、全国の警察に行方不明届が出された人が
1万2208人に上ることが6月16日、警察庁のまとめで分かった。

 前年より1425人(13.2%)増加。2012年の統計開始以来、3年連続で最多を更新した。


※記事中の資料を転載させて頂きました。

 警察庁によると、不明者のうち、98.8%にあたる1万2058人の所在は15年中に確認された。

 同年以前に届け出があった人を含めて、警察に発見されたのは7231人、家族などによる保護、
発見が4107人。479人は死亡していた。150人は同年末時点で行方不明のままだった。

 届け出から発見までの期間は「受理当日」が8310人で最も多く、「2日~7日」が3562人で、
発見まで2年以上かかっていた人も27人いた。
 都道府県別の届け出は大阪が1791人で最多。兵庫が1309人、愛知が1150人.東京は325人。

 警察庁は14年、全国の警察署などで、保護した身元不明者の顔写真や特徴などの情報を閲覧で
きる制度を導入したが、今年5月時点で閲覧用台帳で公開されているのは72人にとどまる。
 掲載の判断を委ねられる自治体が個人情報保護などを理由に公開をためらうケースが多いとみ
られる。

 厚生労働省によると、認知症の高齢者は12年に約460万人。
 25年には5割増の約700万人に達する見通しで、65歳以上の約5人に1人になると推計される。

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2014年頃から、介護にまつわる事件・事故が、大々的に取り上げられるようになり、急増する高齢者、特に、全団塊世代が75歳以上になる 2025年以降の状況を映し出して、警鐘を鳴らす
ようになっています。

しかし、その警鐘を単なる不安と一蹴する対策は期待できず、むしろ、そうした問題が拡大する
リスクが高いことが介護制度の改定の議論やその方向性から感じられるのです。

介護給付の増大、現役世代の介護保険料の負担増、財政赤字を増やすリスクのある財政負担増。
それらの抑制を基本とした制度改定では、在宅介護、施設介護、どちらにも介護リスク、生活
リスクが高まることが明らかなのです。

そのリスクが高じた時の象徴的な問題が、認知症高齢者の増加とそれに伴う徘徊高齢者の増加。
街を行き交うとき、すれ違う高齢者の多くが、認知症を抱えて歩いている・・・。
認知症を自覚し不安を抱えて外出している人、自覚できず彷徨っている人、彷徨ううち戻る場所
を喪失してしまう人・・・。

想定すべき社会だが、どう対応すべきかの解を見出せないまま時間が過ぎていく社会。
予防介護、コグニサイズ、進行を抑制する新薬の開発、見守りシステム・・・。
アプローチ方法は、多岐に亘って検討・研究されていますが、どれだけ効果があるか、現状は、
実数で示すことができないものばかり・・・。

しかし、考え得る対策・手立ては打ち続けるべき。
その認識は、共有できていることに、光明を見ることはできる、見るべきと思うのです・・・。

老人重ね手

※次回は、<認知症の鉄道死裁判>、<戸惑う家族と現場> です。

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在宅介護――「自分で選ぶ」視点からブログリスト>>

「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して

「第1章 在宅介護の実態」
第24回介護離職の根本原因としての在宅介護
第25回:親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第26回:在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担
第27回:実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的
第28回:在宅介護が困難な場合の介護サービス付き高齢者住宅、サ高住
第29回厚生年金でほぼ賄える「サ高住」が理想
第30回:「小規模多機能型居宅介護」という名称自体、分かりにくい
第31回:(看護)小規模多機能型居宅介護事業は、小規模では成り立たない
第32回だれでも、どこでも、いつでもできる介護サービス事業か?

「第2章 家族介護の限界」
第33回:企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第34回:介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾
第35回:企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度
第36回:パラサイトシングル介護者を生み出す親子関係の根深さ
第37回:介護虐待で考える、介護者・要介護者の人権
第38回:特養入所条件要介護度3以上で、待機高齢者はどうなった?
第39回:お泊り付デイサービスがグレー化するリスク
第40回:劣悪化する介護事業の原因の一端は、低所得高齢者政策の欠如に
第41回:住宅型有料老人ホーム事業がグレーからブラック化する前に
第42回:独居高齢者・高齢者夫婦世帯の増加で困難になる在宅介護・家族介護
第43回:国・自治体の介護行政無策のしわ寄せが介護事故・事件を招く

「第4章 在宅介護サービスの使い方」
第44回上がり続ける介護保険料。介護保険制度の基本を知る①
第45回:介護報酬・介護保険サービス料の基礎知識。介護保険制度の基本を知る②
第46回:要介護認定の仕組み・手続きと認定調査
第47回:要介護認定システムの客観性・信憑性問題による認定率格差と介護給付格差
第48回:要介護度レベルと認定方法の簡素化の余地がある介護保険法
第49回:ケアマネジャーが介護生活の質を左右する
第50回:生活援助サービスの短縮化・低下は已むを得ないか?
第51回:デイサービス、デイケア、ショートステイの利用法
第52回:介護サービスを受けるために欠かせない「地域包括支援センター」の役割
第53回:介護保険サービスの適用範囲、基準の難しさ
第54回:自費負担の介護保険外サービスが増えるのは、やむを得ない?
第55回:トラブルを避けるための介護サービスに関する「苦情」相談とコミュニケーション

「第5章 施設と在宅介護」
第56回:地域包括ケアシステムの基本にある仕事以外の要素
第57回:責任回避の自助・互助介護政策化。公的サービス責任が先
第58回:施設介護と在宅介護の関係を考えてみる(1)
第59回:施設介護と在宅介護の関係を考えてみる(2)
第60回:養護老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)の再編成を!

第61回
入居介護施設の選び方

「第6章 医療と介護は表裏一体」
第61回:ある日突然のケガ・病気からの介護が・・・
第62回:地域包括ケアを知っておきましょう
第63回:医療療養型、介護療養型、回復期リハビリ、地域包括ケア病棟etc.
第64回:同じ医療行為でも、看護師と介護士で料金が違うことの疑問
第65回:服薬管理、口腔ケアは、看護師・介護士の高齢者ケアの基本
第66回:回復期病棟から戻って考える施設介護と在宅介護
第67回:リハビリ実体験で思う在宅介護高齢者の自宅リハビリの必要性
第68回:福祉用具・介護ベッドの介護保険適用レンタルサービスは守るべき!
第69回:介護報酬のジレンマ、予防介護で高齢者超長寿命化のジレンマ?
第70回:介護予防で健康寿命が延びると介護給付を抑制できるか?
第72回:在宅介護政策へ誘導するための「介護と最期は自宅で」高齢者意識調査
第73回:介護施設での看取りが年々増加
第74回:在宅系看護師不足が示す、在宅介護の困難さと同様の在宅医療
第75回:自宅で看取りは果たして理想か?在宅医療・在宅介護への疑問
第76回:独居高齢者・高齢夫婦世帯のための包括的生活支援契約事業
第77回:高齢者医療・介護は、最期のあり方を問うこと

「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人

「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題

第7回これからの混合介護のあり方を考える
第8回介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?

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