止まらない全年代単身者世帯と老人単身者世帯の増加:『もう親を捨てるしかない』(23)
『もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない 』
(島田裕已氏著・2016/5/30刊)を紹介しながら考えるシリーズ。
現在第2章です。
「第2章 日本人は長生きし過ぎる」
第12回:今一度、認知症徘徊事故訴訟 最高裁判決から考える
第13回:ポケGO!ではない、認知症GO!は仮想現実?
第14回:2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳
第15回:望まれた不老長寿と健康・老いの変質
第16回:「長生きはめでたいことなのか」という問い
第17回:「尊厳死の宣言書」リビング・ウィル(Living Will)をご存知ですか
第18回:超高齢化の象徴でもあるリハビリ入院における一つの高齢化社会にて
第19回:みな歳を取り、世代を繋ぎ、別れを告げて、逝くのですが・・・
第20回:逆縁を知らぬまま生きる超高齢者もいる時代の無情
第21回:無縁にも、孤独にも多様性がある。そういう無縁死・孤独死なら・・・
第22回:独居、孤独死、認知症徘徊者等総合的な高齢者見守りシステムが必要な社会
今回は第23回です。
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第2章 日本人は長生きし過ぎる(12)
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<単身者がもっとも多いのは80~84歳の女性>
現代の日本人で孤独死に至るのは、ひとりで住んでいる人間である。
同居者がいるなら、孤独死にはならない。単身世帯者が増えたことで、必然
的に孤独死も増えているわけである。
2010年の国勢調査によれば、日本の世帯数は5184万2000世帯で、そのうち、
単身者世帯が1678万5000世帯を占めていた。これは全体の32.4%で、単身者世
帯が最も多くなっていた。
その20年前、1990年の国勢調査では、世帯数は4067万で、単身者世帯は939
万世帯だった。世帯数全体は20年で1,27倍に増えているが、単身者世帯になる
と1.79倍にも増えている。結局のところ、単身者世帯の増加が、世帯数の増加の
大きな原因になっている。
ただし、単身者世帯がすべて高齢者だというわけではない。
実は、男女によって、どの世代に単身者は多いかは大きく異なっている。
男性だと、20歳から24歳が最も多く、その世代の3割近くが単身者世帯で、
全体のピークを形成している。
男性の単身者世帯は、それ以降減っていく。結婚して所帯を持つからである。
そして、70歳から74歳の世代でまた増えるようになり、その世代の10%をわ
ずかに超えるくらいになるが、それ以上年齢が上がっても、割合は増えていか
ない。
一方、女性だと単身者世帯がもっとも多いのは80歳から84歳の世代で、全体
の26%にも達する。これは、最初のピークである20歳から24歳までの21%を上
回っている。
これは、夫婦のうち、女性の方が長生きし、男性は先に亡くなることが多い
からである。
ただ、女性では、若い世代の単身者世帯が増えているものの、男性ではピー
クを形成する20歳から24歳の世代以降に単身者世帯の割合が増えている。
これは、未婚の男性が増えているからで、生涯にわたって一度も結婚しない
生涯未婚率が高くなっている以上、今後も増えていくと予想される。生涯のほ
とんどを単身者として暮らす人間が、これからは多くなっていくのである。
単身者世帯が増えたのは、戦後多くの人間が地方から都会に出てきて、新し
い世帯を作るようになったからである。それが、根本的な原因である。
地方の家では、異なる世代が同居して生活している。3世代同居は当たり前
で、4世代同居ということだってあり得る。そうした家は、まさに代々続いて
きた家と言えるものである。同じ家でも、都会にある核家族とはそのあり方が
根本から異なる。
それも、地方の家が経済的な共同体としての性格を色濃くもっているからで
ある。そのため、家族も積極的に家を守ろうとする。かつては、そのことに家
族がすべてを尽くしていた。
しかし、都会にできた家は規模の小さな核家族で、とても代々は続いていか
ないものである。
最初は夫婦だけで生活している。やがては子どもが生まれるだろうが、子ど
もの数は2人が多く、多くても3人である。そうなると、せいぜい5人程度で
生活するのが基本的なスタイルになる。
その際には2世代による同居である。夫婦どちらかの親を呼び寄せて3世代
同居ということもあり得るが、親が亡くなれば、また2世代同居に戻っていく。
