下流老人に多い相対的貧困者:『下流老人』の今と明日(2)

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下流老人とは、

「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
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今年2015年6月に刊行されたベストセラー
下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)

その著者は、自らNPO法人ほっとプラス を設立・運営する藤田孝典
この若い世代が描き、社会に警鐘をならした、高齢者の貧困問題を、
その書を参考に引用させて頂きながら、考える
<『下流老人』の今と明日>

 「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点

今回は第2回です。

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 2.下流老人の具体的な指標 3つの「ない」(1)
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<(1)収入が著しく少「ない」>

 まず、下流老人の特長は、世帯の収入が著しく低く、その収入では普通
の暮らしが営めないことだ。
その生活水準は、生活保護レベルか、それより低い状況にある。

 ここでいう「生活保護レベル」とは、「生活扶助費」と「住宅扶助費」
を合わせた金額を指す。
生活保護費は、自治体や世帯員などの状況や程度によっても支給額が異
なる。
たとえば、両方の合計額は、首都圏に住む一人暮らしの高齢者の場合、
月額13万円くらい、年額150万円前後。2人暮らしや3人暮らしだとさらに
増額される。
加えて生活保護では、医療や介護などの必要なサービスも、医療扶助費
や介護扶助費として別に現物支給されるうえ、所得税や住民税などの税金
の支払いも減免される。
そのため、それらの現物給付や控除などを実際の収入として換算すると、
額面よりも支給額は高くなる。

 以上が生活保護の大枠だが、この生活保護基準は「ナショナルミニマム」
とも言える。
それは、
「国が定める国民の健康で文化的な最低限度の暮らしに必要な費用や生活
水準を定めたもの」である。
憲法にも定められている、国民の生活の”最低ライン”を規定する重要な
指標と言える。

 要するに、年金などを含めた収入がこのラインと同程度であれば、生活
保護で受けられる収入と何ら変わらない。つまり”保護を必要とするレベル”
なのだ。
むしろ年金の収入が、額面上、生活保護と同レベルなら、実際の生活は
それ以下と言えるだろう。
 収入が著しく低いことは、下流化する最大のリスク要因となる。

ここで言う収入が著しく低い状態というのは、「相対的貧困率」が一つ
の目安となる。
 一般に「相対的貧困」とは、対象者が属する共同体(国や地域)の大多
数に比べて、貧しい状態にあることを指し、「相対的貧困率」とは、統計
上の中央値の半分に満たない所得しか得られない人の割合をいう。

 OECDによると、2012年では、日本は全世帯のうち、約16.1%が当たる。
 2013年の国民生活基礎調査では、一人暮らしは、12年の等価可処分所得
の中央値244万円の半分122万円未満が、貧困状態。
 2人世帯約170万円、3人約210万円、4人約245万円に相当し、その基準
以下では、日本では「貧困」に分類され、下流老人の所得も、概ねこの
辺りが目安となる。
(略)
注目すべきは、高齢者の相対的貧困率は、一般世帯よりも高いこと
 「平成22年男女共同参画白書」では、65歳以上は22.0%。
 高齢男性のみの世帯では38.3%、高齢女性のみは半分以上の52.3%。
 すなわち、一般に思われがちな「高齢者はみな金持ち」というイメージ
は、明らかに誤りだと言えるだろう。

老人手
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女性の平均寿命が長いことで、女性の高齢単身者が多いことは簡単に
予想が付きます。
そして多くは、厚生年金ではなく、国民年金受給者です。
このことからも高齢女性の相対的貧困者が半数以上ということは当然と
言えます。
こうした、今、居る高齢者を救うことはもちろん必要です。
加えて、これから同様の層が発生することをどのように防ぐか・・・。
こちらも、今以上に多くの相対的貧困者が出る可能性が高いだけに、取
り組む必要があるわけです。

より長期的に、次世代の方々がそうならないようにする方策。
こちらは、まだ時間があるので、準備期間はまだあるかもしれません。
(困難な人が多いかと思いますが。)
しかし、団塊世代の全員が75歳以上になる2025年以降の状態はどうなっ
ているか・・・。
要介護者数が急激に増えると予想される10年後。
その時期の相対的貧困者数の急増も、同時ではないかと考えられます。

一つは、65歳以上も働き続けることができれば、自衛のためにも少しで
も収入を得続ける・・・。

この書で、一億総下流老人化すると予想するその状態は、どのように起
きるのか。
まだ実感はなくとも、不安を抱かざるをえない先行きを、この書で想定
・確認し、その備える方法も考えていきたいと思います。

施設シニア

次回は、2つ目の「ない」 <(2)十分な貯蓄が「ない」>です。
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なお本書の体系は、次のとおりです。
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
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