2016年度も増加する介護業界の倒産件数:異業種参入者・小規模事業者・FC加盟社等淘汰へ

有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む「老人福祉・
介護事業」。
 大きな課題に浮上している介護職員の人手不足が解消されない中、業界はここに
きて淘汰の波が押し寄せている。

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東京商工リサーチが2016./9/7に発表した
【2016年1-8月「老人福祉・介護事業」の倒産状況】を以下に整理引用しました

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◆2016年1-8月の倒産は62件、過去最多を上回るペース

 企業倒産が低水準で推移するなか、2016年1-8月の老人福祉・介護事業の倒産は62件
(前年同期比12.7%増、前年同期55件)に達し、介護保険法が施行された2000年以降
 の年次集計では、前年(76件)を上回る過去最多ペースで推移。

 負債総額も69億9,700万円(同45.0%増、同48億2,300万円)と前年同期を上回った。
 負債10億円以上が2件(前年同期ゼロ)発生し大型化の兆しがうかがえる反面、負債
 5千万円未満も44件(前年同期比18.9%増、前年同期37件、構成比70.9%)と増え、
 倒産は広がりを見せている。

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◆デイサービス等「通所・短期入所介護事業」の倒産が2割増

 2016年1-8月の老人福祉・介護事業倒産の内訳では、施設系のデイサービスセンターを
 含む「通所・短期入所介護事業」が最多の28件(前年同期比21.7%増、前年同期23件)。
 「訪問介護事業」も25件(同19.0%増、同21件)と前年同期を上回り、有料老人ホーム
 は4件(前年同期2件)。

◆設立5年以内の倒産が約半数

 2011年以降に設立された事業者の倒産が29件(構成比46.7%)と半数近くを占め、設立
 から5年以内の新規事業者が目立つ。
 従業員数別でも、5人未満が42件(前年同期比13.5%増、前年同期37件)と増加し、
 小規模事業者の倒産が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。
 小規模かつ新規事業者が倒産を押し上げている

◆販売不振による倒産が前年同期比8割増

 倒産原因別の最多は販売不振の42件67.7%(前年同期比82.6%増、前年同期23件)。
 次いで、事業上の失敗が7件、設備投資過大が4件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が3件。
 販売不振が全体の約7割(構成比67.7%)を占めた。
 安易な起業だけでなく本業不振のため異業種からの参入(4件)やFC加盟(3件)など、
 事業計画が甘い小・零細規模の業者が目論見通りの業績を上げられず経営に行き詰った
 ケースが多い。

◆事業消滅型の破産が9割

 形態別では、事業消滅型の破産が60件(前年同期比11.1%増、前年同期54件)と全体の
 9割(構成比96.7%)。
 再建型の民事再生法はゼロ(前年同期1件)で、業績不振に陥った事業者の再建が容易
 でないことを物語っている。

◆全国9地区すべてで倒産が発生

 地区別では、全国9地区で倒産が発生。
 関東の23件(前年同期14件)を筆頭に、近畿12件(同16件)、九州9件(同8件)、
 東北6件(同2件)、中部6件(同7件)、中国3件(同ゼロ)、北海道1件(同4件)、
 四国1件(同3件)、北陸1件(同1件)の順。
 前年同期より上回ったのは、東北・関東・中国・九州の4地区。
 減少は北海道・中部・近畿・四国の4地区、北陸が前年同期同数。
 関東が大幅に増えるなど、地区間で“まだら模様”をみせているが、同業他社との競争も
 影響しているとみられる。

◆同期間の主な倒産事例

●(株)アリーズコーポレーション千葉県):書店などを経営していたが業績不振から
 FCに加盟し、デイサービスセンターを開設。
 初期投資に見合った営業収益を確保できずに5月25日に破産開始決定。
●(株)松井組(新潟県):土木工事会社だったが、建設事業の低迷を補うため介護
 福祉事業に参入。最近は介護福祉事業を主力としてきたが業績が改善せず、先行き
 の見通し難から5月13日に破産申請。
●アムール(株)(神奈川県)は、定員10名のデイサービスセンターを運営し、送迎車
 2台を稼動させていた。しかし、小規模施設で採算確保が難しく、人件費等の負担も重
 く1月13日に破産開始決定。

