• HOME
  • ブログ
  • 高齢者生活
  • 高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり:『下流老人』の今と明日(8)

高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり:『下流老人』の今と明日(8)

下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃
藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら考える、<『下流老人』の今と明日>シリーズ。

今回から、第3章「誰もがなり得る下流老人」に移り、提示された
下流老人化するパターンを見ることにします。

----------------------------
 普通から下流へ陥るいくつものパターン
----------------------------

下流老人の事例を振り返ると、それぞれのレベルで可能な限りの自助努力
をしてきていることに気づく。
その生活は慎ましくさえある。
それにもかかわらず、下流化は止められないのだ。

ここからは、下流老人に陥る代表的なパターンを実例とともに紹介する。

前半の【現状編】では、わたしたちが年間約300人のさまざまな生活困窮者
を見てきたなかで、下流老人に転落する流れとその構造を類型化したものを
示す。
端的に言えば、下流老人に至るにはいくつかのパターンがあるのだ。

後半の【近いミライ編】では、近年増加している若者の貧困などにも絡めて
問題を見ていく。
すでにあるパターンではなく、むしろこれから増えるであろう”予想されう
るパターン”だ。
その意味で、現在、働く世代の方には、こちらのほうが、「自分事」になり
うるだろう。

これらを見れば「普通の人」が、いかにたやすく「下流」に陥ってしまうか、
理解していただけると思う。

-----------------------
 【現状編】(1)
-----------------

<パターン1 病気や事故に拠る高額な医療費の支払い>

一つ目は、病気や介護、あるいは交通事故などで、高額な医療費や介護費、
療養費が必要になるパターンだ。

平成26年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の高齢者の健康状態につ
いて見ると、平成22(2010)年における有訴者率(1000人当たりの「こ
こ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)の数)は471.1
と、半数近くの人が何らかの自覚症状を訴えているとされる。

高齢者有訴率

当たり前だが、高齢者は想像以上に病気に冒されやすい。
定年後に、いきなりがんなどの予期せぬ病気が見つかることも多々ある。
計算外の高額な入院費用や医療費、介護費負担がのしかかれば、生活は、
あっと言う間に破綻してしまう。

たとえば退職金が800~1000万円ある人が、数回にわたるがんの手術で、
老後の資金をすべて失ったケースもある。
高額療養助成制度もあるが、入院中の差額ベッド代保険外の治療など
もあり、金銭的負担が重くなるのだ。
また、がんの治療で長期間の療養生活を必要とするケースも多い。

パターン1は、とくに65~74歳までの前期高齢者に多く当てはまる
昔に比べ、今の高齢者は非常に精力的な人が多い。
年金の受給年齢の引き上げなどもあり、本人も「老後もバリバリ働こう」
と思っている。
下流老人になった人の多くも同じように考えていた。
「年金+就労収入」で暮らしていけるという生活設計があったのだ。

しかし、それは「健康であること」を前提にして成り立つものである。
自分が生涯を通じて健康でいられるかどうかは、誰にもわからない。
それがただの願望であることをわたしたちは自覚しなければならない。


--人生における「高齢期」の長期化--

生活設計をきちんと組み立てていても、病気になったときにはもう遅い。
1年、2年と療養生活が続けば、それだけ生計費以外のさまざまな出費が
増えるし、時間も制約され、負担が大きくなってくる。
若いときより回復も遅く、思うように状況が改善しないことは一般的にあ
ることだ。

また事故の場合は、自分が被害者になる以外に、加害者になってしまうケ
ースも存在する。
とくに高齢者のドライバーで多いのが、自動車のアクセルとブレーキを踏
み間違えて、大きな事故を起こすケースだ。
自動車や建物の破損だけならまだしも、人身事故を起こし、多額の損害賠
償を請求されるケースも珍しくない。

このように予期せぬ病気や介護、事故によって、高額な医療・介護費が突
如として発生して下流化するケースは、かなり多い。

ただ、突発的な病気や事故は、今に限らず昔からあったことでもある。
それでも「昔は大丈夫」だったのは、家族や地域社会など、さまざまな
ーフティネットが機能し高齢者を捕捉していたからだ。

現代は核家族化が進行し、経済的困窮によって子どもを頼れないケースが
増えている。
物理面、精神面、経済面と、さまざまな側面から「孤立化」しているのが、
現代の高齢者の実態なのである。

またこの問題は、いまだかつてない「長寿化社会」に突入したことも無関
係ではない。
長寿化社会とは、言い方をかえれば「人生における高齢期の割合がものす
く長くなった」ということだ。

今は90歳まで生きることも珍しくなくなった。
100歳を超える人だっている。
25年、35年と高齢期を過ごしていれば、生活設計をきっちり立てていても
どこかで病気になるし、事故にも遭うし、認知症になってそもそもプラン
自体を忘れてしまう人もいるだろう。

高齢期の割合が増えたということは、それだけリスクにさらされる危険度
が高くなったとも言えるし、また、健康を維持するために莫大なコストが
必要になったとも言えるのだ。

高齢者健康意識
-------------------------

そうならないように、として、既に高齢域に達した人が準備や対策を講じる
のは、なかなか難しい・・・。

例えば、生命保険契約で、入院特約等を付加しておけば、いざという時に
負担をカバーすることができます。
自動車保険でも、同様です。

しかし、現実的に、退職後では、そうした保険特約で必要な支払いはバカに
ならない額なので、解約してしまう人も多いかもしれません。
任意の自動車保険の負担も、同様です。

セルフ・セーフティネットとして、そうした備えをなんとか維持継続する
方策を考えるべきです。

それが普通、という生活設計を、これから高齢生活を迎えようとしている
方や、まだ先のことという多少のゆとりがある方ならなおさら、そうした
設計に、再度見直しておくことが望ましいでしょう。

そういう点で、保険の活用法を研究し、長期間、保険料の負担を可能にする
経済的な計画を立てて備えることが、中年以下の現役世代の共通課題とす
べきと思います。

ただ、そうした設計以前に、非正規社員・非正規職員という雇用形態から
の不安を抱える人びとが現在、多数存在し、これからも増加することが
予想されるとき、問題が抱える悩み・困難に対する方策は、簡単には見出
せません。

では、どうするか・・・
もうしばらく、普通から下流に陥るパターンをみていくことにします。

次回は
<パターン2 高齢者介護施設に入居できない> を見てみます。

悩み

-------------------------
<本書の構成>
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
----------------------------

「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク
第6回:尊敬される高齢者とは?
第7回:若者が抱く老後不安の社会構造を変革する道は?

関連記事一覧