企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度:『在宅介護』<家族介護の限界>から(3)

介護業界の方々と、介護者・要介護者、介護に関心をお持ちの方々に是非
ともお読み頂きたい書。
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)

これをもとに本書を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズを構成順を
変えて継続しています。

1月は、基本的な視点・課題に立ち戻って「第1章 在宅介護の実態」シリーズ。
2月は、「第2章 家族介護の限界」をテーマに。

第1回(第33回):企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第2回(第34回):介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾

今回は第3回(第35回)です。

第2章 家族介護の限界
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 1.介護離職者10万人(3)
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<介護休暇の延長を>

筆者(結城氏)は、この母娘(上記前回、介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾から)
のケースから考えるに、「介護休暇」も子育てシステムである「産休・育休」
と同様に、一年間の休暇取得を可能にすべきであると考える。

なぜなら、多くの人にとって「介護」は突然やってくるもので、普段から薄々
は不安に感じていても、その場にならないと実感はできないものだからである。
「介護休暇」の取得終了後に、ようやく客観的に問題分析が可能になり、何を
しなければならないかを認識できるようになりがちだ。

しかも、仕事と両立される環境にまでしていくには、たとえば、施設入所など
を考えると、現行の93日間では圧倒的に少ない。

今後、男女を問わず65歳まで(高齢者になるまで)働き続ける社会を目指す
のであれば、「介護離職」の問題を解決していかねばならず、どのような境遇
になったとしても一年間の「介護休暇」が取得できるとなれば、情勢はかなり
変わってくる。

ケアマネジャーなどの援助者側にとっても、一年間の期間があれば仕事に復帰
できるまでの環境を調整できるケースも多くなるだろう。
また、親子の気持ちにも一定の区切りがついて、在宅介護に拘わっていたとし
ても、施設入所に踏み切る余裕もできるかもしれない。


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私の介護休業制度についての考えは、前回のブログに書いたとおりです。
⇒ 介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾

評論家や学者等研究者、政治家・行政、そして利用者も、ですが、企業の目的
など構わず、就労者の利便性のみ考えて改善提起します。

気持ちはよく分かりますが、そうなってくると企業そのものが公共事業体と指
定、あるいは認識すべき存在となるのでは・・・。
そう思います。
雇用面から、民間企業組織が公共事業体として性格づけられることになる・・・。

もちろん企業は、その活動を通じて社会的貢献度を高め、社会的評価・信頼を
得ることで一層その価値を高めますが、社会福祉面で、他からの圧力を受けて
それを果たさなければ、社会的に悪、と断じられることには少なからず疑問を
抱きます。

そうした責務を果たす企業・経営者であって欲しいとは思いますが、雇用を創
出し、生活を維持できる賃金を支払い、法定福利費を負担し、所得税、地方税
などを納付する最低の義務を果たせば、大きく社会に貢献している・・・。
わたしはそう思っています。

いろいろ提案し、要求するのは自由ですが、では、ご自身がそういう理想的な
企業を経営することができるか・・・?
それが可能な事業組織・事業システムを起業し、運営管理できるか・・・?

そうした理解・認識をもった上で、望ましい社会・制度・システムを考え、
構築していくべき・・・。

社会福祉のレベルを超える制度を企業福祉に求めることの矛盾。
それは、国家主義・全体主義をも想起させるもの・・・。
大げさかもしれませんが、そうした危うさを感じるのです・・・。

 

次回から、「2.パラサイトシングル介護者」に入ります。

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在宅介護――「自分で選ぶ」視点からブログリスト>>

「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して

「第1章 在宅介護の実態」
第24回介護離職の根本原因としての在宅介護
第25回:親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第26回:在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担
第27回:実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的
第28回:在宅介護が困難な場合の介護サービス付き高齢者住宅、サ高住
第29回厚生年金でほぼ賄える「サ高住」が理想
第30回:「小規模多機能型居宅介護」という名称自体、分かりにくい
第31回:(看護)小規模多機能型居宅介護事業は、小規模では成り立たない
第32回だれでも、どこでも、いつでもできる介護サービス事業か?

「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人

「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題

第7回:これからの混合介護のあり方を考える
第8回:介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回:介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回:福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回:複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?

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