ポケGO!ではない、認知症GO!は仮想現実?:『もう親を捨てるしかない』から(13)
『もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない 』
(島田裕已氏著・2016/5/30刊)を紹介しながら考えるシリーズです。
「はじめに」
第1回:介護殺人?利根川心中事件が話題にならなかった背景を読む
「第1章 孝行な子こそ親を殺す」
第2回:家族による介護殺人事件への関心が薄れていく
第3回:減る殺人事件、増える介護殺人・心中事件、家族・親族間殺人事件
第4回:在宅介護推進政策は、介護殺人助長政策?
第5回:実刑判決も執行猶予判決も抑止力にはならない家族介護殺人・心中事件
第6回:先に人生を終える高齢者世代の介護と終え方の責任
第7回:介護生活未経験の方に知って頂きたいその状況
第8回:自宅療養・在宅介護は多くの人の希望か?財政面からの政策の持つ狙いと矛盾
第9回:在宅介護主義と地域包括ケアシステムに潜む疑問・課題
第10回:「親捨て」と「(成人した)子捨て」の相互関係
第11回:子との同居で親子共倒れになるなら、子を寄せ付けない「子捨て」を
第12回:今一度、認知症徘徊事故訴訟 最高裁判決から考える
と進み、今回は第13回。
-----------------------
第2章 日本人は長生きし過ぎる(2)
-----------------------
<家族が十分な介護をしていないと、徘徊老人の鉄道事故の責任を問われる>②
警察庁によれば、2014年における認知症の行方不明者は1万783人にものぼったという。
そのうち、およそ98%はその年のうちに所在が確認されたが、429人は死亡していた。
国土交通省によれば、認知症の疑いのある人間が線路内に立ち入って列車と接触する
などの人身事故は、2014年度までの10年間で、少なくとも134件起こっているという。
鉄道会社のなかには、会社側に原因がないと判断される場合には、個別の事情にかか
わらず原則賠償を請求するとしているところもあり、多くは、状況に応じて判断すると
している。最高裁判決は、こうした鉄道会社の判断にも今後影響を与えることになろう。
考えてみれば、街中を鉄道が走っているということ自体が恐ろしいことである。
走っている列車と接触すれば、人間はひとたまりもない。車だって破壊される。
しかも、踏み切りなど、遮断機が下りているだけで、容易に立ち入ることができると
ころは少なくない。ホームドアが設置されていない駅だけでも、高速で列車が通過して
いく。しかも、今の駅には階段やエスカレーターがあって、ホームがひどく狭くなって
いる。
これは、凶器が往来しているようなもので、鉄道会社は恐ろしい商売をしているわけ
だが、その点が問題視されることはない。徘徊する人間が立ち入れないようにするのは、
むしろ鉄道会社の責任ではないかと思えるが、今のところ、社会全体にその発想は乏し
い。
となれば、介護する側が自分たちで自分たちの身を守らなければならない。
だがそれは、容易なことではない。鉄道が走っていなかった明治時代以前なら、そん
な心配はいっさい無用だった。馬や牛といった、当時としては高速の乗物はあったかも
しれないが、鉄道ほど恐ろしくはない。
自動車だって、かなり減ったとはいえ、年間で4000人もの人間がその事故で亡くなっ
ている(もっと多かった年には、1万6000人を超えていた)。
現在、交通事故で亡くなる人間の多くを占めているのが65歳以上の高齢者である。
人口10万人あたりの死者数は、高齢者が他の世代に比べておよそ3.5倍にもなっている。
こうした点でも、家族が介護するということは、ひどく大変なことになっている。
大変どころではない、不可能なことになっていると言ってもいいのだ。
※次項に続きます。
-----------------------------------
言われてみれば確かに!
そういう内容ですが、では、そういう心配がない状態にする、戻す?となると・・・。
まあ、これだけ高齢者が多くなると、高齢者のために安全な別の社会、環境を用意する、
という方法を考えた方がよいのかどうか・・・。
高齢になるまでは、そうした利便性(の一部)を享受してきたわけですから、それらの
危険な存在・環境を否定することも難しい・・・。
しかし、交通事故は、子どもも多く犠牲になっており、その観点から、車は走る凶器と
も言われ、問題視はされ続けている。
しかし・・・。
いずれにしても、では、認知症の人たちが、自由気ままに暮らすことができる社会、空
間、条件を整え、開放する、などということは、とてもとても非現実的なこと。
(でもないのかなあ・・・ともう一度疑ってかかってはみても、やはり・・・)
ポケ(モン)GO! ではない、認知症徘徊GO! 以前なら、ボケGO!の社会・・・。
やっぱり仮想現実・・・、仮想非現実・・・、非仮想現実・・・、非仮想非現実・・・。
(やっぱり不謹慎?)
今かなりのスピードで、高齢者の(徘徊)見守りシステムが広がっている現実が、そこ
にあります。
これも見よう、考えようによっては、なんだかゲーム仕様的・・・。
(またまた不謹慎!)
そうそういろいろ考えても、いい知恵は浮かびません。
それだけにこそ、この章のタイトルにあるように「日本人は長生きし過ぎる」のであり
ます。
次回は、<年々延び続ける日本人の平均寿命>です。
--------------------------
【『もう親を捨てるしかない 』構成】
はじめに
第1章 孝行な子こそ親を殺す
第2章 日本人は長生きしすぎる
第3章 終活はなぜ無駄なのか
第4章 親は捨てるもの
第5章 とっとと死ぬしかない
第6章 もう故郷などどこにもない
おわりに
--------------------------
【島田裕已氏プロフィール】
1953年生。宗教学者、文筆家
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、
東京大学先端科学技術センター特任研究員を歴任。
^^^^^^^^^^^^^^^^^
(主な著作)
『日本の10大新宗教』『葬式は、要らない』
『戒名は自分で決める』『八紘一宇』
『0葬 ――あっさり死ぬ』『死に方の思想』