社会生活基本調査から読み取る夫婦の生活時間の違い:「時間」がない男が「居場所」のある女に頼るミライ(31)
『「居場所」のない男、「時間」がない女』(水無田気流さん著)
を読むことで始めた <「時間」がない男が「居場所」のある女に頼るミライ>ブログ。
同書の流れに沿い、長々とシリーズ化してきています。
『第1部 居場所のない男』を終え
『第2部 時間のない女』「第1章 既婚女性は家族の「時間財」」
第1回(第25回):水無田さんの出産・育児母体験から考える
第2回(第26回):日本の母親に求める役割と基準の高さが時間を削る
第3回(第27回):水無田さんの体験が示す日本の子育て・女性政策の欠陥
第4回(第28回):母の愛情は無償?有償?
第5回(第29回):時間貧困が論理貧困を招く?
第6回(第30回):すべての年代・世代の男性が女性の時間財を奪っている?
と終了。
今回から「第2章 日本女性の「時間貧困」」に入ります。
その第1回、通算31回目になります。
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【第2章 日本女性の「時間貧困」】から
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<「暇な主婦」は幻想である>
よく、ランチタイムにママ友同士、優雅に高級フレンチのランチコース
を頼む主婦たちや、カフェでくつろぐマダムのみなさんがメディアに躍り、
男性サラリーマン諸氏は街中でそんな雰囲気の女性を横目で見ながら、
「女って暇でいいよな・・・」とつぶやきながら、立ち食いそばや牛丼
屋で昼食を流し込む・・・、という構図が見られる。
だが、この「昼間優雅に過ごしている」かに見える女性たちは、実は
「集まれるのはこの時間帯だけ」である点に注意が必要である。女性
たちは、「昼間から暇」なのではない。「昼間の、子どもが学校や幼稚
園などに行っている間だけが唯一の休憩時間」なのである。
基本的に、「ケアすべき対象」=家族がいるあいだは、女性にとって
家庭にいるときも労働時間なのである。(略)
されに、生活時間・空間のずれは、「忙しい時間」の時間差も生む。
これが、男性が主婦を暇とみなしたがる要因ともなっているように見
える。
日本の女性は、就労率は他の先進国に比べて低く、有償時間も長くは
ない。だが、有償時間と無償労働時間を合算した「総労働時間」は、長
時間労働が指摘される日本男性よりも長くなる。しかも、究極の休憩時
間である睡眠時間は、男性より女性の方が短い。先進国で男性より女性
の睡眠時間が短いのは珍し傾向である。
と述べた後、種々の労働時間調査データに基づき、その実態と裏付け
を示し、
日本で男性の長時間労働を可能とするのは、「男性が外で働き、女性
が家庭で家事育児を一手に引き受ける」という「性別分業」である。
生活時間の使い方には、この特性が色濃く反映されている。
とし、2011年の「社会生活基本調査」結果をもとに、性別・既婚・未
婚別に「仕事」と「家事」という分類での生活時間の違い・特徴を時間
数で示します。
そこでは、
男性は「仕事」に費やす時間が長い一方、「家事」に費やす時間が短
く、1日当たりの家事時間は男性42分、女性3時間35分と5倍の開きがあ
ること。
当然、女性では、既婚女性の方が未婚女性よりも、4時間近く長く、
「家庭を守る」ことに時間を費やしていること。
平均睡眠時間でも、女性の方が13分短く、40代後半の女性の睡眠時間が
最も短く平均6時間48分であり、
これが、家事育児とパートなどで就労を再開する時期に当たる女性の
「寝る間もない忙しさ」を象徴している。
と結んでいます。
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上記の「社会生活基本調査」のレポートは、HPからPDFデータで見ること
ができます。
この項で文章は省略しましたが例示しているデータのグラフには、他に
や、冒頭提示した、睡眠時間データがあります。
まだ結論を出すのは早計ですが、根本的に男女間すなわち夫婦間で、生活
時間の偏在を是正するには、話し合いによる時間の再配分と、無償とみなさ
れる労働の有償化による家計所得の再配分が、問題改善の方法の一つになっ
てくるのでは、と思います。
ところで、この<社会生活基本調査>の中に、水無田さんの記述内容には
ない面白い事項がありました。
こんなデータなのですが、直感的に何を感じるでしょうか・・・。
データも、一つの固定的な見方・読み方で通して見るのと、異なった
意識を持って見るのとでは、種々違った意見・分析をもたらします。
時間という定量化は、その内容や事情などの定性的な面を排除しての
ものです。
たしかに、傾向としてはそう言えないこともないですが、平均値は、
もしかしたらまったく実在しない状況を示している可能性もあります。
より実態を正しく把握するには、男女・年齢・既未婚という3つの要素
を組み合わせてデータ化すべきですが、どのデータも、2つの要素での
データ化でとどまっていることにも留意しておく必要があります。
まあ、感覚的にそうだ、ということは概ね間違ってはいない、として
よいと思うのですが・・・。
この項に限定して、どうこうという判断は行わず、このまま、第2章の
残りを読み進めていきます。