ケアマネジャーが介護生活の質を左右する:『在宅介護』<在宅介護サービスの使い方>から(6)

良書 『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)
を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。

現在は、「第4章 在宅介護サービスの使い方」

第1回:上がり続ける介護保険料。介護保険制度の基本を知る①
第2回:介護報酬・介護保険サービス料の基礎知識。介護保険制度の基本を知る②
第3回:要介護認定の仕組み・手続きと認定調査
第4回:要介護認定システムの客観性・信憑性問題による認定率格差と介護給付格差
第5回:要介護度レベルと認定方法の簡素化の余地がある介護保険法

今回は第6回(通算49回)です。

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 3.ケアマネジャーを決める
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<ケアマネジャー次第!>

 在宅介護では認定の前後で、ケアマネジャーを決めることになる。
ケアマネジャーの選択は、サービスの調整、サービス機関の選択などにおいて、非常
に重要となる。
介護現場に精通したケアマネジャーであれば、急に施設に預かってもらわないといけ
ない事態が生じても、すぐに受入れ先を探してもらえることもある。
サービス資源の調整はケアマネジャーの力量次第とも言えなくもない。

 (ケアマネジャーが作成するケアプランについての記述は省略します。)

 もし、自分と相性の合わないケアマネジャーと感じたら、別のケアマネジャーに替え
ることもできるので、遠慮せずに申し出た方がよい。「今のケアマネジャーに悪いから
我慢しておく!」といったことは好ましくない。

 ケアマネジャーを選定する、もしくは交替するなどの相談は、「地域包括センター」
という高齢者の相談機関でも応じてくれる。
相談は無料で、中立・公正の立場で対応してくれる。
初めて介護保険サービスを利用する人にとっては、初歩的なことから相談にのってく
れるので安心だ。

 しかし、ケアマネジャーの選定には、知り合いに介護保険サービスを利用している人
がいれば、情報を得ることも有効な手段だ。
「口コミ」で良いケアマネジャーを見つけることはよくあるパターンで、身近な人に
聞いてみるのもいいかもしれない。

<退院するにあたって>

 具体的に、介護サービスが必要となる場合を考えてみよう。
 その多くは、急に脳梗塞などで体調を崩し病院に搬送され、治療は終えたものの
完治することなく心身に障害が残り、退院間近にとなって、家族や本人らは介護サ
ービスの必要性を実感する。
 そして、退院前にケアマネジャーを決めることになる。
入院先から在宅介護の段取りを調整する必要があり、ケアマネジャーの選定は在
宅介護スタートに向けて重要なプロセスとなる。

 総合病院や大学病院などの大規模な病院では、「退院支援室」「医療相談室」と
いった窓口が設置され、在宅介護に向けた相談に応じてくれる。
在宅介護に精通した看護師や医療ソーシャルワーカーなどが、
ケアマネジャーの
選定なども含めて相談に応じてくれる。
経済的に困窮している場合には、生活保護制度の活用も含めて対応する。

 なお、ケアマネジャーになるには、介護に精通した、たとえば、「看護師」「介
護士」「社会福祉士」「歯科衛生士」などといった基礎資格を有し、5年以上の介
護関連の現場経験を積む必要がある。
そして、受験資格を得てから試験に合格して研修を経なければ、ケアマネジャー
として働くことはできない。
しかも、5年ごとに更新研修があり定期的に勉強していかなければならない。

その意味では、退院して医療ニーズの高い在宅介護をスタートするともなれば、
医学知識に明るいケアマネジャーを選定しておくのもいい。
そのような希望も、もしあれば「退院支援室」「医療相談室」に申し出ておくこ
とが重要であろう。

<書類整理に追われる>

(略)
ケアマネジャーの仕事は、介護保険サービスの調整役であるため、利用者の日常
生活では足りない部分を支援している。
もっとも、膨大な書類を整えるのに忙しく、高齢者と関わるよりパソコン画面上
の作業や書類整理に時間が費やされている(という)。
本来、相談業務が主軸だが、どうしても、業務のうち5割程度は事務処理に追わ
れる人も多い。
(以下、略)

<男性の介護>

 なお、昨今、男性単身で親の介護をしている「男性の介護」も増え、親と息子な
ど二人の介護生活を送っていることも珍しくないという。
 その場合、献身的に介護している男性介護者でも、たとえば、母親の下着を買う
のに躊躇するなど、男性ならではの介護の悩みがあるという。
 ヘルパーなどに下着類の買い物を頼むことになるのだが、何気ないことでも男性
にとっては、介護上の課題となる。

※次節に続きます。

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長くなりました。

要は、介護保険が適用される介護サービスを受けるためには、ケアマネジャーが
作成するケアプランが絶対必要で、ケアマネジャーを決めない限り物事は始まらな
いというわけです。

私の義母にサ高住に入ってもらった時、そのサ高住内に設置された居宅介護事業
所に所属するケアマネジャーが、義母の担当となり、入室から入居後のケアプラン
の作成などに関わってくれました。

ただ、1年経つか経たないうちに、その居宅介護事業所が閉鎖され、2人の経験
のあるケアマネジャーも退職することに。
その時、サ高住経営者が他の外部の居宅事業企業と提携し、そこに所属するケア
マネジャー(新卒の大卒男性社員)に引き継ぐということがありました。

そのサ高住に入居する要介護高齢者数だけでは、2人いたケアマネジャーの人件
費は恐らく出なかったのでは、と思います。
しかし、現実的に、そのサ高住内に事務所があることで、その施設外の要介護者
のケアマネになるように、ある意味営業活動を行うのは難しかったのでは、と思い
ます。
もちろん、そのサ高住に入居する高齢者を増やす、営業担当としての役割も期待
されていたのかもしれませんが、本来中立的な立場で、ケアマネの職務を果たすべ
き側面もあるので、それも難しいことと推察したものです。
(そのあたりの実際の事情を伺いたかったのですが、急なことで、それっきりにな
ってしまいました。)

(ところが、2人のうちのおひとりと、先日、右大腿骨頸部骨折で入院していた総
合病院の病棟の個室に入るときに、声を掛けられ再会! 「偶然見かけた顔が大野
さんに似ていたので声を掛けた」とのこと。当然、ケアマネの仕事でこの病院に来
ていたのです。今は公的な組織でその任に就いているとのことでした。)

話を戻して、ケアマネジャーが介護において、ということは、介護事業者から見
て、という点で、利害関係の間にいるわけで、そこから発生する問題を指摘する声
も多々あるようです。

この問題については、また別の機会に考えることにします。

ケアマネジャーの選定以前に、認定員に対象となる高齢者に面談してもらい、介護
保険を利用できる被保険者の介護度の認定を受ける必要があります。
地方自治体の介護担当部署で申し込みますが、その際に、ケアマネジャーが居る事
業所のリストを渡されますから、その中から自分でアプローチして調べ、選定する
のが一般的かと思います。

 

次回は、「4.在宅介護サービスのあれこれ」です。

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