さらに、子どもが進学や就職、結婚などで巣立てば、残るのは夫婦だけであ
る。そして、夫婦のうちどちらかが亡くなれば、単身者世帯になってしまう。
※次項に続きます。
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直近の2015年の国勢調査の速報値では、単身者世帯数は、1684万5千世帯、32.5%と
微増しています。
※<2015年国勢調査速報値>より。
これに、前回掲載の65歳以上高齢者が一人以上いる世帯のグラフを、再度重ねます。
(1年前の2014年までのデータですが。)
国勢調査データでは、2人世帯も増えており、65歳以上の夫婦世帯の増加もそこでの
率が高いと思われます。
もう一つ、平均寿命の伸びについての、20176/7/28付日経からの抜粋を以下に。
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2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳で、いずれも過去最高を更新。
(厚生労働省調査)。
がんや心臓病などの治療成績の向上が要因とみられる。
15年の平均寿命は14年と比べて女性が0.22歳、男性は0.29歳延びた。
過去最高の更新は女性が3年連続、男性は4年連続。
「医療技術の進歩などで平均寿命はまだ延びる余地がある」とみる。
15年生まれの男女が後期高齢者となる75歳まで生きる割合は女性87.7%、男性74.6%。
90歳まで生存する割合は女性が49.1%、男性は25.0%としている。
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こうした状況・データからは、いずれ単身者がもっとも多いのは、85歳~89歳の女性
となるのでは、というイメージもわいてくるのですが、どうなっていくでしょう・・・。
さすがに、その年齢・年代では、独居生活は困難でしょうから、ありえないかもしれ
ませんが・・・。
そして、生涯未婚率の高まり等も背景にした全年代における単身者世帯の増加が、高
齢者以外の孤独死の増加にもつながるのでは、という危惧さえ抱かせます
次回は、<結婚する意味、子どもをもつ意義を見つけづらい都会の生活>
です。
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【『もう親を捨てるしかない』から、ブログ一覧】
「はじめに」
第1回:介護殺人?利根川心中事件が話題にならなかった背景を読む
「第1章 孝行な子こそ親を殺す」
第2回:家族による介護殺人事件への関心が薄れていく
第3回:減る殺人事件、増える介護殺人・心中事件、家族・親族間殺人事件
第4回:在宅介護推進政策は、介護殺人助長政策?
第5回:実刑判決も執行猶予判決も抑止力にはならない家族介護殺人・心中事件
第6回:先に人生を終える高齢者世代の介護と終え方の責任
第7回:介護生活未経験の方に知って頂きたいその状況
第8回:自宅療養・在宅介護は多くの人の希望か?財政面からの政策の持つ狙いと矛盾
第9回:在宅介護主義と地域包括ケアシステムに潜む疑問・課題
第10回:「親捨て」と「(成人した)子捨て」の相互関係
第11回:子との同居で親子共倒れになるなら、子を寄せ付けない「子捨て」を
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【『もう親を捨てるしかない 』構成】
はじめに
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
おわりに
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本書の著者・島田裕已氏著の『0葬 ――あっさり死ぬ』を紹介しつつ
葬儀・葬送を考えるシリーズを、別のブログサイト<世代通信.net>で
展開しています。
ご関心をお持ち頂けましたら、ご覧ください。
◆『0葬-あっさり死ぬ』から
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【島田裕已氏プロフィール】
1953年生。宗教学者、文筆家
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、
東京大学先端科学技術センター特任研究員を歴任。
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(主な著作)
『日本の10大新宗教』『葬式は、要らない』
『戒名は自分で決める』『八紘一宇』
『0葬 ――あっさり死ぬ』『死に方の思想』