 以上のような分析から、以下のように総括しています。

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2016年の「老人福祉・介護事業」の倒産は過去最多ペースで推移している。
 2015年4月改定の介護報酬は、基本報酬がダウンした一方、充実したサービスを行う
施設への加算が拡充された。
 しかし、小規模事業者では加算の条件をなかなか満たせないところが多い
 特に、新規参入した事業者の多い定員10人以下の小規模デイサービスは基本報酬の
下げ幅が大きく、その影響が顕在化しつつあるようだ。
 介護報酬改定から1年を経過し、「老人福祉・介護事業」の倒産は2016年4月以降、
5カ月連続で前年同月を上回っている。
 特に、2016年4-8月累計は47件(前年同期比67.8%増、前年同期28件)と増勢が目
立つ。
 このうち、施設系のデイサービスセンターを含めた「通所・短期入所介護事業」の
倒産は23件(同76.9%増、同13件)と際立っている。
 施設系デイサービスは、利用者の需要が高いため、異業種からの参入や起業は多い
が、ノウハウ不足や慢性化した人手不足が経営の足かせになっている
 高齢者の増加で介護分野は今後も市場拡大が見込まれるが、地区別で経営環境は
異なっていても一様に厳しさは増しており、事業基盤の脆い事業者を中心に選別の
時期を迎えているようだ。

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 介護事業への異業種からの参入とFC事業活用に関しては、私も一貫して反対して
います。
昨年、この東京商工リサーチの調査報告を参考に用い、以下のブログで考えを述べて
きましたので、見て頂ければと思います。

2015年1~4月、老人福祉・介護事業者倒産件数過去最多ペース:小規模介護事業継承に警鐘(2015/6/12)
2015年1-6月、介護業者経営破綻、最多。介護事業経営の難しさも課題。 (2015/8/16)
介護事業者倒産件数1-8月期、昨年1年間を上回り年間最多更新:新3本の矢で一層厳しく!? (2015/9/27)
2014年、老人福祉・介護事業の新設法人数減少:転換期にある介護業界を考える(2015/12/3)
厳しさ増す小規模介護事業と介護業界の責務:東京商工リサーチ「老人福祉・介護事業」2015年1-10月期倒産状況から (2015/12/4)

 基本的には、儲けるために、儲かるから、と介護事業に参入するのでしょうが、
人が人を相手にする、しかも、心身の不自由な高齢者をケアする仕事の大変さを
まったく分かっていないのでは、と思えるのです。
もちろん過酷な介護現場での仕事に見合った賃金を支払うことに関しては、あ
たかも介護給付で十分充当できるとみる甘い考え方を持つ事業感覚。
そしてその現場で厳しい仕事に従事する人たちを雇用し、やりがいをもって定
着・安定させることができるかどうか、など、考えることのない組織感覚。
フランチャイズチェーンに加盟すれば、利益もパッケージでついてくると考え
るイージーな経営感覚。etc.

 失敗する要素・要因に事欠かないわけです。

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 一方、2016/9/22 付日経では
「セントケア、今期純利益21%増」と題して、以下のレポートがありました。

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 介護大手のセントケア・ホールディングは9月21日、2017年3月期の連結純利益
が前期比21%増の10億円になる見通しと発表。従来予想は5%増の9億円だった。
 保有する介護施設でショートステイなど短期の利用が増えており、利益が上振れ。
 売上高は6%増の380億円となる見通し。営業利益は16%増の21億円を見込む。

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資本力のある大手介護事業者の方がやはり強いです。
現場で働く介護スタッフにとっても、組織規模が大きい事業者・企業で働く
方が、勤務シフト・労働環境、そして賃金面でも、安心感があります。
中小企業・零細企業では、雇用と定着は、それらの条件面ですべて逆なので
すから、厳しいことこの上ないのです。

利用者サイドから考えても、安定しない介護スタッフや緊急時に的確に対応
してもらえなければ、介護サービスを委ねることはできなくなります。

もちろん、中規模以上の事業者も、相当の経営努力が必要で、今後も、そこ
そこの事業規模の介護事業者のM&Aも続くと考えられます。

次の介護保険法改正が行われるの2018年から2020年の間に、この業界の勢力
図がある程度強く形成されるのでは、と考えています。

その中では現状の介護大手の占有度が高まると共に、医療系法人グループの勢
力が拡大する可能性が高いと予想しています。

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