
介護事業者倒産件数1-8月期、昨年1年間を上回り年間最多更新:新3本の矢で一層厳しく!?
介護保険を利用する高齢者が増加する一方の状況にあっても、
特養などの低費施設の不足、待機入居希望高齢者の増加、介護職人材不足
などの問題も大きくなるばかり。
そうした要因も含めて、介護事業経営が困難な状況にあることは、
2015/8/16 にこのブログで
◆2015年1-6月、介護業者経営破綻、最多。介護事業経営の難しさも課題。
と題して取り上げました。
東京商工リサーチのレポートから記事にするのは、まず日経なのですが、
珍しく、中日新聞が、9月21日に、今年1-8月期の同レポートを利用。
「介護事業者 倒産55件 年間最多更新 報酬減や人手不足」
と題して、報告しています。
概要を以下にまとめてみました。
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◆2015年1-8月期の介護サービス事業者の負債1千万円以上の倒産件数:
前年1年間の合計件数を上回る55件
(2013年・2014年とも、年間54件)
今年は80件以上となると予測
◆その背景
・事業者に支払われる介護報酬が4月から2.27%引き下げられた
・景気回復で他業種に人材が流れ人手不足
・高齢化の進展で介護サービスは有望業種として新規参入が相次ぐが
都市部では過当競争も
・安易な投資や経営能力不足から行き詰まり
◆特徴
・小規模事業者の倒産が増加:従業員5人未満が37件、約4割
5年以内の設立が過半数
・サービス種別では:通所・短期入所の通所介護が23件
訪問介護が21件
・都道府県別では:大阪府が10件で最多、北海道と愛知県が各4件
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こうした状況から、同紙では、施設閉鎖によって、退去を余儀なくされる
入所者の問題を、以下のように事例を挙げて提起しています。
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■通所介護併設の無届け有料老人ホーム3カ所運営事業者(前橋市)
経営不振に陥り、6月前橋地裁で破産手続き開始決定
ホームの定員はいずれも20人前後で、1カ所は別の会社が引き継いだが
残り2カ所は閉鎖され、入居者は転居に。
■倒産には至らなくても、小規模の通所介護事業所の閉鎖も各地に広がり
3カ所運営する釧路市のある社会福祉協議会。内1カ所(定員20人)を
3月いっぱいで廃止・統合。利用者数低迷に、介護報酬引き下げが追い打ち
■静岡県内の定員10人のある通所介護事業所の経営の先行き不安
一軒家を利用した家庭的な雰囲気を大切にしてきたが、報酬改定後、
収入が2割減少。
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負債1000万円以上を対象としているので、より小さな規模での倒産や事業
清算の件数はかなり増えるのではと推察できます。
介護報酬の引き下げがなくても、ある意味こうした事態・状況は予想され
たものと考えています。
社会福祉という名のもとに、社会の役に立ちたいというある意味純粋な気
持ち、志を持って、事業に参画・参入された方も多いかと思います。
しかし、その収益源が、介護報酬という保険料収益と財政支出であり、純
粋な事業経営の形式をともなっていない事業モデルです。
(本来、事業モデルと言えないかもしれない・・・?)
そして、人件費率が非常に高い事業でもあります。
小規模事業では、介護スタッフは少なく、ぎりぎりの状態での運営となるこ
とも予想されるものでした。
試算すれば収支トントン、少し悪くすれば赤字。
まあ、儲かると思って参入した方もいらっしゃるかと思いますが、人材が基
本の事業なので、人材の確保・定着が継続できなければ、事業継続もムリ。
そういう視点も不可欠だったはず。
そこに考えが及ばない事業者・経営者は、今も多数いるのではと推察します。
迷惑を被るのは、利用者、利用者の家族。
介護職の方々は、この機会に、より良い事業所に転出することが可能になる
ので、活かして頂きたいものです。
アベノミクス第2ステージで、新3本の矢の1本で、特養の増設で待機要介護
者をゼロにする、と喧伝しています。
しかし、特養を建設・運営できる事業所は、自治体や社会福祉法人など公的
な性質を持つ事業者がほとんどでしょうから、資本力のない家業的・小規模事
業者にはあまり関係のないことです。
特養自体、入居者がそこで訪問介護サービスを受けるわけですし、デイサー
ビスの委受託も関係先や安定的な事業者とつながることになります。
人材も、そちらの基盤がある大きな施設に流れますから、かえってマイナス
の影響を受けることになると思っています。
5年から10年くらい先を見通し、事業を継続させつつ、少しでも成長させる
ことが可能か、そのためにどんなサービスを提供し、どういう運営体制でやっ
ていくか・・・。
マーケティングとマネジメント、両方の視点で、経営を考える必要がありま
す。
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