能力はあるが、時間がない女性の生き方は?:「時間」がない男が「居場所」のある女に頼るミライ(37)

『「居場所」のない男、「時間」がない女』(水無田気流さん著)
を読むことで始めた <「時間」がない男が「居場所」のある女に頼るミライ>ブログ。
同書の流れに沿い、長々とシリーズ化してきています。

『第1部 居場所のない男』を終え
『第2部 時間のない女』「第1章 既婚女性は家族の「時間財」」
第1回(第25回):水無田さんの出産・育児母体験から考える
第2回(第26回):日本の母親に求める役割と基準の高さが時間を削る
第3回(第27回):水無田さんの体験が示す日本の子育て・女性政策の欠陥
第4回(第28回):母の愛情は無償?有償?
第5回(第29回):時間貧困が論理貧困を招く?
第6回(第30回):すべての年代・世代の男性が女性の時間財を奪っている?
「第2章 日本女性の「時間貧困」」
第1回(第31回):社会生活基本調査から読み取る夫婦の生活時間の違い
第2回(第32回):「全国家庭動向調査」に見る夫の家事・育児分担状況から
第3回(第33回):家事の時給換算で有償化のシミュレーションを
第4回(第34回):日本女性の家事時間問題と時間貧困考察の視点、再考
「第3章 出産タイムリミットに追われる日本女性」
第1回(第35回):結婚至上主義は、女性自身が放棄したのでは?
第2回(第36回):「女の幸せ」新・実現プログラムをどう描くか
と続き、今回が第3回・通算37回目になります。

日外2人
----------------------------
【第3章 出産タイムリミットに追われる日本女性】から
----------------------------
<日本女性超人化計画>

この項では、この書が執筆中は法案であり、先日成立した
「女性活躍推進法」は「日本女性超人化計画」とか「女神降臨クエスト」など
呼んだほうがよいのではないか・・・。

と結んで終わっています。

ですが、何か所か気になった点を抜き書きすることにします。

家族やジェンダーに関する授業で学生の意識調査を行うと、結婚観・労働観は、
高偏差値大学ほど男子学生と女子学生で精神年齢差が拡大するように思える。
(女子学生からは)具体的で自身の人生設計に引きつけた、切実な回答が返って
くる。
 が、男子学生は、かなり優秀な回答でも基本「他人事」な感が否めない。
(略)
この、男女間に横たわる「タイムラグ(時間差)」は、いったい何だろう・・・。
(略)
精神年齢は、男女で10歳程度の開きがあるように思える。
 おそらく、この国の女性たちは、次の点を骨身に染みて思い知っている。
 それは、「放っておいては、男性は何も考えてはくれない」という悲しい事実
である。
 実際、女性の就労継続、結婚、出産、育児・・・すべてに対し、真剣に検討し
選択する心理的・時間的コストは、ひたすら女性の双肩にばかりかけられている。
(略)

正規雇用の女性が出産を機に離職した場合、本来定年退職まで勤務していたら
得られたはずの機会費用は、「国民生活白書(2005年)」によれば2億円以上、
逸失率は8割を超える。
 高学歴・高水準職女性ほど、自身に投入してきた学業やキャリアを捨てること
は、それだけ多くのコストを無駄にすることを意味する。
(略)
OECDジェンダーギャップ関連報告(2012)によれば、どのOECD諸国でも、
「子ども有り」の女性は、「子ども無し」の女性より、男女の賃金格差が大きい。
 報告タイトルがそのまま示すように「母親であることは高くつく」のである。

加えて、次に日本の男女間の賃金格差がOECD諸国中最大であることも指摘。

この国の女性は、超人にでもならなければ、男性と同レベルで社会的な評価を
得つつ、出産・育児を行うのは難しい。もちろん、出産時の高い離職率に鑑みれ
ば、結局、仕事か育児か、あるいはその両方が犠牲となっているといえる。

そしてその後、女性活躍推進法で規定する、女性管理職比率や人数の目標化
との関連で、その実態を「男女共同参画白書」などを用いて紹介したうえで

2015年春卒業の大学生の就職内定率(10月1日時点)は、男子67.6%、女子
69.4%と、女子が男子を上回った。近年は、筆記や面接などの成績順だけで単純
に採用すれば女子ばかりになってしまうため、男子学生にげたを履かせて採用
している、など企業の採用担当者の話が漏れ聞こえてくるようになった。

げたを履かせてまで男子を多く採用している理由は、男子は「伸びしろ」がある
からというのがその理由だが、女子を伸ばさず評価もしない社会背景にも目を
向けてほしいと切に願う。
 女性活躍推進法の数値目標には「女性に無理にげたを履かせるもの」との批判
もあるが、これまで日本社会は、むしろ男性にげたを履かせる一方で、女性の
能力を生かしきれてこなかったのではないか。
(略)
そして、冒頭の結びの表現に至ります。

乾杯3
※次項・本章最後の<日本は「社会的不妊」を解決すべき>に続きます。

-------------------------------

おっしゃる通り、異議ございません!

