お泊り付デイサービスがグレー化するリスク:『在宅介護』<家族介護の限界>から(7)

介護業界の方々と、介護者・要介護者、介護に関心をお持ちの方々に是非
ともお読み頂きたい書。
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)

本書を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。
2月は、「第2章 家族介護の限界」をテーマに。

第1回(第33回):企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第2回(第34回):介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾
第3回(第35回):企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度
第4回(第36回):パラサイトシングル介護者を生み出す親子関係の根深さ
第5回(第37回):介護虐待で考える、介護者・要介護者の人権
第6回(第38回):特養入所条件要介護度3以上で、待機高齢者はどうなった?

今回は第7回(第39回)です。

第2章 家族介護の限界
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 4.グレーゾーンの介護サービス(1)
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特養施設の待機者が在宅介護を余儀なくされている現実は否定しようもない
が、法的には問題ないものの人権的もしくは倫理的に疑念を抱く在宅系サー
ビスが存在していることも直視しなければならない。
特養の待機者の中には経済的に難しいケースも多々あり、在宅介護において
も限られた経済力でサービスを利用せざるをえない。
このような要介護高齢者や家族を対象にした、グレーゾーンとも言える在宅
系介護サービスがある。

<お泊り付デイサービスとは>

介護保険における「デイサービス(通所介護)」という、日帰り型の通所系
サービスがある。
高齢者の自宅まで送迎付で、日中、食事、入浴、体操、レクリエーションな
どのサービスを施設で利用することで、介護者である家族は昼間だけでも介
護疲れの解消ができる。
しかも、高齢者本人も自宅に閉じこもらずに社会とのつながりができ、人的
交流が豊かになる。
通常、朝9時に自宅を出、17時には帰宅する。
そのため働いている家族などから、もう少し利用時間を延長してほしいとの
声も多かった。
そこで、2012年の介護報酬改定で利用時間の延長が認められるようになった
ものの、採算性の面で折り合いがつかず、延長サービスをしている介護事業
所は少ない。

そこで、このような介護保険の枠組みを利用しながら、施設側と利用者とで
個人契約を締結し、そのまま施設に泊まるサービスを提供しているサービス
形態があり、介護業界では「お泊り付デイサービス」と言われている。
宿泊部分は全額自費で施設のあるスペースを利用しながら、要介護高齢者を
預かることができるのである。

普段通っているデイサービスの馴染みの職員が夜も面倒を看てくれるのであ
れば、高齢者も安心というわけだ。
短期間の施設を利用するショートステイは、必ずしも日頃から接している介
護士などがケアするわけではない。
しかも、家族が急な仕事や葬式などで外出しなければならない場合でも、利
用者が多く緊急に対応できる保障はない。
しかし、「お泊り付デイサービス」であれば、今日申し込んで、翌日には利
用できるといった状況である。

2011年9月ある地域で評判の良い「お泊り付デイサービス」の責任者に話を
聞いた。

このサービスのメリットは、認知症高齢者は、夜間に徘徊や失禁などの問題
行動を起こしやすいので、慣れない施設を利用するよりも情緒的に落ち着く
ことだという。
けれども、デイサービスでのこのサービスは全額自費であるため、利用料を
高く徴収できれば、夜間介護士を増員できるものの、安く設定すると少ない
人数での対応となる。
また、スプリンクラーといった防火設備も費用がかさみ不充分となりがちで
ある。
話を聞いたこの施設は、一泊食費込みで4000円の利用料で夜間は二人の介護
士が対応しており、一定のサービスの質が保たれていた。
利用する高齢者は、3~7日間連泊するケースが多いということであった。


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一時的な利用、急な利用に備えた民間での介護施設運営。

当然、そうした事態に備えるための人的な体制を整える必要があり、自ずと
利用料は割高になります。
しかも、その体制は、人材の確保を含め、そう簡単に構築し運営することが
できない。
そのため、一層高い料金設定を招き、それでも、というか、そうだからこそ、
介護サービスの質も保証されないリスクがある・・・。

その防止策として、こうした施設は、やはり母体として居宅型高齢者介護施
設があり、その一定枠の中で、一時的な宿泊、急な宿泊を希望する要介護高
齢者とその家族に応える仕組みがあることが望ましいと思われます。

その体制でならば、まだコスト・料金を低減できる余地もあるでしょうし、
保険外サービスの収入源にもできることになります。
夜間体制も、確立している24時間体制にお泊り利用者サービス分の一部を
上乗せすることで対応できるかと思われます。

ところが、既存の小規模デイサービス事業を拡張する形で、保険外収益を得
るがためのお泊り付デイサービスでは、恐らく介護スタッフの確保とサービ
スの質の維持はなかなか難しいのではないでしょうか。

まさに、グレー化するリスクがそこに潜んでいます。

 

次回、<劣悪なサービス>、<政府の対応> に続きます。

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