墓友、そして死後のしかけについて:『老い方上手』「自分らしい葬送を選ぶ」から-9

 

老い方上手』にある井上治代さんの第5章 自分らしい葬送を選ぶ
を紹介しながら、終活の一つ、葬儀・葬送について考えてきています。

第1回 ⇒ 変わる家族と葬送(1)核家族化の後
第2回⇒ 変わる家族と葬送(2)跡継ぎを必要としないお墓と自分らしさ
第3回⇒ 変わる家族と葬送(3)自由なデザインで自分らしいお墓
第4回⇒ 変わる家族と葬送(4)手元供養が人気
とお墓に対しての心の持ち方の変化などについて紹介。

その後自然葬の紹介に入り
第5回⇒ 自然葬志向の「散骨」の法律事情
第6回⇒ 自然志向葬送の根拠・方法と自然を守る使命
第7回⇒ 樹木葬・桜葬、桜葬墓地とは
第8回⇒ エンディングサポートについて

を取り上げてきました。

第9回は、同書から<墓友>について・・・。

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<桜葬とは?:墓友とは?>

※前回からの続きです。

また、同センターでは「墓友」と呼ばれる関係ができています。
墓友とは、同じお墓(桜葬)を選んだ人たちの交友関係のひとつ、あるいは

仲間意識をいいます。介護・看取り・死者の祭祀を当然のように担ってきた
家族の機能が弱まった社会で、墓を核とした新たな縁を結んで、同世代の
”お互いさま”で助け合える関係を考えています。

伝統的な墓がある中で、新形式(継承を前提とせず、自然志向)の墓を選ん
だという意識を持つ人々がつながっています。確かなものを欠く社会で、同じ
選択をした人たちは共感しやすく、結びつきも強いものです。生前から語り
あい、学び、時を共有し、助けあって、死を見つめることではじまるつながり
です。

その活動のひとつに、お墓の周辺ツアーが人気です。勉強会をしたり、サーク
ル活動をしたり、語り合いの会があったり、「輝いて生きるための終活講座」
というものもやっています。エンディングノートの書き方も学べます。

施設見学会では、集まってきたみなさんがおっしゃることは、「お墓は買って
安心。だけど、そこに入るまでが大変なのよね」です。世の中には、いろいろ
な種類の団体が合って、介護や施設づくりから入り、最後、お墓を確保する
団体がほとんどです。逆に、最終段階のお墓を確保して、じゃあ、そこにはい
るまでどうしたらいいかと、だんだん上がっていくのがエンディングセンター
なのです。

会員の活動で、グループホームとか、施設見学会に行って帰ってくると、みな
さん、同じことをやりはじめます。それは断捨離。つまり、いらないものを
思い切って捨て始めるのです。施設の居室にはベッドがあって、その横に多少、
私物が置けるようなスペースがあります。そんな光景を見てくると、どう考え
ても今の住まいにある荷物が、施設の居室に入るわけがない、ということを
実感するんですね。

(略)

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<「もう一つの我が家」の活動>
<お葬式をする、しない?>
<死体はどうなる?>
というテーマの項目は全文省略し、最後の項目を紹介して終わりとします。
またまた長い引用になりますが、ご容赦ください。

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<準備することが大事>

今エンディングセンターでは、
「死後のしかけ」というメニューを作っています。

私がかつて毎日新聞に「最後まで自分らしく」という連載をしていたときに、
もし死期がわかるような病気になったら、身近にいる人の誕生日に私の死後
に私から花束が届くように仕掛けてから逝きたい、というのを書いたところ、
愛媛の今治の人から手紙をいただきました。 (略)
その人は夫ががんでこれ以上治療をしても無駄だということになって、だけど
最期まで一生懸命看病して看取ったそうです。夫が亡くなって火葬場に行き、
まだ温かい遺骨を抱きかかえて家に帰ったら、そのときに宅配業者さんが来て、
50本の花束が届いていたそうです。そしてそこには夫からの「ありがとう」
という言葉が添えられていました。

