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責任回避の自助・互助介護政策化。公的サービス責任が先:『在宅介護』<施設と在宅介護>から(2)

良書 『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)
を紹介しながら、介護問題を考えるシリーズ。

前回から「第5章 施設と在宅介護」に入っています。
第1回(通算56回):地域包括ケアシステムの基本にある仕事以外の要素

今回はその第2回(通算57回)です。

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 1.地域包括ケアシステムとは(2)
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<自助と互助>

「地域包括ケアシステム」という施策では、公的サービスに併せて「自助」「互助」
といった理念が重要視されている。

高齢者自身が心身に気を遣いながらできるだけ「介護予防」をこころがけ、運動や
食生活のバランス維持に努めていく。
また、自分でできることは自分で行い、一定の経済的余力があれば公的サービスに
頼らず自費でサービスを使うことも、「自助」努力にあてはまるのではないだろうか。

さらに、地域の助け合い組織を強化して、ボランティア組織が活性化されることで、
在宅介護も促進されるのではないかと考えられている。
実際、各地で自治会役員やHPO法人などの団体が助け合い組織を強化しており、そ
れらが「互助」組織の活性化の先進事例として紹介されることも少なくない。

 ただし、「自助」や「互助」といった理念に基づくサービス形態、もしくは高齢者
の意識変容を、在宅介護の中心に据えていくのには多くの課題を残す。
もちろん、「自助」や「互助」に基づく施策は重要であり、各地域で活性化させて
いくことは必要不可欠であろう。
けれども、その結果、かなりの個人差や地域格差が生じてしまいかねない。
繰り返すが、あくまでも「自助」や「互助」に基づく施策は、公的サービスの補完
であって「代替」にはなりえない。
公的サービスがしっかりと整備されてこそ、「自助」「互助」といったサービス形
態が活性化されてくる。

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<「互助」は減退>

 特に、「互助」によるサービスの担い手不足は、一部を除いて全国的な傾向になり
つつある、
 非常勤公務員でありながらまったくのボランタリー(無報酬)の立場で、地域住民
の福祉活動や相談業務に尽力している民生委員の定員不足が顕著となっている。
民生委員制度の歴史は長いが、一昔前までは地域の名誉職的な立場で、地域住民を
まとめるような機能を果たしてきた。
しかし昨今、高齢者や児童、生活困窮者といった福祉ニーズが多様化するなかで、
民生委員の役割において福祉関連業務のニーズが高まり、公的サービスの橋渡し的役
割が重視されている。
民生委員の定員不足が加速すれば、地域の中に潜む福祉ニーズを必要とする人を公
的サービスにつなぎにくくなる。

 また、ボランティアの担い手においても、1990年代と現代とでは地域で活動する人
たちの実態はまったく変貌している。
従来、ボランティア活動の担い手は子育てを終えた専業主婦や定年退職をした60歳
代前半の高齢者層であった。
もちろん学生ボランティアも考えられるが、地域の核となるのは、これらの層であ
った。それが現在、専業主婦層は減少傾向にある。

 しかも、60~64歳における就労率は、男性が7割を超え女性も半数近くになっている。
 これらの傾向は男女共同参画の進展や高齢者雇用促進といったように好ましいもの
であり、今後も取り組まれるべきであろう。
 ただし、地域のボランティア活動の担い手という観点からは、あまり過度の期待は
できない実態は認識しておくべきであろう。

034

※次節に続きます。
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 筆者の指摘するとおりです。
(随分、柔らかい表現に抑えていますが)

経済成長には、労働力人口の減少を少しでも補うために、高齢者と女性雇用が不可
欠であることを上げ、その雇用促進がアベノミクスの再重要課題の一つとしています。
ですから、「互助」を在宅介護政策のひとつとして機能させようというのは、矛盾
です。

介護予防や自立した生活を高齢者に期待する「自助」。
これこそ個人差の世界であり、頑張ったら何かメリットを与える、というものでも、
怠ったら何かペナルティ、というものでもありませんね。
最近では、「介護予防」は、第三者が直接関わり、要支援レベルの感じで必須化・
政策化して、費用を掛けて行う流れになっています。
コストを掛け、いずれかかるコストの先送りをしているかの感覚で、私は受け止め
ています。

またボランティア不足などを嘆く権利はだれにもありません。
一億総活躍社会、女性活躍社会は、決してボランティアとしての活躍を期待しての
ことではなく、働き手、働いて収入を得る人を求めてのことのはずです。
変な言い方をすれば、ボランティアをしている暇は、ない、はずです。

もうひとつ。
自分がやれない、やらないことに関して、他人(ひと)がやらないことを責めるこ
となどできない。
というのが、わたしの価値判断基準のひとつ。
ですから民生委員やボランティア不足を嘆くこと、批判するコトなどできるはずが
ありません。
まして民生委員など、公的サービスとして公務員が担うべき社会福祉専門職務です
から。
お役人は、自分ができないこと、やりもしないことを、他人には平気で押し付ける
方々なんです・・・。

021

 

次回は、「施設あっての在宅介護」です。

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在宅介護――「自分で選ぶ」視点からブログリスト>>

「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して

「第1章 在宅介護の実態」
第24回介護離職の根本原因としての在宅介護
第25回:親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第26回:在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担
第27回:実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的
第28回:在宅介護が困難な場合の介護サービス付き高齢者住宅、サ高住
第29回厚生年金でほぼ賄える「サ高住」が理想
第30回:「小規模多機能型居宅介護」という名称自体、分かりにくい
第31回:(看護)小規模多機能型居宅介護事業は、小規模では成り立たない
第32回だれでも、どこでも、いつでもできる介護サービス事業か?

「第2章 家族介護の限界」
第33回:企業任せの政治、介護休業制度で介護離職を抑止できるか?
第34回:介護休暇制度を「介護休業制度」と呼ぶ矛盾
第35回:企業福祉と社会福祉の狭間で考える介護休業制度
第36回:パラサイトシングル介護者を生み出す親子関係の根深さ
第37回:介護虐待で考える、介護者・要介護者の人権
第38回:特養入所条件要介護度3以上で、待機高齢者はどうなった?
第39回:お泊り付デイサービスがグレー化するリスク
第40回:劣悪化する介護事業の原因の一端は、低所得高齢者政策の欠如に
第41回:住宅型有料老人ホーム事業がグレーからブラック化する前に
第42回:独居高齢者・高齢者夫婦世帯の増加で困難になる在宅介護・家族介護
第43回:国・自治体の介護行政無策のしわ寄せが介護事故・事件を招く

「第4章 在宅介護サービスの使い方」
第44回上がり続ける介護保険料。介護保険制度の基本を知る①
第45回:介護報酬・介護保険サービス料の基礎知識。介護保険制度の基本を知る②
第46回:要介護認定の仕組み・手続きと認定調査
第47回:要介護認定システムの客観性・信憑性問題による認定率格差と介護給付格差
第48回:要介護度レベルと認定方法の簡素化の余地がある介護保険法
第49回:ケアマネジャーが介護生活の質を左右する
第50回:生活援助サービスの短縮化・低下は已むを得ないか?
第51回:デイサービス、デイケア、ショートステイの利用法
第52回:介護サービスを受けるために欠かせない「地域包括支援センター」の役割
第53回:介護保険サービスの適用範囲、基準の難しさ
第54回:自費負担の介護保険外サービスが増えるのは、やむを得ない?
第55回:トラブルを避けるための介護サービスに関する「苦情」相談とコミュニケーション

「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人

「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題

第7回これからの混合介護のあり方を考える
第8回介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?

kai16

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