極端に走ってはいけませんが、
女性には「能力」「意欲」があるが、「時間」がない!
そういう側面も、あるにはある。

居場所もない男性だが、時間があるならば、その空いた、余裕のある時間の一部を
育児や家事に使うようにする・・・。
これは夫婦・カップルのコミュニケーションでなんとかなるかもしれない。

でも、恐らく、未婚女性がそうした役割分担を快く受け持つ男性が現れるのを待ち、
あるいは選んでいたら、結婚できない率、しない率が高まり、結局、仕事に能力を
注力する人生しかなくなるかもしれない。
選択肢が多様であるはずのダイバーシティは、画餅・・・。

そうならないよう男性を教育する社会的な仕組み、学校教育が必要になるが、確信
は持てない・・・。

本来、出産・育児・保育の低費用化、全員受け入れ、無償化・義務教育化(最近、
古市氏が唱え、その本がただいま在庫切れと注目)などが実施されれば、男性にさ
ほど期待しなくても好転していくだろう・・・。
それをめざすべきという意見・風潮・圧力は、恐らく増していくと思うが、どれほ
どの時間を要するか、予想が付かない、という想定はできる・・・。
でも、目標期限を定めて、何とかして実現すべきであろう。
これは、国・政治・行政の必須課題だが、その実行・実現を可能にする体制作りの
責任と権限は、国民・住民にあるはず・・・。

女性の意を受けて、あるいは賛意を表して、自分のこととしても、そうした政策・
社会システム作りに参画することは、男性にもできるし、参加者は増えるだろう。

また、企業ができることも多種多様にある。
そうすべき、と第三者が言うのは簡単だが、もともと経営は、そのことを第一の目
的で立ち上げ、実践してきたわけではないから、強制するには限度がある。
それが倒産に結びつくことさえあるから。

そこで、能力のある、意欲のある女性は、どうすることが望ましいか・・・。
時間はないが、なんとか理想が実現するまでは、高い能力を使って、知恵で、改善
し、改革、創造していくしかない。

政治の世界、企業経営の世界で・・・。

力のない男性、理解できない男性。
意識も行動力も乏しい社会にどう働きかけ、どう変えていくか・・・。
時間があるらしい男性をうまく活用するよう、能力を使ってほしい。

行動し、数の力を持ち、影響力を行使できるようにすることも一つの方法。
自ら、望ましい働き方を選択し、提供できる企業を興すか、企業をそう変革する
力を持つか、その立場を獲得するか・・・。
そして、モデルを創る。

水無田さんの指摘・主張は、ほとんど正しい。
で、女性が自らどう行動するか・・・。
その議論、提案が、ほとんど見られない・・・。
本書の残りで果たして、展開されるでしょうか・・・。

世の中、社会では、男女はほぼ同数。
その数を活かす能力を行使する発想と行動があってほしいと思うのですが・・・。

男性自身も働くこと、生きることが難しくなっている社会でもあるのですから・・・。

018

-------------------------------

『「居場所」のない男、「時間」がない女』から考える
<「時間」がない男が「居場所」のある女に頼るミライ>ブログ
これまで掲載したブログのラインアップは以下の通りです。
『第1部 居場所のない男』
「第1章 男女の時空間分離がもたらした悲劇」
第1回:関係貧困と時間貧困、時空の歪みを歯噛みする
第2回:「亭主元気で留守がいい」から「亭主ピンピンコロリがいい」時代へ
第3回:粗大ゴミ・産廃・濡れ落ち葉男性の今昔とミライ
第4回:時間がある若い世代の居場所確保と疎外感克服法は?
第5回:「男は、女はこうあるべき」が崩れる社会に備える
第6回:時代で変化してきた夫婦の関係性の明日は見えるか
第7回:男性よ、愛情表現する勇気とスキルを持とう!
「第2章「弱音を吐けない」という男性問題」
第8回:愛情ビジネス結婚と損得感情・損得勘定結婚
第9回:弱音を吐かない強みと弱みへの対応法
第10回:夫婦・独り身の平均寿命の違いの原因は?
第11回:そして男性のまわりにはだれも居なくなる?!
第12回:女性が新しいコミュニティを創造してくれる!?:
第13回:孤独であること、ひとりでいることはいけないこと?
第14回:男子よ、自分の健康管理は自分で!
第15回:自殺統計から仕事と生活のあり方を考えてみる
第16回:平均寿命が短い男性には時間もない!?
「第3章 日本男性の「関係貧困」」
第17回:サラリーマンの定義・対象範囲が微妙です
第18回:自分流の労働観・家族観を持つ時代へ
第19回:リーマン小説・歌・映画は世に連れ、未来はネットに連れ?
第20回:関係貧困の象徴、孤独な男性はどこへ行く
第21回:新しい雇用環境創造のための基本認識
第22回:男性にもある、就労第一主義を形成する時間貧困
第23回:単身無業者を支援する「関係貧困」解決社会システム
第24回:居場所がないと生きては行けませんか?行き場所がある人生を

-------------------------------
【水無田気流さん・プロフィール】
1970年神奈川県相模原市生まれ。詩人・社会学者
早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
著書:『シングルマザーの貧困』『無頼化した女たち』
『黒山ももこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望』
『平成幸福論ノート』(田中理恵子名義)など

 

関連記事一覧