独居、孤独死、認知症徘徊者等総合的な高齢者見守りシステムが必要な社会:『もう親を捨てるしかない』(22)
『もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない 』
(島田裕已氏著・2016/5/30刊)を紹介しながら考えるシリーズ。
現在第2章に入っています。
「第2章 日本人は長生きし過ぎる」
第12回:今一度、認知症徘徊事故訴訟 最高裁判決から考える
第13回:ポケGO!ではない、認知症GO!は仮想現実?
第14回:2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳
第15回:望まれた不老長寿と健康・老いの変質
第16回:「長生きはめでたいことなのか」という問い
第17回:「尊厳死の宣言書」リビング・ウィル(Living Will)をご存知ですか
第18回:超高齢化の象徴でもあるリハビリ入院における一つの高齢化社会にて
第19回:みな歳を取り、世代を繋ぎ、別れを告げて、逝くのですが・・・
第20回:逆縁を知らぬまま生きる超高齢者もいる時代の無情
第21回:無縁にも、孤独にも多様性がある。そういう無縁死・孤独死なら・・・
今回は第22回です。
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第2章 日本人は長生きし過ぎる(11)
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たしかに、無縁死がこうした過程をたどるものであるなら、随分と寂しいと感
じられる。
<孤独死は増える一方だが、社会は是が非でもこれを防ごうとはしていない>②
実際、この番組が放送される前には、有名なタレントの飯島愛が、親戚の女性
によって死んでいるのが発見された。死後1週間が経過していた。彼女は芸能界
を引退しており、その後は芸人との付き合いもなかった。まだ36歳だった。
2009年8月には、女優の大原麗子が、やはり死後3日たって発見された。彼女の
場合には、前年に、かつて発症した「ギランバレー症候群」が再発し、亡くなる
ときにはからだの自由を奪われていた。62歳での死だった。
タレントや女優の場合には、華々しい時代を経てきているわけで、一般の人た
ちにはその時代の印象が強い。その分、孤独死したという事実は、本人にはまっ
たく関係のない人間にさえ哀れみをもようさせる。
しかし、孤独死した人間は何日も苦しんだわけでなく、心臓発作などを起こし
て即死だったかもしれない。そうなると、自分がひとりで死んでいくことに対し
て寂しいと感じる余裕もなかったはずである。
死んだ後のことは、すでに意識はなくなっているので、寂しいと感じることも
ない。寂しいと思うのは、もし自分がそうなったらと、将来における自分の姿を
そこに重ねて想像してみる他人の方である。
そもそも、人はほとんどの場合、ひとりで死ぬことになる。事故死や心中でも
しない限り、一緒に死んでくれる人間はいない。
たとえ病院に入院しいたとしても、夜中に急に容態が悪化したというのであれ
ば、看護師にも気づかれずに亡くなってしまう。その死が発見されるのは翌朝の
ことだ。これと自宅での孤独死とでは、死ぬ場所が違うというだけである。
その後も、孤独死する人は跡を絶たない。その分、孤独死を防ぐ対策が必要だ
という声は上がっており、政府や地方自治体も対策を立ち上げたりしている。
しかし、介護殺人の場合もそうだが、是が非でも孤独死を防がなければならな
いという状況にはなっていない。真剣に孤独死の一掃を訴え、その方向で熱心に
活動しているのは宗教団体の創価学会くらいではないだろうか。地域にネットワ
ークを張っている創価学会に入会すれば、たしかに仲間の会員が頻繁にまわって
くるので、孤独死という事態は避けられるであろう。
※次項に続きます。
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いわゆる「見守り」の社会的ネットワーク化が、簡便なICTシステムの導入や、
コンビニ、生協等と自治体などとの提携・連携で広がりつつあります。
(参考:「見守り」関連ブログ)
しかし、それでカバーできるのは、まだ一部ですし、介護や独居生活の状況な
どを一人一人把握していくことも大変です。
何度も掲載していますが、65歳以上の高齢者がいる世帯数、夫婦世帯数が以下
の表で示されています。
前者が、約595万世帯ということは595万人いるということ。
後者も、次第に独居化していくでしょうから、早晩1千万人レベルに近づいてい
きます。この数の孤独死を社会として防ぐというのは、なかなか大変なことです。
前期高齢者の私としても、そちらに社会的コストを掛けるよりも、少子化対策
の方にかけて欲しい、掛けるべき、と思います。
けっして双方が競合関係にあるわけではないのですが・・・。
でも、やはり徘徊事故はなんとか防ぎたい・・・。
独居世帯の要介護者および認知症徘徊者の把握は、社会的インフラとして整備
・拡充していくべきですね。
とすると、後期高齢者の健康状況など個人情報システムを総合的に整備し運用
するインフラがやはりあった方がよい、となりますか・・・。
孤独死対策というよりも、総合的な事故対策システムという目的での取り組み
ですね。事故発生で必要となるコストを、未然に防ぐことで削減が可能になるわ
けです。
次回は、<単身者がもっとも多いのは80~84歳の女性> です。
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【『もう親を捨てるしかない』から、ブログ一覧】
「はじめに」
第1回:介護殺人?利根川心中事件が話題にならなかった背景を読む
「第1章 孝行な子こそ親を殺す」
第2回:家族による介護殺人事件への関心が薄れていく
第3回:減る殺人事件、増える介護殺人・心中事件、家族・親族間殺人事件
第4回:在宅介護推進政策は、介護殺人助長政策?
第5回:実刑判決も執行猶予判決も抑止力にはならない家族介護殺人・心中事件
第6回:先に人生を終える高齢者世代の介護と終え方の責任
第7回:介護生活未経験の方に知って頂きたいその状況
第8回:自宅療養・在宅介護は多くの人の希望か?財政面からの政策の持つ狙いと矛盾
第9回:在宅介護主義と地域包括ケアシステムに潜む疑問・課題
第10回:「親捨て」と「(成人した)子捨て」の相互関係
第11回:子との同居で親子共倒れになるなら、子を寄せ付けない「子捨て」を
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【『もう親を捨てるしかない 』構成】
はじめに
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
おわりに
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本書の著者・島田裕已氏著の『0葬 ――あっさり死ぬ』を紹介しつつ
葬儀・葬送を考えるシリーズを、別のブログサイト<世代通信.net>で
展開しています。
ご関心をお持ち頂けましたら、ご覧ください。
◆『0葬-あっさり死ぬ』から
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【島田裕已氏プロフィール】
1953年生。宗教学者、文筆家
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、
東京大学先端科学技術センター特任研究員を歴任。
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(主な著作)
『日本の10大新宗教』『葬式は、要らない』
『戒名は自分で決める』『八紘一宇』
『0葬 ――あっさり死ぬ』『死に方の思想』