「婚活」ブームがもたらした認識の変化「結婚できない不安」:『「婚活」症候群』から(1)

「婚活」という言葉を世に送り出しブームを起こした、
「婚活」時代
白河桃子・山田昌弘氏共著の2008/3/1刊・ディスカバー携書)
そこから産まれた誤解を解くと共にその後の婚活とこれからの婚活を
テーマとした続編の
「婚活」症候群』(2013/7/20刊・ディスカバー携書)

この続編の方を読めば、『「婚活」時代』を読むもないと思います。
そこで『「婚活」症候群』を参考にさせて頂きながら、「結婚」と
これからの「婚活」を考えていきます。
同書の構成は、以下のようになっています。

1.「婚活」流行の背景と影響(山田)
2.「婚活」の誤解と限界(白河)
3.婚活の現実と格差 あきらめる男性、疲れる女性(山田)
4.限界を突破するには(白河)
5.婚活の社会的効用 少子化対策としての婚活(山田)
6.進化する婚活(白河)
7.地方の婚活、世界の婚活(山田+白河)

それでは、第1章の【「婚活」流行の背景と影響】から始めます。

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 『「婚活」時代』のねらい
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『「婚活」時代』で伝えたかったメッセージは、二つありました。

一つは、待っていても結婚できないということ。
 もう一つは、今までの結婚形態、いわゆる夫に経済的に依存する結婚
(「昭和結婚」とこことでは呼びます)を目指すのはもう無理ということ
でした。

 だから、『積極的に出会いをつくり出そう」、「男女交際を活性化させ
よう」、「男性の収入に焦点が当たる結婚から、男女ともに共働きの覚悟
をして、男性の収入依存の結婚から脱却しよう」、という提案をしました。

 一つめの「待っていては結婚できない」という認識はかなり浸透したと
思います。
(略)
 実際に婚活をする人はかなり増えたように見えます。
(略)

喫煙
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 認識の変化1 結婚できないという不安の高まり
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「婚活」という言葉の浸透によって、二つの意識の変化がありました。
 一つは、結婚できるかどうかという不安が強まったことです。

 結婚情報サイト・オーネットの新成人に対する調査。
 「結婚できるかどうか不安に感じる」という数字が、2008年の17.5%か
ら2009年には26%に跳ね上がりました。
 同書の発行時期2008年2月から、その影響が感じられます。
 老後不安もあるでしょうか。30代なら納得かもしれませんが、20歳に
なりたての人たちでも4人に1人が、そう思うようになったというのは
特筆すべきことです。
(略)

研究者の間では、今の若者のほぼ4人に1人は生涯未婚であるという
国立社会保障・人口問題研究所の将来予測(2007年将来人口推計)は、
知られていました。(略)
しかし、その予測は、一般の人々の間で広まっているとは言えません
でした。
 
 わたしが、大学の講義の冒頭で、「君たちのうち、4人に1人が一生
未婚だ。結婚する75%も、3分の一は離婚するから、結婚して離婚しない
で一生を過ごすのは、この教室のうち半分もいないんだぞ」と言うと
学生は驚きます。

 また、中高年の一般の人たちが対象の講演では、「あなたに二人の子ど
もがいるとします。一人は結婚して離婚しないでしょうが、もう一人は、
結婚せずに一生家にいるか、結婚しても離婚して戻ってくるかどちらかで
すよ」と言うと、やはりびっくりします。

 また、これは、婚活のせいではありませんが、結婚できなかったら困る
という形の不安も強まっています。
 それは、2010年にNHKで「無縁社会」シリーズが放映され、「孤独死」
が増えているという現実の認識が深まったということもあります。
 誰にも看取られずに亡くなる孤独死が年3万2千人と報道されましたが、
これは、今の高齢者で亡くなる方の年間の未婚者数とほぼ重なる数字です。
 「未婚=孤立した高齢者=無縁死」というつながりが、意識され始めた
ようです。

 わたしが加わった内閣府の調査でも、結婚したい理由に「老後一人で
いるのはイヤ」と回答する女性は4割に達しました(男性2割)。
 結婚しないまま高齢期に突入することを避けたいと意識する人、特に
女性が増えてきています。

 ただ、この事実を知ったからといって、結婚できるというわけではあり
ません。
これが、ものやサービスなら、認識の変化がすぐ現実の変化に結びつく
でしょう。
(略)
そこで、婚活するのですが、それでも相手があることですから、こちら
がよくても相手がノー、向こうがよくてもこちらがダメといったように、
望めばそれが簡単に得られるものではありません。
そこで、結婚できるかどうかという不安が高まる、という結果になるの
です。

4
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 2008年の新成人に対する調査で分かった、若い世代が持つ結婚できるか
どうかへの不安。
 今では、不安もさることながら、結婚自体に対する考え方も、より変化
しているのではと思われます。
 その辺りの事情・状況は、前回紹介した
恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚
牛窪恵さん著・2015/9/30刊・ディスカバー携書)

でいずれ確認したいと思います。

実は、私も試しにネットの結婚情報サイトに基本情報だけ登録しており
性格・希望などに合わせて、相性が合いそうな女性登録者を仮名で紹介
してくれる
メールを、よく受け取ります。
私は60歳代なので、相手の希望年代を40歳代としているのですが、結構
頻繁に紹介案内が届きます。
(実際に紹介してもらうためには、入会金や会費が必要ですが。)

もちろん未婚の方々ばかりで、高学歴。
やはり、高齢を一人で迎えることへの不安が、自己紹介の文面から感じ
ることができます。

そこで感じるのは、理性的な方々なのだから、もっと早くから人生設計を
しておけばよかったのに、ということ・・・。
もちろん、そこに至るまで、いろいろなことがあったのでしょうが・・・。

結婚できるか不安だが、簡単には結婚はできない。
そこで「婚活」となるわけですが・・・。

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次回、<認識の変化2 婚活がはずかしいものではなくなった>
に続きます。

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