
介護サービスを受けるために欠かせない「地域包括支援センター」の役割:『在宅介護』<在宅介護サービスの使い方>から(9)
良書 『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)
を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。
現在は、「第4章 在宅介護サービスの使い方」。
第1回:上がり続ける介護保険料。介護保険制度の基本を知る①
第2回:介護報酬・介護保険サービス料の基礎知識。介護保険制度の基本を知る②
第3回:要介護認定の仕組み・手続きと認定調査
第4回:要介護認定システムの客観性・信憑性問題による認定率格差と介護給付格差
第5回:要介護度レベルと認定方法の簡素化の余地がある介護保険法
第6回:ケアマネジャーが介護生活の質を左右する
第7回:生活援助サービスの短縮化・低下は已むを得ないか?
第8回:デイサービス、デイケア、ショートステイの利用法
今回はその第9回(通算52回)です。
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4.在宅介護サービスのあれこれ(3)
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<地域住民しか使えないサービス>
介護保険サービスの中に「地域密着型サービス」という分類がある。
原則、当該介護事業所内の市町村住民しか利用できない介護保険サービスである。
代表的なサービスに「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」「認知症
デイサービス」「小規模多機能型居宅介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」
などが挙げられる。
◆「グループホーム」は、認知症の方を専門に受け入れる施設機能を有したサービス
で、特養などの施設と違ってアットホームな少人数形式でケアがなされる。
全室個室で、費用は地域にもよるが、食費や光熱費など総額月13万~18万円が相場
となっている。
重度の方でも看てもらえるが、基本的には要介護度1~3の高齢者が利用している。
5~18人の共同生活スタイルで、自宅近くで24時間受け入れ可能という施設的な
サービスが目指されている。
◆「認知症デイサービス」は、認知症の要介護高齢者に特化した「デイサービス」で、
プログラムメニューも認知症専門の工夫がなされている。
<地域包括支援センターの役割>
在宅介護の拠点となる機関が「地域包括支援センター」である。
全国に2013年4月時点で4484か所設けられ、その約3割は自治体直営で、約7割は市
町村から社会福祉法人や社会福祉協議会、医療法人などに委託されて運営されている。
これらに委託運営されていたとしても公的な側面をもった相談機関であることに変
わりなく、高齢者の諸問題や介護案件などについて無料で対応してくれる。
また、介護予防や認知症対応、金銭管理が難しいケースにおいては成年後見制度へ
の橋渡し役など、各高齢者に応じた支援を行っている。
基本的には社会福祉士(ソーシャルワーカー)、主任ケアマネジャー、保健師(看
護師)などが、相談などに従事している。
業務の中には、「家族介護者の会」といった地域のネットワークの場づくりや介護
従事者が集ってケースのことを話し合う「地域ケア会議」を主宰するなど、地域の要
としての役割も果たすことになっている。
特に、医療と介護の連携強化を目的に、地域の在宅介護者とケアマネジャー、ヘル
パーなどといった従事者が集う会なども主催して、地域における医療・介護資源のネ
ットワーク化にも努めている。
介護が必要となった、何か不安なことが生じた、施設の選び方はどうすればよいか
など、些細なことでも相談にのってくれるので気軽に活用いただくとよい。
※次節に続きます。
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昨年、義母が骨折・手術・入院し、リハビリ転院、介護認定申請、サ高住への入居
などの、病院→病院→介護施設、という一連の流れにおいて、地域包括支援センター
に関わってもらい、地域医療・介護の連携のひとつのプロセスを経験しました。
各病院に地域包括担当がおり、病院間や病院・ケアマネジャー間の連携・連絡業務
を行ってもらったわけです。
それから、今年、要介護1から要支援2に認定変更があった義母のケアマネジャー
が原則、管轄する地域包括センターとなったのですが、従来の民間事業所のケアマ
ネに委託する形をとり、3者で新たな契約を結びました。
ところが居住する岡崎市において、地域包括支援センターの地域区分が変更され、
そのために、新たに管轄になった包括センターの担当者と従来の民間ケアマネと私
共とで、契約書を作り直すという面倒な経験をしました。
(これはバカバカしかった!)
今回の私自身の急性期病院での骨折入院手術・リハビリから、回復期病院へのリハ
ビリ目的での転院においては、医療・介護連携ではなく、医療・医療の地域包括連携
があったことになります。
今回の「4.在宅サービスのあれこれ」は、介護が現実化した時には、身近に、経
験・体験する施設や手続きなどに関する内容でした。
基礎知識として、再読・再確認しておくことをお勧めします。
次回は、次節「5.利用しにくい介護保険サービス」です。
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『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』ブログリスト>>
「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して
「第1章 在宅介護の実態」
第24回:介護離職の根本原因としての在宅介護
第25回:親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第26回:在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担
第27回:実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的
第28回:在宅介護が困難な場合の介護サービス付き高齢者住宅、サ高住
第29回:厚生年金でほぼ賄える「サ高住」が理想
第30回:「小規模多機能型居宅介護」という名称自体、分かりにくい
第31回:(看護)小規模多機能型居宅介護事業は、小規模では成り立たない
第32回:だれでも、どこでも、いつでもできる介護サービス事業か?
「第2章 家族介護の限界」
第33回:企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第34回:介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾
第35回:企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度
第36回:パラサイトシングル介護者を生み出す親子関係の根深さ
第37回:介護虐待で考える、介護者・要介護者の人権
第38回:特養入所条件要介護度3以上で、待機高齢者はどうなった?
第39回:お泊り付デイサービスがグレー化するリスク
第40回:劣悪化する介護事業の原因の一端は、低所得高齢者政策の欠如に
第41回:住宅型有料老人ホーム事業がグレーからブラック化する前に
第42回:独居高齢者・高齢者夫婦世帯の増加で困難になる在宅介護・家族介護
第43回:国・自治体の介護行政無策のしわ寄せが介護事故・事件を招く
「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人
「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」へ
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題
第7回:これからの混合介護のあり方を考える
第8回:介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回:介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回:福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回:複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?
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