実現困難な理想としての介護サービスは一面、非人間的:『在宅介護』在宅介護の実態、から(4)

介護業界の方々と、介護者・要介護者、介護に関心をお持ちの方々に是非
ともお読み頂きたい書。
在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』(結城康博氏著・2015/8/20刊)

本書を紹介し介護問題を考えるシリーズを昨年掲載ブログを文末にリスト化。

2016年1月は、基本的な視点・課題に立ち戻っての
「第1章 在宅介護の実態」シリーズです。
第1回(24回):介護離職の根本原因としての在宅介護
第2回(25回):親の介護と愛情の持ち方、表現の仕方
第3回(26回):在宅介護を支える訪問介護・居宅介護サービス介護士の負担

今回は、第4回(27回)です。

「第1章 在宅介護の実態」
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 2.二十四時間型ヘルパーサービスの再構築(2)
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<厳しい経営状況>

一部を除いて多くの事業所では、再構築された24時間型ヘルパーサービスは、
経営状況が赤字体質で厳しいのが現実だ。
特に ①事業所の採算 ②新たなニーズの発掘 ③人員確保等といったハー
ドルが高く、多くの事業所がこの事業への参入には消極的である。
全国的な統計を見ても、当初の計画では2014年度329保険者(自治体)で、
これらの実施が予定されていたが、2015年4月末で296にとどまっている。

札幌市で同事業サービスを提供するある事業所を訪問(2013年3月)。
事業開始1年経つが、未だに黒字化されていない。
サービスの周知はだいぶされてきたが、採算面で大きな課題があるという。
基本的に登録人数が常時20名程度であれば、何とか黒字化できるが、施設
へ入所する人もいるため安定しないという。

特に、高齢者の家族は、①未だに夜中、他人に家に入ってもらうのを嫌が
る。 
②このサービスを使うと、包括払い(パック料金)であるため、
他のヘルパー事業を使うことが難しくなり、サービス利用が制限される。
以上のような理由で、家族は利用には消極的だそうだ。
ただし、利用している高齢者の満足度は概ね高く、いかに家族にサービス
の良さをにんしきしてもらいかが課題だという。

なお、冬の時期は札幌市内では車が渋滞することもあり、本来ならテレビ
電話で呼ばれて30分程度で駆け付けられるものの、60分程度かかったこと
もあったという。
しかも、高齢者の希望する時間帯が、朝、昼、夜と食事の時間帯に重なる
傾向にあり、派遣できるヘルパーが足りずに時間調整に苦労していると
いうことであった。

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こうなるという予想は十分事前にできたことですね。
誰が考えてもこうなる・・・。
こういうことを疑問もなく制度化するお役人は、現実離れした人々の集ま
りかと・・・。
こうした類の事業は、もしやるなら公共サービスとして、利益をある程度
度外視してやるべき・・・。
と断定すると、財政赤字問題がより大きくなる・・・。
そのジレンマですから、やはり公的な入居施設介護サービスに注力すべき。
そう考えます。

時間構わず、ヘルパーを依頼するということは、結局、家族も24時間体制
でいる必要があるわけです。
ならば在宅介護の意味がなくなってしまう。
とすると独居高齢者ならば向いている、ということになりますが、それなら
ば一層施設介護が合理的なはずなのですから・・・。

この話は、以下に続きます。

033

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<成功している事例>

全国的には数は少ないながらも経営面・利用者の満足度など、すべてに
おいて成功している事業所もある。
横浜市の「株式会社ゆい」という同サービス事業所へ(2013年5月)。

2000年介護保険制度創設から24時間対応型の訪問介護を持続させ、他の
事業所が撤退している状況下でも継続してきた。
また、小規模事業所であっても、地域に密勅した介護事業所であるよう
心がけ、在宅介護の拠点的な機能を果たせるように努力してきたという。

登録者は、常時30名前後であり経営的にも黒字化されている。
利用者の大部分は独居高齢者または老夫婦世帯で、二世代もしくは三世
帯家族は少ない。
在宅で最期まで暮らしていきたいという独居高齢者にとって満足度も高
いということであった。

このような数少ない成功している事業所の場合、10年以上旧来の24時間
型の訪問介護(ヘルパー)サービスを提供してきたという実績もあり、
成功するには地域との関係も密であることが重要であろう。

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やはり、独居高齢者か老齢夫婦に限られるとのこと。
ふと、そうした場合、看取り、最期はどうなるのだろうと思います。
やはり、高齢者の公営集合住宅があれば、と考えます。

いずれにしても24時間サービスを提供し、黒字化するためには、ある程
度狭い地域で、一定数以上の利用者を確保できることが最低条件になる
かと思います。
しかも、信頼関係を形成するためにはある程度時間がかかります。
理想は分かりますが、現実味を欠いた理想は、実現すべき形ではありま
せん。
ここでの筆者のはっきりした意見がないのが気になります。

在宅介護の限界性や、本来の意味での人間性についての認識と十分な配
慮が必要と考えます。

次回、「3.サービス付高齢者住宅」に続きます。

鍵
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在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』から、これまでのブログリスト>>

「序章」
第1回:『在宅介護』は、介護業界と介護に関わるすべての方々にお薦めしたい図書
第2回:家族構成の変容が、家族による在宅介護を困難に
第3回:変わりつつある、介護施設・在宅介護への認識
第4回:結城康博教授の、これからの介護のあり方への提言に期待して

「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」
第5回:多重介護、年金受給額差、高齢者間経済格差にみる介護問題
第6回:介護保険制度と年金制度運用方法をめぐる課題

第7回これからの混合介護のあり方を考える
第8回介護事業の性質から考えるべきこと
第9回:介護事業がFCビジネスに不適な理由
第10回介護保険料・公費負担・自己負担増。介護保険制度と財源めぐる課題
第11回福祉循環型社会システムは景気回復につながるか?
第12回複雑化する介護保険制度をシンプルに
第13回:地域の実情に応じた在宅介護・施設介護政策の必要性
第14回:介護制度コストと介護職賃金は社会投資か?

「第7章 介護士不足の問題」
第15回:介護士有資格者の大半が潜在介護士化する現状
第16回:介護職員初任者・介護福祉士。介護士資格・キャリアパス課題
第17回:福祉系学卒者のキャリアパスと介護業界の責任
第18回:介護職は人生設計上適切な選択か?学生にとって厳しい現実
第19回:失業者・新卒者・潜在介護士。介護業界が自ら変わるべき課題
第20回:外国人介護士候補者・希望者の受入れを国・自治体・業界上げて
第21回:元気な高齢者が介護業務を補完する
第22回:高齢者介護士活用のポイント
第23回:他産業との賃金格差、人材不足をだれが、どう解決するか?

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