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2000年施行の介護保険制度の意義を再確認する:『東京消滅-介護破綻と地方移住』介護保険制度は持続可能か?より(1)

人口減少と少子高齢化、超高齢化に伴う諸相を分析・予測して昨年ベストセラー
になった『地方消滅』。

その一つの断面を切り取り、やはり話題となった、東京等首都圏の要介護
者問題予測から、高齢者の地方移住促進提言。
その新刊が、2015年12月に発刊されました。

東京消滅 – 介護破綻と地方移住』(増田寛也氏編著・2015/12/20刊)

東京・首都圏の介護問題と地方との関連を確認しながらこの書を紹介し、
介護問題を考えていくことにしました。

本書の構成は
第1章 東京圏高齢化危機の実態
第2章 介護保険制度は持続可能か?
第3章 東京圏高齢化危機を回避するために
第4章 全国各地の医療・介護の余力を評価する
第5章 ルポ・先行事例に見る「生涯活躍のまち」
対話篇1 高齢化先進国として何ができるか
対話篇2 杉並区はなぜ南伊豆町に介護施設を作るのか
対話篇3 高齢者の住みやすい町はどこにあるとなっています。

まず、初めに、第2章の「介護保険制度は持続可能か?」を紹介し、
介護保険制度面から見た持続可能性について問題と改善・解決法を
考えることにします。

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 第2章 介護保険制度は持続可能か?(1)
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<介護保険の意義と2025年問題>(1)

急速に進む高齢化はわが国の都市と地方のあり方にも大きな影響を与えつつ
ある。
これまでは主として地方における高齢化問題がその地域の自立維持や活性化
と絡めて議論されてきたが、都市部においても高齢化は深刻な影響を及ぼし
つつある。
日本創生会議・首都圏問題検討分科会(以下、創生会議とします)が2015年
6月に提言した「東京圏高齢化危機回避戦略」(第1章及び第3章)は、まさに
このことを明らかにし、警鐘を鳴らしたものである。
この提言と創生会議が2014年に示した「ストップ少子化・地方元気戦略
(書『地方消滅』)を併せて考えると、戦後70年の間に形成してきた東京圏
一極集中型の国土構造からの転換を図ることが、わが国の長期的な持続可能
性にとって不可欠な選択肢であることがわかる。

第1章では東京圏での医療・介護需要の急増とこれに対応する供給側のキャ
パシティ不足が問題意識の発端にあった。
とりわけ、介護に関しては介護保険制度が持つ財政的な課題を併せて考慮す
ることが欠かせない。
ここでは、介護に関する課題に焦点を当てて議論を進めていきたい。

介護保険は2000年4月から開始された最も新しい社会保険制度である。
介護をめぐっては、古くは有吉佐和子の長編小説『恍惚の人』によって家族
介護の難しさが世に広まり、さらには介護を必要とする高齢者の急増ととも
に、「老老介護」の増加や同居する家族の負担拡大など、介護に対する仕組
み作りは長年の課題であった。

介護保険が制度化される以前は老人福祉制度などで対応してきたが、1980年
代後半以降、施設整備や在宅福祉の推進などを目的に「ゴールドプラン
新ゴールドプラン」を策定するなど政府も様々な対応を行ってきた。
しかし、利用者にとって選択肢の限られていた老人福祉や介護を理由とする
長期的な入院(いわゆる社会的入院)が生じやすい老人医療制度では十分な
対応が難しかった。
1997年に成立した介護保険法は、介護の担い手を家族から社会へ広げるとと
もに、社会保険の枠組みで権利としての介護サービスを受けられる体制を整
えたという意味で画期的なものであったと評価できる。

この間、高齢化の進展も急速であった。
高齢化の指標を見ておこう。
65歳以上を高齢者とする定義が一般的であるが、国勢調査によると65歳以上
が総人口に占める比率は1990年の12.1%から2010年には23.0%まで上昇して
いる。
介護保険制度では65歳以上を第一号被保険者としており、基本的にはこの第
一号被保険者が介護保険制度を受ける対象となる。
介護保険制度が開始された2000年では65歳以上人口は2201万人であったが、
2013年までは3190万人までおおよそ979万人の増加となっている。

