介護マンガ『ヘルプマン!』 第8巻【ケアギバー編】あらすじ:今も変わらない外国人ヘルパー問題

介護マンガ『ヘルプマン!』の第8巻【ケアギバー編】は、
イブニングの2006年22号~23号、2007年1号~7号に連載されたものを収録し、
2007年5月23日に単行本として発行されました。

この【ケアギバー編】は、
百田百太郎神崎仁も登場しません。
テーマは、外国人ヘルパー問題とサラリーマンの親の介護問題。
その2つの問題を絡ませたストーリーで
以下の構成となっています。

 

第8巻のあらすじは、以下の通りです。

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<第74話>:核家族
中堅企業で課長職を務める小宮(49歳)が、部下から3ヶ月の介護休暇の申請
を受けたある日帰宅し家にいると、
実家で次男が面倒をみているはずの母親が玄関に立っていた。
おむつや身の回り品に、弟夫婦の「もうこれ以上うちでは面倒見きれません」
というメモ書きが添えられて・・・。
事情がわからず、小宮は母を乗せ、車を走らせて着いた実家はもぬけの殻・・・。

<第75話>:家族会議
共働きの小宮の妻(46歳)は、化粧品会社の販売事業部主任で企画などで忙し
い日々を送っている。
翌日小宮は、会社を休み、デイサービスなど介護の手配に追われるが、認知症
の母の異常な行動に振り回され、週末の面倒見をどうするか、20歳で専門学校
生の一人娘を交え3人で話し合うが、それぞれの都合を主張してまとまらない。

<第76話>:ケアギバー
母のトラブルで始まった朝、少し遅刻してきた介護士(ケアギバー)は、
フィリピン人女性古田ジェーン。夫婦は不安気に出勤するが・・・。
二人が帰宅すると、妻の洋服やアクセサリーを身に付け、化粧した母。
台所も母が料理をしたのか散らかしたまま・・・。
妻は激怒する。

<第77話>:親疎
どうしても日本人ヘルパーに替えるよう主張する妻の言うことを受け入れざるを得ず
ケアマネに申し入れする小宮だが、外国人であることを理由にすることに疑問を感じる。
実際には、ジェーンは母に馴染んでいるように見えたから・・・。
交替要員で事前に下見に来た日本人ヘルパーの専門的な、馴れた対応にホッとするが・・・。
その時、ジェーンが、訪問し、なぜ自分がやめさせられたのか、(派遣身分の自分は)
フィリピンパブに行かされると泣きながら抗議する。

<第78話>:差別意識
抗議するジェーンの話を聞き、母が馴染むジェーンの明るい性格と家族を思う純粋な
気持ちに、自分の偏見や間違いを認める必要があるかとも思う小宮。
ジェーンの派遣元の責任者は、能力や性格を求めつつも、ちょっとした失敗や苦情で
外国人はダメ!と断定する日本人の感覚・受け止め方の問題を彼女に説明する。
落ち込むジェーンは、家に戻り、フィリピンに帰ると嘆くが、学校で褒められたと
母に話す一人娘の美子に励まされ、元気を取り戻す。
排泄物を苗に見立てて田植えする母を見て、小宮はその行動の真意を知り、思わず笑
っていた・・・。

<第79話>:崩壊
急に翌日の専務の出張への同行を上司から依頼された小宮。
なんとかケアマネとヘルパーに対応を依頼するが急なことと母の徘徊等が
ひどく、翌日のデイサービスはもちろん在宅サービスの継続さえも難しい
と拒否されてしまう。
妻と娘になんとかできないか家族としての協力を頼むが埒が行かない。
妻の部屋や身の回り品などを散らかしひどくなるばかりの母を、施設に入
れることを妻は求め、大事な仕事が片付くまでは家に戻らないと出て行っ
てしまう。
上司から連絡のない小宮に対して留守電が入っていたが、振り回されるため
返事もできす、とうとう専務からは、「もう来なくていいから」の留守電。
自分がやったことも事情もわからない母は、愕然とし力を落とす息子を気遣
い、子供時代の対応同様、「万病の薬だから」と梅干しを差し出す。

<第80話>:人の絆
子供時代の母とのやりとりを思いだし、母の変わっていない部分を認識した
小宮は、ジェーンに再度来てもらえないかケアマネに電話する。
家を飛び出した母は、近くの公園でジェーンの娘美子と、迎えに来たジェー
ンと会う。
派遣事務所にジェーンと一緒に行った小宮は、ジェーンの派遣を依頼。
担当者は、外国人介護士の適性や良さを説明するが、結論として、「ノー」
と伝えた。

