社会的不妊と少子化を招く社会的不婚・未婚化改善のための働き方改革:『「婚活」症候群』から(12)
『「婚活」時代』(2008/3/1刊)の続編の
『「婚活」症候群』(白河桃子・山田昌弘氏共著・2013/7/20刊)
を参考にさせて頂きながら、「結婚」と「婚活」を考えるシリーズです。
第1章【「婚活」流行の背景と影響】(山田昌弘)
第1回:「婚活」ブームがもたらした認識の変化「結婚できない不安」
第2回:「婚活」が恥ずかしいことではなくなった時代の幕が開いて
第3回:『「婚活」時代』の誤算、恋愛抜きの結婚願望?
第4回:希望年収600万円以上の適齢期の未婚男性5.7%の狭き門への戦い
第2章【「婚活」の誤解と限界】(白河桃子)
第5回:結婚に対する意識の変化を提案した『「婚活」時代』が生んだ誤解
第6回:婚活公認で女性がポジティブに。そして婚活未成就の負のサイクルが?
第7回:婚活ブームは「再婚活」「晩婚活」を呼び、婚活格差を招いた?
第8回:「釣り堀婚」「価格.com婚」そして「ロトくじ婚」?
第9回:結婚相手を選ぶ意識の変化以前に必要な、結婚への意識・考え方
第10回:強い女子力でも困難になった婚活時代は自活女子をめざす時代
第11回:「自活女子」「自活男子」化で一億総モラトリアム社会から脱却
と進み、今回は、第12回です。
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第2章 「婚活」の誤解と限界(8)
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<女性の働き方が変わらないことが結婚難、そして少子化の原因>
「自活女子になれ」と言われても、女性個人の努力だけではいかんとも
しがたい部分も大いにあります。
出産と子育てをしながら働き続けられる企業や社会のインフラが整って
いないことも大きな問題です。
日本全体の働き方、ワークライフバランス、女性の働き方が変わらな
いと、結婚難も少子化も解消しないでしょう。
働く女性にとって、子どもが生まれたら、もう今までのようには働け
ないという不安がまずあります。
不安があるから、養ってくれる年収を稼いでいる人を求めてしまう。
ところが、そんな男はごく少数です。
希少動物のような男性を求める限り、どんどん結婚が遅くなってしま
う。
晩婚だったらまだいいのですが、そのまま結婚しないという可能性も
出てきてしまう。
晩婚になればなるほど、出産の年齢が遅くなってしまって、出産でき
る子どもの数も少なくなり、また高齢による不妊で生めなくなってしま
う人も出てくるわけです。
日本の不妊の原因は、ほとんど女性の卵子の老化なのです。
今、日本女性の第一子の出産平均年齢は30歳を超えています。
先進国の中でもトップ3に入るほどの高齢出産の国なのです。
それは女性が悪いわけではありません。
「もっと遊んでいたいから」とか、「自由でいたいから生みたくないわ」
という理由で生まないわけではないのです。
なぜ、出産が遅くなるのか?
それには、「社会的赴任」が大きく影響しています。
社会的赴任とは「若い人の収入が低く、または不安定で、若いうちに
結婚・出産ができないこと」と「仕事と子育ての両立ができにくい」
ことです。
日本のサラリーマンの平均収入は412万円(2010年)。
共働きがこれからの子育てを支えるのですが、子どもを持つ女性が働
きやすいかと言えば、そうではありません。
長時間労働ができず自ら退職したり、子育てをしながら働く「制度」
はあっても、「風土」がない職場も多い。
マタニティ・ハラスメントも横行しています。
長時間労働慣行と、硬直した働き方が、女性たちの仕事と子育ての両
立を阻むのです。
第一子出産後の一歳児を持つ母親の就業率は、この25年間ほとんど変
わらず2~3割でしたが、2010年にようやく3割を超えました。
他の先進国と比べるとまだ低い水準です。
養ってくれる男性を見つけられず、また仕事をあきらめきれず、結婚
や出産を先延ばしにするうち、加齢により本当の「身体的不妊」となり、
不妊治療が必要となってしまいます。
これらの「社会的不妊」と「身体的不妊」の両方が高いハードルとな
って、女性の出産を阻み、少子化につながっているのです。
「生まない自由」は先輩女性たちが長い時間かかって確保しましたが、
「生む自由」があるかといえば、大変不自由な状態なのが今の日本です。
今話題・課題になっている、女性活躍、新三本の矢、一億総活躍社会政
策と、その象徴となる出生率目標1.8の実現のための具体的な政策に繋が
る問題点が、今回の内容で提示されています。
社会的不妊に至る前に、社会的不婚、社会的未婚が先行しているわけで
すね。
日本全体の働き方、女性の働き方を変える。
その必要性と具体論は、このところ急に多くなってきています。
日本全体の中に、企業と男性の働き方が含まれているわけで、最も多く
提示されている方策は、「長時間労働をなくすこと」になっているよう
です。
本来残業には割増賃金が支払われるべきなのですから、経営サイドとし
ては、当然残業をなくし、所定時間内で生産性を高めていくべきなので
すが、これがなかなか改善されない。
結局、所定外賃金が支給されない、支給しないサービス残業がまかり通
っており、その状態が改善・解決されないまま、ということになるわけ
です。
ここまで、問題点が明らかになっているのですから、労基法の運用を一
層厳しくして罰則規定を重くすることが不可欠のような気がします。
本来、そうした傾向・実態を先んじて改善・解消する経営が、一気にト
レンドにならなければいけないと思うのですが・・・。
国や官僚に介入される前に、企業サイドが主体的に行うべき最優先課題
として、長時間労働をやめ、労働生産性の向上に全社員・全従業員が総
力を上げて取り組む必要があります。
まず経営者団体が協調して取り組み、その流れを中小企業にも引き継い
でいく。
そうした取り組みで成果が上がれば、税制上のメリットを企業に与える。
企業は、一部を賃金で還元し、介護や育児休業政策の拡充の原資とする。
言うならば、一億総生産性向上社会の創造が先決と思います。
その生産性向上は、生涯設計や社会福祉政策への原資・ゆとりを提供す
るためのモノ、コトなのです。
ただ、盲目的に生産性向上が必要という気はなく、日本の実情を考える
と生産性課題と並行して、ワークシェアリングを重視した取り組みも
欠かせないことを一応申し添えます。
この課題については、別の機会に・・・。
次回は、第2章の最終回
<保守的な30代は残り、現実的な20代はどんどん結婚していく>
<「婚活」のコンセプトとアイディアとは?>
になります。
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「何のために結婚するのか」を考えるシリーズは、こちらです。
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