しかしながら、介護保険制度を考える際には75歳以上人口を念頭に高齢化を
考える必要がある。
75歳以上人口が総人口に占める比率は1990年では4.8%に過ぎなかったが、
2000年に7.1%、2014年には12.5%まで急速に上昇している。
現在、介護保険給付を受ける要介護認定者(要支援者含む)のおよそ85%は
75歳以上の後期高齢者であることからも、高齢化の深化は医療サービス以上
に介護サービスに対する需要を増やすと考えられる。
(略)75歳を迎える頃から男女ともに自立度が低下するという研究もある。
高齢化の深化はさらに進むことから、介護へのニーズはますます高まること
になる。

2025人口グラフ


2000年の介護保険制度の開始以降、要介護認定者は急速に増加している。

認定者数は制度開始の2000年度末では256万人(うち65歳以上は247万人)
であったが、2013年度末には584万人(うち同569万人)とおよそ2.3倍に
急増している。
介護給付を受けられる者は主として65歳以上の第一号被保険者に限られる
が、この間、65歳以上人口は989万人増加しているものの、比率でみると
およそ1.4倍の増加にとどまっている。
この比較からも要介護忍耐者数の増加速度が速いことがわかる。

要介護認定介護者数の増加の背景には、高齢化の深化も大きく寄与してい
るが、一方で介護サービスを受けやすくなったという要因もある。
その意味では行政が利用できるサービスを決定するなど利用者にとって
選択肢が限られていた旧来の高齢者福祉の課題が克服されたと考えても
いいだろう。

同時に忘れてはならないのは、介護サービス市場の拡大である。
制度が整っていても、サービスを提供する事業者が増えない限り、これだ
け介護保険制度が進展することはない。
近年では、介護を必要とする高齢者を送迎するサービス提供者の車をよく
見かけるようになった。
また、ニチイ学館、ベネッセ、セコムなど他業種からの介護市場への参入
も増え、かつ大きなシェアを握るようになっている。
まさに需要が供給を生み出したといってもよいだろう。
成長産業の一つとして介護市場が注目されるようになったのも介護保険
制度の創設が契機であったと言って過言ではない。

しかしながら、介護サービス利用の拡大とサービス提供者の増加が今後も
順調に進むかと言えば、そう簡単なことではない。
ここに介護保険の持続可能性を難しくしている問題点が潜んでいる。
すなわち、介護保険財政の急膨張と介護サービスの担い手不足である。
今後、高齢者の絶対数は増え続ける。
国立社会保障・人口問題研究所の人口予測によれば、65歳以上人口は今後
も増加し2042年に3878万人でピークを迎える。
ただし、75歳以上人口は、さらに早く2030年に2278万人でピークを迎える。
これに大きく影響しているのが団塊世代であり、2025年には団塊世代すべ
てが75歳を超えることにある。
いわゆる2025年問題であるが、いかに介護保険制度がこの2025年問題を
クリアできるかが焦点である。

K1
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転載文が長くなってしまいました。
初回で、問題の根本であるため、この節の全文を紹介しました。

「2025年問題」といっても、その年だけに問題が集中し、そこをクリアす
れば問題がなくなる、というものでは、当然ありません。

そこに至るまで、問題は拡大し続けますし、その後も問題が長く続きます。
平均余命がまだ伸びる傾向があるだけに、2025年で打ち止めではなく、ま
た困難さが一段高くなるという認識が必要です。

その問題を少しでも事前に解消することができるか、あるいは改善できる
目途をつけることができるか・・・。

昨年2015年12月初め、緊急対策としてまとめられた新・3本の矢における
介護離職ゼロ」化政策は、この書での問題認識には触れられていないに
等しいと思われます。

現内閣寄りの日本創生会議の報告・提言であるがゆえに、2000年に施行さ
れた現状の介護保険制度についての意義を評価する側面が強いのはやや気
になるところです。
しかしその評価は、当たっている部分もあり、否定することはできません。
問題は、その施行からすでに15年以上経過しているにも拘わらず、問題が
縮小する気配がなく、大きくなっていく傾向が顕著であることです。

この後、増田氏がどうこの問題に切り込めるのか・・・。
そう大きな期待は持てないのですが、少しでも納得のいく提言・提案があ
ることを期待したいと思います。

025

次回、<急膨張する介護保険財政>、に続きます。

 

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