デンマークの認知症事情を知る:『老い方上手』「認知症400万人時代」から-2

老い方上手』(WAVE出版)というとても良い本を今読んでいます。
5人のベテラン女性が、それぞれご専門分野をテーマにした著作です。
早稲田大学市民講座のオープンカレッジでの輪講をベースにした図書。


印象深かった内容を、別のブログも活用して少しずつ紹介していきます。

大熊由紀子さんによる認知症についての2回目。
「海外事情」の記述からです。
1回目はこちらです
認知症をめぐる5つの誤解:『老い方上手』 「 認知症400万人時代」大熊由紀子さん著から

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【海外の認知症事情(1):デンマーク】

高齢化の先輩である北欧、西欧に出かけたおり
「寝たきり老人」という日常語がどこの国にもないことに驚き
その理由を調べ始めた大熊さんは、こう言っています。

(日本のある場面)
日本では、悪気はなくても、おヨメさんと呼ばれている人が「寝かせきり」
にしてお世話をしてしまいます。
長男のお嫁さんは疲れ果てていて、一方たまに小姑さんが元気溌剌として
お土産なんかえお持ってくると、おばあちゃまは喜ばれます。いいケアを
すればするほどご本人は長生きされて、オヨメさんの人生がなくなっていき、
そして遺産は小姑さんの方に行ってしまう。家族の揉め事が起こります。
これは日本型福祉政策が生んだ悲劇の「その2」です。
「その1」というのは、心ならず老人病院に入れられ寝かされている
ご本人の悲劇です。

<デンマークの事情>
市町村や現場に権限と責任が下ろされていて、入院中から退院後のプランが
立てられます。
ヘルパーさんは、「目は離さないけれども手は出さない」というプロの訓練
を受けています。
また「訪問ナース」という司令塔がいて、入院したときから、退院後、車いす
でも外出や料理ができるように住宅改造なども含めて手配していました。

生活の節目節目に現れるヘルパーさんは「おむつを取り替える人」ではなく、
その人の誇りをふくらませるプロと位置付けられていました。
ヘルパーさんの脂質としては、「同じことを何度いわれても受け止められる」
「ユーモアのセンスがある」などが大事にされているのです。
お給料は、月々。税込みで48万円ぐらい。そのかわりお医者さんたちの
給料が低い国なのです。(ただし、労働時間が日本より短い。)

自己資源バスケット」という考え方がデンマークでは大切にされています。
たとえば、「手足が不自由」「自分でお風呂にも入れず、食事を作ることも
できない」などに着目するのではなく「自分で食べることはできる、ニンジン
の皮を剥くことができる」など残っている自己資源に着目する思想です。

「高齢者医療福祉政策3原則」

この流れを辿ると、1982年にデンマークの自治体行政と経済学の教授の
ベント・ロル・アンデルセン(アナセン)さんが中心になって作られた
以下のこの3原則にたどりつきます。

1.人生の継続性の尊重:
風光明媚だけれど人里離れたところに、どんなぴかぴかな建物を作っても
人は幸せになれないということです。

2.自己決定の尊重:
自分の人生は自分で決めるということです。
家族会議で老人病院に入れることを決めたとか、行政がどうというのでは
幸せになれないからです。

この2つをしっかりすると
3.自己資源の尊重:
が発揮されることになります。
たとえば、右半身が不随でも左半身を、首から下がまったく動かなくても
首から上でいろいろなことができるというように、その方の持っている
能力を発揮できるようになります。

北欧の福祉というと、スウェーデンが有名ですが、こと高齢者福祉に
ついては「デンマークに学ばなければならない」とスウェーデンの
専門家もいっています。

※以下、次回に

外人3世代
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医療看護のための病院とケア(介護)のための施設の状況がどうこう
という記述がないので、すべてを介護・認知症問題としてストレートに
受け止めることはどうなのかな?
という気はしますが、看護・介護を必要とする「人」に対するスタンスが
明らかに違うことには、強いインパクトを感じます。

もう一つ
介護・看護をする立場の人でなく、受ける方の個々人のメンタリティの
違いが根底にあるのでは・・・。
日本と海外の事情を比較するとき、そこも見ておく必要があるのでは・・・。
具体的にどんな?と言われると的確に応える自信はないのですが・・・。
そう思います。

自立心とエゴの境目、理性と感情の線引・判断基準が、微妙に違うのでは?
また現実的な運用を可能にする福祉財政と関連する包括的な税制の違いも、
無視できない要素であることも・・・。

ただ本質的には、これらは人に対する根源的な考え方・思想とは切り離して
考えるべきであり、大熊さんが紹介なさっている内容・思想こそ重視すべき
ことは言うまでもないと思います。
胸にずしりと響くものがあります。

仮に私が、<受ける側>である場合のメンタリティはどうでしょう?
権利として考えるか、自分の意志・意欲を第一義とするか、
あるいは、「申し訳ない・・・」というエモーショナルな部分を払拭できず
それが判断と行動のもととなる・・・。
後者の方が近いような気がしています・・・。

杖
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【大熊由紀子さんプロフィール】(同誌より転載)
国際医療福祉大学大学院教授。専門は医療福祉ジャーナリズム分野。
福祉と医療、現場と政策をつなぐ「えにし」ネット・志の縁結び&小間使い。
<著書>:『「寝たきり老人」のいる国いない国-真の豊かさへの挑戦』
『恋するようにボランティアを-優しき挑戦者たち』
『物語・介護保険-いのちの尊厳のための70のドラマ』上下2巻ほか。
⇒ http://www.yuki-enishi.com/

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今までこのブログで書いてきた「認知症」に関連するブログは
以下の通りです。
今後も継続して、考えていきます。
認知症とは:原因・症状、対症法、介護問題など認知症の基礎知識(日経「知っ得ワード」から)
認知症の社会的費用推計の活かし方:医療・介護費削減とインフォーマルケアコスト増政策用調査にならぬよう
公文と自治体、脳活性化プログラムの認知症重症化防止で成功報酬:他分野でも補助金から成功報酬制へ
「認知症ケア専門士」 資格制度・試験内容と仕事の意義

 

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