また、会員さんからの話として
独り者で、親も死んでいるから何かを送る親族もいないのですが、大親友の
お孫さんに、自分が好きな本を毎月一冊ずつ届くように仕掛けてなくなった
そうです。

またある会員さんは、だんだんと子どもたちが大きくなって結婚し巣立って
いき、このままいくと家族がバラバラになると心配し、(略)みんなが自分の
誕生日に集まるようにしたといいます。 (略)
そして死んでもこれをやっていきたいと思っている、と。

じゃあエンディングセンターがやりましょう。お金を預けておいてくれれば、
全部段取りしますよ、となりました。

これらはすべて、死後の時間です。(略)

家の先祖となって死後も子孫に永続的に祀られていく。死をも超えた時間、
死をも超えた関係性といった、ある意味スピリチュアルケアの構図を持った
伝統的な先祖祭祀の意味が薄れ、それに代わるかのように桜葬の試み
(自然・墓友)が支持されている理由は、スピリチュアルの要素を兼ね備え
ている点ではないでしょうか。

「墓友」という言葉や概念、そしてそれが意味する関係性をなぜ作ったかと
いうと、死をも超えた関係性を想定してからです。そう思うことで死が怖く
ない。それから、今まで代々続きていくという家族の永遠性の中に身を置い
て安心していたけれど、家族というものが代々続かない一代限りの核家族
になったとき、それに変わる「自然」という永遠性の中で眠りたいという
感覚になっていく。家族という代々続く永遠性からそれが見込まれない社会
になって、自然というものに回帰していったというわけなのです。

伝統的なものをそのまま行うのは楽です。また何も準備しなくても、
野垂れ死にもできなくはありません。「行旅病人及行旅死亡人取扱法」
という法律があって、亡くなった場所を管轄する役所が、行政の措置と
して、葬儀社にお金を払って火葬をしてもらい、どこかの無縁塚のような
ところに入れてくれます。

しかし、この章は、自分で選んで、ちゃんと自分のことを準備しておく
ことこそ、市の受容につながり、輝いて生きることにつながる、
という話でした。

(終わり)

墓地
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【井上治代さんプロフィール(同誌より転載しました。)
東洋大学ライフデザイン学部教授、社会学博士。
認定NPO法人エンディングセンター理事長。ノンフィクション作家。
専門分野は社会学(家族変動・死者祭祀・ジェンダー論)で、「家族の社会学」
「生死の社会学」「いのちの教育」「総合Ⅳ」死生学ゼミ」などを教えている。
著書に『新・遺言ノート』『墓と家族の変容』『桜葬-桜の下で眠りたい』
『より良く死ぬ日のために』ほか。

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当初思っていたよりも、長いシリーズになってしまいました。
できるだけ、原文に忠実にお伝えした方が良いかと思ってのことです。

最終回の「墓友」や「死後観」などについては
私は、どちらかというと楽観的無常感を持っていますので、すんなり同意する
わけではありません。
ただ「自分流」というのがこのブログの基本方針ですので、考え方のバリュ
エーションということで紹介したしだいです。

他に4つのテーマ
「ビンボーばあさんにならないために」(樋口恵子さん著)
「認知症400万人時代。あなたは?パートナーは?ご両親は?」(大熊由紀子さん著)
「在宅ひとり死は可能か」(上野千鶴子さん著)
「延命医療とは何か -肯定できる人生のために-」(会田薫子さん著)
で構成する『老い方上手』で詳細をお読み頂ければと思います。

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なお、大熊さんの認知症に関しては、介護相談.net で
以下のようにブログ化しました。
併せてご覧頂ければと思います。

1回目はこちら ⇒ 認知症をめぐる5つの誤解
2回目はこちら⇒ デンマークの認知症事情を知る
3回目はこちら⇒ スウェーデンの認知症事情を知る
4回目はこちら⇒ フランスのユマニチュードを知る
5回目はこちら⇒ 日本の認知症事情(1)
6回目はこちら⇒ 日本の認知症事情(2)
7回目・最終回はこちら⇒ 日本の認知症事情(3)

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