保育現場では、女性による保育士へのマタハラが日常茶飯事?:「『ルポ 保育崩壊』保育士不足」から(7)
『ルポ 保育崩壊』
(小林美希さん著・2015/4/21刊・岩波新書)
を参考にしてのシリーズ:「『ルポ 保育崩壊』保育士不足から」
第2回:大手運営会社の新設保育所の開園事情が示す問題
第3回:疲弊し、退職が止まらない保育士の現場実態
第4回:保育士不足を招く保育現場の実態調査から
第5回:社会福祉法人運営保育所もブラック化?
第6回:潜在保育士・潜在介護士。共通の問題を抱える保育・介護事業
第2章 保育士が足りない!?(6)
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<子どもを産めない>
マタハラという言葉が知られるようになったが、女性の多い職場である
保育の現場では、人手不足から一般企業よりも妊婦に厳しい環境となって
いる。
京都市内の社会福祉法人の保育所で働くKさん(32歳)は、結婚する前
から「妊娠するな」と暗に圧力をかけられている。
正職員の負担が重く、皆、結婚や出産を口実にして辞めていく。
(略)
正職員を募集しても応募がなく、非常勤しか採用できない。
いったんやめた人は二度と戻りたくないと保育士を辞めたまま。
戻ったとしても非常勤でしか働かないという人が周囲に多い。
先輩の保育士には子どもが3人いたが、末っ子が病気で入院しても正職
員である以上は子の看護のために休みを取ることができなかった。
仕事は好きだけれど、自分の子どもがしんどい時に一緒にいられない
ことに矛盾を感じた彼女は退職した。
Kさんにとって、今最大の問題はマタハラだ。
2年程前、パソコンに向かっていると、主任が突然、「なー、仕事に生
きるか結婚かどっちかにしぃ」と、まだ結婚していないKさんに話しかけ
た。
20代の保育士が前年度の終わり頃に結婚した。
その後輩は「子どもが欲しいと思っているため、次年度の担任を外して
もらいたい」と上司に申し出ていたが、担任が一人しか配置されない3歳
児クラスにつかされた。
彼女が園長に「もし妊娠して途中で担任が交代になっても大丈夫です
か」と尋ねると、「今のうちの人員体制はこうだから、妊娠する時期を
考えて欲しい」と告げられ、ぼろぼろと泣いていた。
後輩は、それからというもの、思い悩んでしまい、保育をしていても
心ここにあらず。(略)その様子を見て主任が注意することが増え、そ
んな状態が半年も続いた。
Kさんが話を聞くと「子どもを作る時期について夫と喧嘩になり、子
どもを作ろうという気分にならなくなってしまった。」
(略)
もし自分に子どもができたらどうなるのか・・・。
周囲を見渡せば、切迫流産や切迫早産、妊娠高血圧症候群などの妊娠
異常を起こして、産前休業に入る前に勤務できなくなっている保育士が
多い。
職場でも、何度も流産している人もいるため、子どもを授かってから
のことを考えるだけでも不安だ。
単純に、女性にマタハラを行うのは男性、と思っているのですが、保育
の現場では、女性が女性に対してマタハラを行うのが普通なんでしょうか?
主任も園長も、女性ですよね?
社会福祉法人であっても、マタハラもやむなし、というのでしょうか?
どうにも理解できないんです。
社長や理事長など、各保育事業所の最高責任者が男性で、その方針には
逆らえないために、そう行動するというのでしょうか・・・。
心ない男性ではなく、女性の敵になる女性が、保育の現場に存在する。
保育という現場がそうした女性をモンスター化させるのか、事業者が
そうした環境、見えない脅威を作りあげ、強制しているのか・・・。
保育の場で、女性が女性を助けない・・・?
保育の場では、女性の敵は女性・・・???
実際のところどうなのでしょう・・・。
理解できない社会、空間、場が形成されています・・・。
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【小林美希さんプロフィール】
1975年生、神戸大法学部卒後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』
編集部記者を経て、2007年よりフリーのジャーナリスト。
若者の雇用、結婚、出産・育児と就業継続などの問題を中心に活躍。
2013年「「子供を産ませない社会」の構造とマタニティハラスメント
に関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。
著書:『ルポ 正社員になりたい』(2007、日本労働ペンクラブ賞受賞)
『ルポ ”正社員”の若者たち』(2008)『看護崩壊』(2011)
『ルポ 職場流産』(2011)『ルポ 産ませない社会』(2013)
『ルポ 母子家庭』』(2015)など
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◆「保育の問題は、女性の労働、女性の貧困の問題と深く関わっている。
単純に「預け先を確保できればいい」というだけではない、根の深い問題だ。
そこを変えていくための社会変革が必要で、それには政治を変えることが
最も重要になってくる。」(猪熊弘子著:『「子育て」という政治 』より)
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【<保育・子育て>共有理念】
生まれてきたすべての子どもは、平等に、保育の機会を与えられる。
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