2015年1~4月、老人福祉・介護事業者倒産件数過去最多ペース:小規模介護事業継承に警鐘

<2015年6月10日付日経MJ参考>

東京商工リサーチの調査によると

◆2015年1~4月、4ヶ月間の老人福祉・介護事業の倒産件数が31件で
前年同期比63.2%と大幅な増加を記録。

◆これは、2000年介護保険法施行以降では、過去最多ペース。

◆負債総額は34億3300万円(21.3%増)
その内、5千万未満が21件で倍増と、小規模企業の倒産が特徴的。

◆事業内容別では
<訪問介護>が12件、「通所・短期入所介護」が11件で
どちらも前年同期よりも大幅に増加。

◆設立5年以内の事業所が6割超で、新規参入組の倒産が目立つ。

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これまで、このブログでも
中小規模の介護事業が、競争の激化とマネジメント(経営能力)の弱さ、
人材確保の難しさなどから、事業の維持存続、経営が難しくなることを
書いてきました。

それが現実に起きていることを示しています。

社会福祉事業ということで、社会のお役に立ちたいというある意味
純粋な気持ちで参入した方も多いかと思いますが
一方で、介護サービス報酬が、介護保険で保証されている(ように
見える)から、そこそこは儲かる、食べていけるくらいは稼げる、など、
あまり事業経営という次元で考えることなく事業を始めた方もいらっしゃる
のではと、考えることもあります。

確かに施設も不足する状態が今後も続くかもしれませんが、
訪問介護や通所介護を単一の事業として営むのは、事業規模を考えると
競争も激しく、厳しいことを再度強く認識しておく必要があります。

これらの事業では、フランチャイズ事業化が進み、かなりの事業者が
フランチャイジー(加盟者)として参画・参入しています。
そこで最も重要なことは、介護職員の質と必要な人数を確保・定着・育成し
生きがい・働きがいを自事業所で持ちづけ得るようにすることです。

サービス内容やサービス方法、利用する設備機器、料金体系などは
マニュアル化・標準化されており、簡単に事業ができそうですが、それらは
すべて人・介護スタッフが行うのです。
⇒ 介護FCビジネスで拡大する異業種からの介護事業参入:人材、地域密着、その可能性と問題点

またM&Aの件数が増加していることも
今回の倒産件数が増加している状態と重ね合わせることができます。
⇒ 2014年介護事業M&A 過去最多!異業種からの参入目立つ
⇒ M&Aによる淘汰が進む介護業界へ:セントケアHDが秋田県の「虹の街」の全株式を取得

人がすべてを決めるのです。
そして経営者がそのすべてにおいて責任をもつのです。
人としての魅力を備えた経営者が、素晴らしい介護スタッフを採用・育成し
顧客の支持を継続して得ることができる介護サービスを提供する
経営・組織づくり・・・。

事業経営者のみならず
それぞれの事業所で日々ご努力頂いている介護スタッフの皆さんも
介護事業のあり方にも関心をお持ち頂きたいと思っています。

⇒ 介護福祉士の賃上げとその先:誇りとやりがいを持つことができる資格・仕事に!
⇒ 介護労働力不足改善策、3つの提案を考える:日経・経済教室4/6付<社会保障改革の視点>から

また自宅を改修するなどして
家業的にこじんまりと介護サービスで世の中のお役に立つ仕事をしたい
と考えて事業を営んでいる方、これから始めようとなさる方も
いらっしゃるでしょう。
その場合では、やはり一度事業を始めたら、休むこと、やめることができない
ということを認識し、どうやって継続・継承していけるか
健康面、資金面、介護スタッフ、事務管理など考慮し、着実に基盤を作って
行って頂きたいと思います。

 

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なお、東京商工リサーチのサイトで
日経MJ紙の記事について何か投稿されているか確認したのですが
(会員ではないためですが)見ることはできませんでした。

しかし、本件とは別に、2011年のコンプライアンス倒産に関する
データとレポートがありました。
要約しますと

「2011年のコンプライアンス違反倒産153件の産業別では、サービス業他が46件で最多。
その内、5件の福祉・介護業界が目立つ。
これは先行投資に対し市場拡大が想定より遅れたことから経営不振に陥り、
介護報酬の不正請求などに手を染めたケースが多い。
より倫理観を求められる業界に安易に参入した警鐘とも言える。」

という興味深い内容でした。

今回の日経MJの記事では、倒産原因には触れてないため分かりませんが
その中には、不正受給による認可取り消しを要因とするものも含まれている
かもしれません・・・。

※参考ブログ
⇒ 介護報酬の架空・不正請求の背景と課題:介護事業の諸問題-3

業界の望ましい成長発展と
そこに働く方々の苦労・努力が報われることを心から願っています。

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