尊敬される高齢者とは?:『下流老人』の今と明日(6)

下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃
藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら、考える<『下流老人』の今と明日>

「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク

今回は第6回です。

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 3.下流老人の何が問題なのか?(2)
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 下流老人の3つの「ない」。
 ① 収入が著しく少ない
 ② 十分な貯蓄がない
 ③ 頼れる人間がいない
下流老人とは、言いかえれば「あらゆるセーフティネットを失った状態」
と言える。(略)
この問題は、社会に対しどのような悪影響を生むのだろうか、分析する。

施設シニア

<悪影響Ⅱ 価値観の崩壊>
高齢者のために若者世代が共倒れするような事態になれば、下流老人を中心
にして、「高齢者が尊敬されない」「年寄りなんか邪魔だ、お荷物だ」としか
見られなくなる社会になる危険性もおおいにあり得るだろう。

 高齢者はこれまで家族を養い、社会や経済の発展に寄与してきた存在である。
 たいていの文明社会においては、おおくの人々から尊敬される者のはずだ。
 しかしこのままいくと、社会的な役割を十分に果たしてきたにもかかわらず、
尊敬されない時代が近いうちに到来するだろう。
 今はまだ、「長生きすることが素晴らしい」という共通認識があるが、長生
きする人間が社会の重荷になるのであれば、それは生命の価値自体が軽んじら
れることにもなりかねない。

 人間は生まれながらにして尊く、価値ある存在として見られなくなる。
 下流か否かで、「死んでもよい命」と「死んではいけない命」があたかもあ
るように考えてしまう人々も出てくるだろう。
 経済的に自立していない人間を自分たちの生活のために排除することに、何
ら疑問を持たない者も出てくるかもしれない。

 これはかなり危険なことで、高齢者に限らず、生産能力が低い障害者にも被
害が拡大する恐れもある。
 あるいは生活保護受給者や社会保障を受けている人々に対する差別的意識が
強まり、自立を阻害する要因となる可能性すらあるだろう。

もともとわたしたちが大事に築き上げてきた価値観、なかでも子どもの頃に
教わったような「命の尊さ」や「生命倫理」が根底から揺らいでしまう時代が
くるかもしれない。
 そして、それが優生思想にもつながる危険な考え方を生む土壌を社会に形成
してしまう。
 最近は、ヘイトスピーチなども話題になっているが、他の国の人々や価値を
重しない排斥行動も広がる傾向を見せている。
 ホームレス等を襲撃する中高生も後をたたず、襲撃して排除することが素晴
らしいことだと語る少年まで現れている状況だ。
 これらはすべて個人の権利や命を軽視する意味で同じだと言える。

 このような価値観の崩壊は、さまざまな教育制度やシステムに影響を与える。
 みんなが「健康は一番」「長生きは素晴らしい」と目指していたはずのもの
が崩れ去ってしまえば、大きな混乱を招くことになるだろう。
下流老人の問題は、そのトリガーとなる危険性をはらんでいるのだ。

4
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「価値観の崩壊」とまでは行きませんが「価値観のほころび」や「価値観の軽
視・無視」といった状況は、どの時代にもあります。
現代にもあります。
「いじめ」もその一つの事象であり、なくなることはないでしょう。

もし、「命の尊さ」や「生命倫理」が全人に理解され、徹底されているなら
ば、いじめによる自殺や、日常的に発生している殺人事件はなくなるはずです。
そうした常に日々の暮らしと隣り合わせにある危険性、すれ違う価値観を持
つ人間も同様に「命の尊さ」やいわゆる「人権」を認めるという社会。
それが正義ならば、長く生きたいと思っていた人の命を奪う行為を起こした
人間も、同様の権利を持つことになります。

話がずれましたが、「価値観の崩壊」はあってはならないことですが、「価
値観のずれ」が連鎖的に起きての「崩壊」のリスクが常に社会にはあるわけで
す。
ヘイトスピーチなどは、むしろその連鎖の中に今はまだ狭い領域の中で起き
ている事象と思います。

すべての高齢者が社会に貢献してきたかどうか・・・。

そう問うと、問われると・・・。
障害者の方々など無念にも、意思に反し社会的にハンデを負った人々に対し
て、命の尊さと人権・福祉の思想を持って接することは、根源的なことと考え
ます。

しかし、そうしたハンデを負っていない人々の中で、人としてのあり方の基
本的な価値観を持つことができず、社会に対して悪を為してきた者にも等しく
権利を保証すべきか・・・。
私のなかの疑問の一つです。
そこまでの性善には与しない、できない・・・。

すべての高齢者が無条件で「尊敬」されるべきか・・・。
イエスとは、私は言えないのです・・・。

その前に、「価値観のずれ」「ほころび」で、命の尊さを体現できない人間
がこの社会に数多く存在することの問題が横たわっている現実・・・。
憂慮しています。
また話がずれてしまいました。

私は、親が家族・子どもを養うのは、産んだ者としての当然の義務・責任で
あって、それが社会に貢献することだとは思いません。
育てたことが、子どもから尊敬・感謝されるべきものであるとも思いません。

子どもが親に感謝する心を抱くことは、学校教育や社会から教えられてのもの
であるべきとも思っていません。
押し付けられたもの、教えられたものでなく、自然に抱く感情・・・。
そうありたいと思うのです。

 

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次回、下流老人化の<悪影響Ⅲ><悪影響Ⅳ>に続きます。

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なお本書の体系は、次のとおりです。
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
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