<第81話>:人材不足
ひとつの小さな失敗が、外国人介護士すべてが悪いと評価されてしまうリス
クを持つことからジェーンを派遣できないこと。外国人介護士を増やすとい
う政府の政策も形だけのことで、実際は現状・現場とは乖離した異なるもの
と説明する担当者。
だが、ジェーンと母が楽しそうにし、小宮を巻き込んで明るく振る舞う様子
に自分の姿勢や取り組みを変えようと決意し、頼み込んでジェーンに来ても
らうことにした。
会社では、親の介護の経験を持つ専務から、事情を汲んでもらい、一人で思
いつめないようという言葉を貰ったことも力になった。

<第82話>:空転
もう一度妻と話をと思いちょうど電話したところに、気にはしていた妻が
家に一端立ち戻った。
しかしジェーンがまた来ていることを知り、仕事でも部下のミスから問題が
起きている電話が入り、自分の意に反して行動する夫に対して逆上。
それを見た小宮は、勝手を言ったことを妻にわび、自分が会社をやめて実家
に戻り、母の面倒を見ると申し出る。
決して義母を捨てる気などなかったと思う妻。自室にジェーンが妻宛に、
これまでの詫びと自分の素直な気持ちをたどたどしい日本語で、記した手紙
を読み、涙を流す。
「好きで打ち込んできた仕事のはずなのに・・・、ただ毎日イライラして
いるだけで・・・、作ったものは家族との溝だけ・・・!?
異国人でさえ付き合っていけるお義母さんとの関係もはなから断ち切ること
ばかりに懸命で・・・」

<第83話>:冷然
新しい気持ちで義母・祖母との朝を迎えた小宮家。
近くのグランドで子どもたちがサッカーに興じる中、母は鍬をもち、グラン
ドを畑と思い、耕す行動に。
見守るジェーンは、雑草を取るからと場所を移して邪魔にならないからと頼
む。
汚い、邪魔と排除しようとする子どもとその父兄に対してジェーンは主張する。
「ユエサンオ年寄リ、危ナイ当タリ前、ユエサン何モ悪クナイ!!
アナタガ気ヲツケル、ミンナガ気ヲツケル当タリ前!
フィリピンジャオ年寄リ一番!オジイチャン、オバアチャンイタカラ
パパモママモワタシモイルノ!!
ユエサンワタシノオ婆チャン、ミンナノオ婆チャン、ミンナファミリーヨ!!」

つかの間、静かな時間が流れ、子どもとその母がお婆ちゃんに話しかけ、
気持ちが
通じ合う言葉が流れる・・・。
「子どもは宝だ。みんないい子だ、陶が楽しみだ。
長生きはしてみるもんだねぇ・・・」

ジェーンと家に戻ると、実家と母を見捨てた次兄夫婦が玄関先で待っていた。

<第84話>:親和
家に連れ戻ると弟夫婦
老人ホームに入れることにしたと話す小宮。
二つの家庭はそれぞれ自己主張するが、ジェーンは、自分の家が良いという。
自分も帰りたいけど今は帰れないというジェーンに対し
小宮の母は、(ジェーンの)
「お母さんは大丈夫。あなたの気持ちは全部わかっていますよ。
あなたさえ元気でいてくれれば自分はどこで寂しく死んだっていいの」
「母親とはそういうものなのよ・・・」

母は実家に戻り、小宮家はもとの生活に戻ったが、心の持ちようと
家族の絆は、少し変わっただろうか・・・。

「あれからジェーンさんはどうしているだろう・・・」
「あの・・・異国の老人のために働く道を選んだフィリピーナ達は
どうなるのだろう・・・」
「当のこの国じゃ介護職は急速に魅力を失い、離職率は右肩上がり・・・」

介護についての小宮の願いはシンプル
「形がどう変わろうと、生きている限り、”家族”でありたい。
ただ それだけだ・・・」

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外国人介護士をめぐる問題は、今も根本的には変わっていないようです。
高齢化社会と介護の問題は、日本だけに限った問題ではなく、中国を含め
アジア全体に広がりつつあります。

そこでは、外国人介護士は、引く手あまたで、日本における外国人介護士
政策や受け入れサイドの認識の変わり様のなさは、一大決心と一大転換が
ない限り、そろそろ致命的な、取り返しがつかない状況になるのでは・・・。
そう考えるべきです。

この第8巻のテーマは、2006年に連載されたもの。
もう10年経っているのです。

どういう国なんでしょうか、日本という国は・・・。

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