介護マンガ『ヘルプマン!』第5~第7巻【介護支援専門員編】(1):ケアマネジャーの仕事がわかる!

介護マンガ『ヘルプマン』の第5巻~第7巻の【介護支援専門員編】は、
イブニング連載の、第5巻が2005年15号~24号、第6巻が2006年1号~9号、
第7巻が10号~21号を各々収録した単行本。
ですから、ほぼ1年半を費やして、ケアマネジャーの視点で、
介護制度・介護業界・介護現場の問題を追いかけているわけです。

ここでの【介護支援専門員編】での主人公は、
百田百太郎と同時に高校を中退し、自ら強い意志を持って介護業界に
飛び込んだ、高校の友人、神崎 仁
彼が、介護支援専門員=ケアマネジャーの資格をとり、
その仕事で矛盾や問題に突き当たりながら、現場での対応・改善に努める在りさまを、
この第5巻から第7巻までの3巻で描いています。

各巻のあらすじは、後回しにして
今回は、第5巻の巻末に掲載されている特集部分を紹介します。

題して
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[『ヘルプマン!』でわかる介護保険とケアマネージャー!!]
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《 ケアマネージャーってなに!? 》
介護支援専門員。
介護保険制度創設(2000年)とともに作られた職名。
介護サービス計画(ケアプラン)の作成や管理(ケアマネジメント)
を担当し、通称ケアマネージャーと呼ばれる。
都道府県が行う試験に合格した者に資格が認定される。
「居宅介護支援事業所」等に雇用され仕事をすることができる。

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《 ケアマネージャー神崎仁プロフィール 》
介護保険制度がスタートした2000年に高校を中退し、
19歳で介護の世界へ飛び込む。
特別養護老人ホーム「あいらんど」、
介護者老人保健施設「らぶらんど」で介護士としての経験を積み、
6年後にケアマネージャーに。
介護の世界・問題を身をもって思い知らされた仁は、日本の介護を
変えるべく、ケアマネージャーの道に進む。
多忙を極める仕事のため、プラーベートがなく、彼女もいない
のが悩み。

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《 ケアマネージャー神崎仁のハードな1日を追跡取材!
すべて見せます。徹底取材 》

居宅介護支援事業所「愛ワーク」でケアマネージャーとして
活躍する神崎仁。
毎月40件のお客様のケアプランを担当する。
毎日フル回転で多忙な日々を送る彼の1日を追ってみました。


<START 9:15~>
週に2日間、お客様のご自宅を訪問。
一日に回る軒数は平均5~6軒。
ご本人、お客様、ヘルパーさんとお話をして、お客様の健康状態、
サービスの見直し、問題点の有無などをチェックします。

<Aさん宅訪問 9:50~>
ひとり暮らしをしている要介護1の女性Aさんはゴミだらけの部屋
に居住。とても不衛生なのだがヘルパーの手を借りるのを嫌がる。
介護されることで、遠方に住む娘とのコミュニケーションがなくな
ることを恐れている。
(仁の行動)
地域のヘルパー事務所に電話連絡。Aさんとヘルパー契約を結んで
もらうよう相談する。しかし契約を結んでも、実際にヘルパーを
利用しようとしないため、再三契約破棄に。問題ケースの一つ。


<I さん宅訪問 11:00~>
要介護2の夫と、寝たきりの要介護4の妻の2人暮らし。
住宅内全体に段差が多く転倒を防ぐための住宅改修の必要性がある。
老老介護ならではの問題を指摘するが、本人たちに老化の自覚が
あまりなく地域ボランティアを活用しようとしない。
(仁の行動)
部屋の構造を確認し、住宅改修の必要がある部分をチェックする。
物忘れがひどくなっている夫や寝たきりの妻の安否確認のため、
地域の配食サービスの使用を検討する。

<Kさん宅訪問 12:00~>
外に出たがらない親を外出させたいと自らケアプランを作成。
プロの意見を求めて仁に相談を持ちかけた。
(仁の行動)
救急車も通れない細い急坂を登ったところに立つ一軒家。
外出したがらない理由の一つと思われる。体を動かせるような
プランを検討する。

<Wさん宅訪問 14:00~>
嫁が姑を介護している状況。嫁はデイサービスなどを利用し、
介護から開放される時間が欲しいのが本音だが、姑の手前言い出
せない。そのため限度額いっぱいまでサービスを利用できるのに
もかかわらず利用していない。
(仁の行動)
介護する側の苦労や疲労が、過度のストレスを生むことをよく知
る仁は、限度額いっぱいまでサービスを利用することを勧める。

<Tさん宅訪問 16:00~>
週耳の不自由な独居老人Tさん。テレビを見ることだけが唯一の
楽しみなのだが、テレビの音を大きくしなければ聞こえないため
に近隣住民から騒音による苦情が上がっている。
(仁の行動)
騒音被害の問題解決のため、地域ボランティアに協力を仰ぎ、
Tさんの趣味である釣りを勧めることを提案。愛ワークのサービ
スには盛り込まれていない「釣り」だが、地域ボランティアと
いう手段で、Tさんの外出意欲を高めた。


<17:00~ 徹夜>

留守中に連絡のあったお客様やヘルパーさんからの伝言をチェック。
訪問先での問題を解決するため、ケアプランの変更や作成をパソコン
に入力。その他、依頼された様々な要望をまとめ、手続きを行う。
帰社すればしたで、問題山積。
ケアマネージャーに休息はない。

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なかなか、ケアマネジャーさんの仕事は、実際に介護に縁がない限り
イメージが湧かないものです。
上の、仁の1日の仕事で、かなりイメージがつかめると思います。

このケアプランの変更は、利用するサービスを提供する事業所との
連絡・交渉などが絡むため、簡単にできることではありません。

そうした仕事上の性質などが考慮され、ケアマネジャーが担当できる
要介護者などの人数が介護保険法で定められているわけです。

ケアマネジャーが担当し、居宅介護支援費として請求できる
居宅介護支援の件数と介護予防支援の受託件数が、
1人あたり39件(介護予防支援は1/2換算)を超えると
すなわち40件以上の場合に、居宅介護支援費が逓減される仕組み
があります。

個人的には、一律に規定することが適切かどうか、疑問はありますが
制限がないと悪用されたり、サービスの質の低下やトラブルが発生する
ことは間違いないでしょうから、性悪説前提の規定はやむをえないで
しょうか・・・。

2000年のわが国での初めての介護保険制度導入以来、この『ヘルプマン!』
が、その実態を追いかけ続けてきていたわけですが、2006年の制度改定を
控えて、これまでの問題に鋭く切り込み、その改定内容の問題も事前に
提起するのが、この第5巻から第7巻までのテーマとなっています。

次回は、もう1回、第5巻の特集で取り上げている、当時の制度の問題の
指摘内容を紹介しようと思います。

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