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減る殺人事件、増える介護殺人・心中事件、家族・親族間殺人事件:『もう親を捨てるしかない』から(3)

最新刊の
もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない
(島田裕已氏著・2016/5/30刊)を紹介しながら考えるシリーズ
を始めています。

「はじめに」
第1回:介護殺人?利根川心中事件が話題にならなかった背景を読む
「第1章 孝行な子こそ親を殺す」
第2回:家族による介護殺人事件への関心が薄れていく

と進み、今回は第3回です。

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 第1章 孝行な子こそ親を殺す(2)
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殺人事件は減っているのに介護殺人は大幅に増えている

 1年間に介護殺人が40件というのは、10日に一度近く発生していることに
なるが、殺人全般の数と比べてみると、かなり多いという印象を受ける。

 ちなみに、2013年における殺人は342件だった。
意外と少ないと思われる方もいるだろう。
そのうち10分の1以上が介護殺人であったことになる。
殺人の件数自体は、ここのところ減少している。
戦後、殺人がもっとも多かったのは1955年もことで、2119人だった。
1日6人弱である。
それが、1987年に1000人をはじめて切り、それ以降も減り続けている。

 今は、1日1件にも満たないわけで、おそらくこれからも減少していくであ
ろう。
 そのなかで、介護殺人はかなりの件数にのぼっている。
もし介護殺人が一掃されれば、年間の殺人の件数は300を切るはずだ。

 『SAPIO』2015年1月号の「家族同士の殺し合いが増加 昨年の殺人
事件は親族間が53.5%」という記事によれば、2013年の殺人事件検挙件数の
なかで、犯人と殺された人間が親族の関係にある割合が53.5%と全体の半数
にのぼったという。

 すでに見たように、殺人の件数自体はかなり減ってきているわけだが、親
族のあいだでも殺人となると、2003年までの25年ほどは検挙件数全体の40%
程度だったのが、2004年には45.5%に上昇し、2013年には53.5%にまで増加
した。

 もちろん、そうした親族間の殺人がすべて介護が原因であるわけではない。
経済的な困窮や財産をめぐる争い、あるいは虐待といったことも関係して
いるが、介護殺人が少なくない以上、それも間違いなく一因ではある。

 前掲の湯原准教授は、2016年に入って、新聞各紙の記事をもとに、改めて
介護殺人の数を集計している。
それによれば、1998年から2015年までの18年間で、全国で起こった介護殺
人や心中が716件にのぼったことが明らかになった。
そのうち、夫婦間での事件が333件で、47%を占め、子が親を死亡させたケ
ースは331件、46%にのぼった。

 注目されるのは、男性が犯人の事件が512件で72%を占め、女性が犯人の事
件の194件、27%を大きく上回っている点である。
他に、不明や複数犯が10件(1%)にのぼる。

悩み3

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湯原准教授の調査研究については、以前、このブログで
想定可能な介護家族による介護殺人リスク:介護者自身に必要な支援について考える(2016/2/17)
取り上げたことがあることは、前回述べました。

殺人事件が減少トレンドにあるなかで、介護殺人が増えている。
介護以外の原因で親族間の殺人も多い。

まさに、下重暁子さんの『家族という病』『家族という病2』のベストセラー化
を後押しする要因の一つかのようです・・・。

殺人事件全般が減少しているのは、非常に喜ばしいことですが、家族間・親族
間の殺人事件が増加するのは、人間の業を突きつけるものでなんともやりきれな
い・・・。
しかし、そのなかの介護殺人・心中は、異質であり、悲しさを感じさせるもの
です。

ここでプロローグで引き合いに出された「利根川心中事件」は、実は、
家族という病2』で下重さんも取り上げているんです。
(私は、この「家族という病」シリーズは、あまり評価していないのですが)
下重暁子著『家族という病』は、家族論というより親子論:家父長制と戦後へのアンチテーゼ
家族という病2』もさらっと読み終えていますが、その感想も、いずれ
<世代通信.net>で書こうと思っています。

ところで、利根川心中事件は、その後三女が殺人の罪で訴追されていたのですが、
2016/6/21付日経夕刊で、以下のように報じられました。

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埼玉県深谷市などを流れる利根川で昨年11月、藤田慶秀さん(当時74歳)と妻、
ヨキさん(同81歳)が水死した親子心中事件で、殺人と自殺ほう助の罪に問われ
た三女の無職、波方敦子被告(47歳)の裁判員裁判の論告求刑公判が6月21日、
さいたま地裁(松原里美裁判長)で開かれ、検察側は懲役8年を求刑した。
判決は6月23日。

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明日が判決日ですね。
明後日に、このシリーズの続きを書くことにし、その際に判決結果を載せる
ことにします。

次回は、
<介護を推奨する政府の施策に従えば、介護殺人はますます増加する>
です。
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【『もう親を捨てるしかない 』構成】

はじめに
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
おわりに

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【島田裕已氏プロフィール】
1953年生。宗教学者、文筆家
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、
東京大学先端科学技術センター特任研究員を歴任。
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(主な著作)
『日本の10大新宗教』『葬式は、要らない
『戒名は自分で決める』『八紘一宇』
0葬 ――あっさり死ぬ』『死に方の思想』

 

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